Q3 会計から見る就労支援事業と福祉事業活動について教えて下さい。

A3 次に職員に支払われる給料は、どうやって賄われるのでしょうか。利用者と同じく工場経営の利益から分配されるのでしょうか。

 職員が受取る給料は、障害者総合支援法に基づく「障害福祉サービス費」によって賄われます。

 医療サービスにおける医療費と同じように考えるといいかもしれません。私たちが病気や怪我をすると病院に行って治療を受けます。そして最後に窓口に行き、患者負担額(総額の1割~3割)を支払います。病院は毎月10日までに、その前月の医療費を集計して、残りの7割~9割を国に請求します。国はその請求内容をチェックした後、約2か月後に病院に対して請求額を支払います。

 障害福祉サービスも、これとほぼ同じことが行われます。就労支援事業をおこなうA社は、工場で働く利用者数をもとに、障害福祉サービス費の請求を毎月行っています。この収入を原資として、職員に対する給料が支払われます。

 上記のことから解るようにA社は、二つの事業部門を有することになります。

 一つは、工場経営、つまり障害者支援事業です。ここで製造販売した販売収入から、工場経費や利用者に工賃が支払われます。

 もう一つは、工場をサポートする福祉事業です。これは障害者総合支援法に基づき国から支給される障害福祉サービス費を原資として、職員の給料、本部事務所の家賃・光熱費などの諸経費を支払います。

 繰り返しになりますが、就労支援事業は利用者の工賃を支払う事業ですから、如何に利益を出して利用者に配分するかが重要となります。福祉事業活動は、A社そのものの運営ですから、きっちり利益を出すことが求められます。

 つまりA社の経営者は、二つの会社を同時に運営すると同様な経営センスが求められるわけです。これが就労支援の難しいところであると同時に醍醐味ともいえるところです。

 この二部門をドンブリ勘定にしてしまうと、以下のようなことが起こらないとも限りません。

・工場が実は大赤字で、利用者工賃は事実上、福祉事業部門の利益から捻出していた。
・工場は黒字で、福祉事業は赤字。つまり工場の利益を利用者工賃として適切に配分せず、本部の経費の支払いに流用していた。

 以上のようなことはあってはならず、これら二部門はそれぞれ独立採算制で資金繰りを回すのが理想的な姿であることは言うまでもありません。