Q7 就労支援事業の人件費科目について教えて下さい

A7 就労支援事業の人件費の勘定科目は以下の通りです。

1.利用者賃金
2.利用者工賃
3.就労支援事業指導員等給与
4.就労支援事業指導員等賞与引当金繰入
5.就労支援事業指導員退職給付費用
6.法定福利費

大きく分けて二種類(変な言い方ですが)の人が出てきます。「利用者」と「就労支援事業指導員」です。利用者の定義は前にも説明したように、就労支援サービスを利用する障がい者のことです。その就労支援事業を行う事業所で働く利用者に対して支払うお金が「利用者賃金」「利用者工賃」です。就労支援事業には、1)就労移行支援(これはQ5で説明しました)と2)就労継続支援、3)就労定着支援があります。そして2)の就労継続支援には、A型とB型の二種類が存在します。

 A型は、事業者と利用者との間で雇用契約を締結する支援のことです。つまり労働基準法等の適応があり、利用者はその事業所で働くことによって、最低賃金以上のお金を受け取ります。そのお金とはつまり雇用契約に基づく労働の対価、つまり「賃金」(=お給料)なのです。

 B型は、上記以外の支援のことです。つまり雇用契約に基づかない労働形態なので、最低賃金の適用はありません。利用者はその事業所で働くことによって対価を得ますが、その対価は雇用契約に基づくものではないので、賃金という用語は使用しません。その代わりに「工賃」という用語がつかわれます。

 よって会計から見ると就労継続支援A型は「利用者に対して『賃金』を支給する事業」と言うことになります。従って「利用者賃金」という勘定科目を使います。A型以外の事業(B型、就労移行支援など)は「利用者に対して『工賃』を支給する事業」と言うことができます。従って「利用者工賃」という勘定科目を使います。

 「賃金」は、所得税法上、「給与所得」として扱われます。つまり所得税を源泉徴収し、年末調整する必要があります。また事業所側としては、消費税法上は課税対象外取引となります。

 「工賃」は、所得税法上、「雑所得」として扱われます。つまり源泉徴収などする必要はなく、利用者各自が確定申告する必要があります(但し、確定申告するほど稼げないのが多くであるとは思います)。また事業者側としては、消費税法上は課税仕入れ取引となります。

 賃金と工賃は、似た言葉ではありますが、意味するところの内容は全く異なります。