Q2 就労支援会計とは何か?

A2 例えばA社という会社が、ある工場経営(就労支援事業)をしていて、そこでは障がい者が働いているとします(この障がい者を就労支援事業という制度を利用する方々なので、ここでは以下「利用者」と呼びます)。

 この工場は、賃借料や光熱費を支払い、原材料を仕入れ、ある製品を製造して販売しています。今月の業績は以下のようになりました。

1. 売上高 100万円   
2. 原材料仕入れ
         工場家賃
         光熱費
         その他経費
40万円
10万円
5万円
30万円
3. 差引利益 15万円

この15万円の儲けが、利用者に支払われる工賃となります。

 障害者総合支援法は、以前は障害者自立支援法という名称でした。障がい者が社会的に経済的に自立した生活を営むことを目指す法律です。就労支援事業はその一環として、利用者つまり障がい者が働く場を設け、そこで得た利益を利用者に分配するという趣旨です。つまり、就労支援事業が儲けを出せば出すほど利用者の受け取る工賃は増え、逆に儲けが少なければ利用者の工賃は少なくなります。

 よってA社は工場の儲けをきっちりと把握しなければ、利用者に正しい工賃を支払うことができません。工場の儲けは全て利用者に工賃として分配しなければならないものです。正当な理由なく、その儲けを一部残しておくようなことは原則として許されません。ましてや他の誰かがその儲けを横領して私腹を肥やすなどということは断じてあってはならないことです。

 更に利用者をサポートする立場の人達(管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員などは、ここでは以下「職員」と呼びます)は、この工場をもっと活性化させ、利用者が働きやすい環境を整え、工場がもっと儲けを出せるように勤めなければなりません。

 儲けが大きければ大きいほど利用者の工賃は増えます。インセンティブ(incentive やる気を起こさせる刺激のこと/例:昇給、昇進、昇格、一時金、職場環境や労働条件の改善など)が高ければ高いほど仕事に対する意欲は高まり、利用者の社会的自立につながります。

 このA社が工場経営(就労支援事業)だけでなく、他の事業も営んでいたとしたらどうでしょう。例えば、在宅介護や児童サービスや一般的な飲食店・建設業のような営利事業だったらどうでしょう。

 複数の事業を一緒くたにしてドンブリ勘定をしていたら、利用者の工賃の適正な算定はできません。よって①会社全体の中から工場の売上や経費だけを抜き出し、②工場の儲けを計算し、③利用者工賃の算定と、④工賃を増やすためには何をどう改善すべきかを検討する必要があるのです。

 この就労支援事業は、障害者総合支援法に基づく事業ですので、一定の基準を満たすものであるか都道府県の「指定」を受ける必要があります。都道府県は、この指定した事業所がきちんと事業運営をしているかどうか、定期的にチェックをします。勿論そこでの重要なチェックポイントとなるのは、その事業で稼いだ儲けを適正に利用者工賃として支払っているかがあります。適正にされていなければ指導を受けます。あまりにひどいと指定を取り消されます。そのチェック基準となるのが「就労支援会計」なのです。