A17 「工賃変動積立金」と「設備等整備積立金」の二つがあります。
就労支援事業は、そもそも利用者(=障がい者)に働く場を提供し、その作業などによって得られた利益を利用者に対して適切に分配することを事業目的としています。ですので、利益の残りを翌年度以降に繰り越すことはせず、毎年収支はトントンで済ませることになっています。
しかし、事業というものはいつ何が起こるか判らぬものです。経済情勢等の影響を受けるということに関しては、一般の営利を目的とした企業となんら変わりません。ですから不測の事態に備える必要があります。
ここではそれぞれの積立金がどのような性格のものかを先ず簡単に紹介します。
「工賃変動積立金」 将来、利用者の工賃が満足に支払えなくなるような事態(急な売上げの減少や仕入れ値の高騰した、など)に備えて、余裕のある時にお金を積み立てておくことです。不測の事態が生じた際に、その積立金を取り崩すことによって、利用者に最低限の工賃の支払いを保障することができます。
「設備等整備積立金」 今現在使用している設備の老朽化に備えて、その設備の買い替えや、更なる設備の増強するときの資金を早いうちから少しずつ積み立てておくことです。そうすることによって、その設備投資の年度だけに多額の資金を負担させず、各年度にその負担を分散させることが可能となります。
この二つの積立金は、具体的にどのような会計処理になるかというと。先ず前提としてこの積立金は、「同額の積立預金を計上することにより、その存在を明らかにしなければならない」ものとされています。例えば、100万円の工賃変動積立金を計上する場合、その積立金専用の預金口座を開設し、その100万円を預ける必要があります。普段使っている口座の残高とゴッチャにしてはなりません。
具体例を示します。当期の決算において、100万円の収支差額が生じてしまいました。原則として就労支援事業で収支差額を翌期に繰り越すことは認められてはおらず、利用者に分配しなければならないこととされています。しかしながら、今後の経営リスクに備えて、工賃変動積立金として翌期に繰り越すことが役員会議で決議されました。会計処理は以下の通りです。
(借方)工賃変動積立預金 100万円/(貸方)工賃変動積立金 100万円
借方の「工賃変動積立預金」は、資産科目です。
貸方の「工賃変動積立金」は、純資産科目です。
つまり、収支差額には反映されず、貸借対照表上で反映されることになります。
そして更に「その他の積立預金明細表」というものを決算書類と併せて作成し、その存在を明確にしておく必要があります。
参照:「就労支援の事業の会計処理の基準」の改正に係る留意事項等の説明