【令和6(2024)年度版】報酬改定、3つの論点

 2024(令和6)年度報酬改定 3つの論点

報酬改定は時代の変化に制度を合わせるためのものです。今回の報酬改定では多様化する障害福祉ニーズへの対応、事業所経営を圧迫する物価・賃金の上昇や人材確保などの問題、そしてサービス間・制度間の公平性や制度の持続可能性の確保などを背景とした議論がなされています。
2023(令和5)年8月31日に実施された第35回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」では、改定に向けた主な論点として以下の3つが挙げられました。

1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり
2.社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応
3.持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し

以下では厚生労働省の資料を基にした各論点の概要や具体的な検討事項、これらの議論の背景を解説します。

 1.障害者が希望する地域生活を実現する地域づくり

⑴ 障害者が希望する地域生活を実現・継続するための支援の充実

ここでは相談支援および多様なニーズに対応する支援の量と質の確保、意思決定支援、ピアサポートの推進、障害者支援施設(※)のあり方などが挙げられています。

《想定される検討事項》

□ 障害の重度化や障害者の高齢化など、地域のニーズに対応するための方策
□ 強度行動障害を有する障害者等への支援体制の充実を図るための方策
□ 地域生活支援拠点等の整備の推進を含めた障害者の地域移行を促進するための方策
□ グループホームにおける一人暮らし等の希望の実現、支援の実態に応じた適切な評価のための方策
□ 地域における自立した生活を送るための機能訓練・生活訓練の充実
□ 相談支援の質の向上や提供体制を整備するための方策
□ 障害者の意思決定支援を推進するための方策
□ 障害者ピアサポートの取組の促進に向けた方策

入所する障害のある人に入浴や排泄、食事などの介護、また、生活などに関する相談や助言、その他の必要な日常生活上の支援(施設入所支援、生活介護、自立訓練、就労移行支援など)を行う施設

⑵ 医療と福祉の連携の推進

重度化、高齢化、医療的ケアの必要性、精神障害や難病など多様化するニーズを踏まえた、
保健・医療・福祉・その他施策との連携推進などに関する内容です。

《想定される検討事項》

□ 相談支援と医療との連携のさらなる促進策
□ 医療的ケア児の成人期への移行にも対応した医療的ケアの体制の充実を図るための方策
□ 重度障害者が入院した際のコミュニケーション支援の充実
□ 障害者支援施設等における医療機関との連携強化・感染症対応力の向上
⑶ 精神障害者の地域生活の包括的な支援

精神保健福祉法の改正に伴う「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築推進に関する内容です。

《想定される検討事項》

□ 精神障害者の医療と相談支援との連携のさらなる促進策
□ 精神障害者の退院支援に資する地域生活支援拠点等の整備を推進するための方策
□ 精神障害者の虐待防止を図るための方策

議論の背景

この論点の理解を深める背景情報として、ここでは特に「地域生活」「医療」の2つを取り上げます。

《地域生活》

障害者福祉の大きな流れであり、現在も続く課題でもあるのが「施設入所・長期入院から地域生活への移行」です。施設入所や精神疾患による長期入院は、障害がある人を社会から「隔離」してしまう側面があります。本人の希望や必要な支援の範囲を超える入所・入院は、人権やノーマライゼーションの観点から大きな課題となっています。

《医療》

「医療」は障害福祉サービス全体に共通する課題です。重度の障害がある人の支援は以前から議論されていますが、加えて近年は経管栄養や人工呼吸器といった、いわゆる医療的ケアが必要な人への支援ニーズも増加しています。医療的ケアが必要な人が地域生活を営むには、利用する障害福祉サービス事業所が医療的ケアに対応している必要があります。一方で医療的ケアができるのは医師や看護師など限られた人だけです。障害福祉サービス事業所が医療的ケアを提供する場合も、看護師などの配置や医療機関との連携などが求められます。

 2.社会の変化等に伴う障害児・障害者のニーズへのきめ細かな対応

この論点ではさらに細かく、以下2つの論点が示されています。

⑴ 障害児に対する専門的で質の高い支援体制の構築 
       ここでは障害「児」に関する論点は割愛します。
⑵ 障害者の多様なニーズに応じた就労の促進

障害や病気があっても希望を叶え活躍できる働きやすい社会の実現、ひとり一人の状況にあった就労につなげるための就労選択支援に関する内容です。

想定される検討事項

□ 企業等で雇用される障害者の定着支援の充実を図るための方策
□ 就労継続支援A型の生産活動収支の改善を図り、効果的な取組を評価するためのさらなる方策
□ 就労継続支援B型の工賃向上を図り、効果的な取組を評価するためのさらなる方策
□ 就労選択支援の創設

知っておきたい議論の背景

理解を深める背景情報として、ここでは特に「就労選択支援」「リワーク」の2点を取り上げます。

《就労選択支援》

就労選択支援は令和6年の改正で創設される新サービスで、実際にサービス提供が開始されるのは令和7年10月1日の予定です。

就労選択支援の目的は「就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性
等に合った選択を支援する」とされています。現在も就労継続支援B型事業所の新規利用に対して実施されている「就労アセスメント」が事業化されるものと予想され、基準や報酬など具体的な内容は今後検討が進んでいく見込みです。

《一般就労中のサービス利用》

令和6年度の改正で、一般就労中であっても就労移行支援や就労継続支援A型・B型を利用できるケースが明確になる予定です。これまで自治体によって見解が分かれていたリワーク(復職)目的での一時的な利用が明確に可能となるほか、一般就労後に労働時間を増やすための支援でも利用が認められるよう議論が進んでいます。

 3.持続可能で質の高い障害福祉サービス等の実現のための報酬等の見直し

必要なサービス提供を継続できるような事業所の経営上の課題への対応、予算の増加やサービスごとの事業所数増加の偏りなどを踏まえたメリハリのついた報酬体系、業務効率化などに関する論点です。

《想定される検討事項》

□ 物価高騰・賃金上昇等を踏まえたサービスの安定的な提供のための人材確保策など
□ 経過措置への対応(食事提供体制加算等)
□ サービス提供の実態やサービス内容・質に応じた評価
□ 障害者虐待の防止を図るための方策
□ 情報公表制度の在り方を含むサービスの質の確保・透明性向上のための方策
□ サービス提供事業者や自治体の事務・手続き等の標準化、簡素化、ICTなどの効率化等の方策

知っておきたい議論の背景

理解を深める背景情報として、ここでは特に「人材確保」「事務負担軽減」の2点を取り上げます。

《人材確保》

人材確保に直結する施策として、職員の賃金改善のための処遇改善加算があります。処遇改善加算は現在「福祉・介護職員処遇改善加算」「福祉・介護職員等特定処遇改善加算」「福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つが存在し複雑になっているため、簡素化などを含めて動向を注視したいポイントです。 また近年の物価高騰に耐えうる報酬体系になるかどうか、基本報酬や加算の見直しの行方にも注目したいところです。

《事務負担軽減》

各事業の指定や更新、変更、加算の取得などに伴う事務手続き、請求に関する事務、日々の記録対応などが職員の負担となっており、結果としてサービス提供に支障をきたす懸念もあります。そのため事務手続きにおける自治体ごとのローカルルールの統一化や事務処理要領自体の見直し、ICT(情報通信技術)を活用した効率化なども検討されていく予定です。

 最後に……

報酬改定の全体像や背景を理解すると、今後、各事業で具体的にどのような検討や反映がされていくか予想しやすくなります。事業ごとの検討も徐々に進んでいるので、ご自身の関わる事業についての議論は適宜確認されることをお薦めします。
障害福祉サービス等報酬改定検討チーム|厚生労働省





事業所無料登録募集

無料登録イメージ
▶アカウント登録済の方はログインください




事業所有料登録募集
月々1,100円!

予約システムがつかえます!

有料登録イメージ
▶アカウント登録済の方はログインください