目次
・はじめに
パーキンソン病は、現在の医学では完治が難しい病気で、難病に指定されています。このような指定難病を発症した人は、障害者手帳を取得することが可能となるので、ここでは、障害者手帳を取得する際の年齢制限や基準を解説します。パーキンソン病の家族に代わって障害者手帳の申請を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
・パーキンソン病発症の原因
パーキンソン病は、身体の動きに障害が表れる病気です。中脳にあるドーパミン神経細胞が減少し、生成されるドーパミンが不足するのが発症の原因と考えられています。ドーパミンとは、意欲、幸福感、学習のほかに運動機能の調節といった脳機能に関わる神経伝達物質のことです。パーキンソン病を発症すると、このドーパミンの不足によって運動機能を調節するための脳の指令が筋肉に上手く伝わらず、手足の震えや筋肉のこわばりなどの症状が出ます。これらの症状は日常生活に著しく支障をきたすので、パーキンソン病の人は障害者手帳を取得することが認められているのです。
・パーキンソン病で障害者手帳を取得する年齢制限
パーキンソン病の人が障害者手帳を受け取るのに、とくに年齢制限は設けられておりません。85歳以上であっても、パーキンソン病の症状が原因で現在、日常生活に不便を感じているのであれば、障害者手帳を申請することができます。
一方、障害年金については年齢制限が定められています。
具体的には、パーキンソン病の診療で、初めて病院を受診した日に65歳未満でなければ、障害年金を受け取ることができません。なお障害年金は、老齢年金を受給していない方が対象となっています。そのため、65歳以上ですでに老齢年金を受給している場合は、障害年金は対象外となります。
・障害者手帳でのパーキンソン病の認定基準
パーキンソン病による障害者手帳の認定基準は、どのように設定されているのか。障害者手帳において、パーキンソン病は肢体不自由に該当するため、以下の通り上肢と下肢それぞれで等級が設けられています。
〇上肢の四肢不自由
| 1級 | 両腕の機能がまったくない |
| 2級 | 両腕や両手に著しい機能障害がある |
| 片腕の機能がまったくない | |
| 3級 | 両手の親指や人差し指がまったく機能しない |
| 片腕の著しい機能障害がある | |
| 片手の全ての指がまったく機能しない | |
| 4級 | 両手の親指がまったく機能しない |
| 片腕の肩、肘、手のいずれかの関節の機能がまったくない | |
| 片手の親指や人差し指がまったく機能しない | |
| 親指または人差し指を含めて、片手の3指がまったく機能しない | |
| 親指または人差し指を含めて、片手の4指に著しい機能障害がある | |
| 5級 | 両手の親指に著しい機能障害がある |
| 片腕の肩、肘、手のいずれかの関節に著しい機能障害がある | |
| 片手の親指がまったく機能しない | |
| 片手の親指や人差し指に著しい機能障害がある | |
| 親指または人差し指を含めて、片手の3指に著しい機能障害がある | |
| 6級 | 片手の親指に著しい機能障害がある |
| 人差し指を含めて、片手の2指がまったく機能しない | |
| 7級 | 片腕に軽度の機能障害がある |
| 片腕の肩、肘、手のいずれかの関節に軽度の機能障害がある | |
| 片手指に軽度の障害がある | |
| 人差し指を含めて、片手の2指に著しい機能障害がある | |
| 片手の中指、薬指、小指がまったく機能しない |
等級は、以上のように7級まで分かれています。片腕や肩などの関節に軽度の障害がみられる場合は、7級に該当するので、そのような場合は一度正式な検査を受けたほうがよいかもしれません。
〇下肢の四肢不自由
| 1級 | 両足の機能がまったくない |
| 2級 | 両足に著しい機能障害がある |
| 3級 | 片足の機能がまったくない |
| 4級 | 両足の全ての指がまったく機能しない |
| 片足に著しい機能障害がある | |
| 片足の股関節または膝関節の機能がまったくない | |
| 5級 | 片足の股関節または膝関節に著しい機能障害がある |
| 片足の足関節の機能がまったくない | |
| 6級 | 片足の足関節に著しい機能障害がある |
| 7級 | 両足全ての指に著しい機能障害がある |
| 片足に軽度の機能障害がある | |
| 片足の股関節、膝関節、足関節のうち、いずれかに軽度の機能障害がある |
下肢の等級も同じく7級まで分かれており、両足または片足に症状が出るのが特徴です。もっとも症状が軽い7級ですら、日常生活での歩行は困難なものといえます。
・障害者手帳の取得で得られるメリット
- 障害者雇用の利用
- 失業保険の拡充
- 医療費の助成
- 所得税や住民税などの税金、公共料金の減額
- 電車、新幹線、バス、タクシー、飛行機の利用料金の減額
- 福祉用具や補装具の補助
- ガソリン代やおむつ代の補助
- 住宅改修やリフォーム費用の助成
- 映画館、美術館、テーマパークの割引
このように、障害者手帳を取得すれば、生活するうえで欠かせない福祉用具の補助や医療費の助成などを受けることができます。ただし、等級によって利用できる公的サービスや、受けられる支援などが異なることは把握しておいてください。
・パーキンソン病の方が受けられる公的支援制度
治療が長期にわたるパーキンソン病の人には、さまざまな公的支援制度が用意されています。以下、パーキンソン病の方が受けられる公的支援制度を紹介します。
〇難病医療費助成制度
難病医療費助成制度とは、疾患の効果的な治療法が見つかるまでのあいだ、長期的な治療による医療費の経済的な支援などを受けられる制度のことです。対象となるのは、“ホーエン・ヤールの重症度分類3度以上かつ生活機能障害度2度以上”のパーキンソン病の人です。制度の有効期限は1年間で、引き続き助成を希望する場合は更新申請の手続きが必要となります。
〇介護保険法に基づく制度
40歳以上の介護保険加入者は、支援や介護が必要と認定されたとき、1割という少ない負担で介護サービスを受けられます。また本制度は、40~65歳未満のホーエン・ヤール重症度1~2度のパーキンソン病患者の人にも適用されます。難病医療費助成制度が利用できなかった場合は、こちらを活用してください。
要介護認定を最初に受けた場合の有効期間は原則として6か月、それ以降に更新する際の有効期限は原則12か月です。継続して少ない負担でサービスを受けたい場合は、最初の6か月の有効期間が終了する前に更新手続きを行ってください。
〇障害者総合支援法
障害者総合支援法では、介護給付、訓練等給付、自立支援医療などによる支援を受けられます。パーキンソン病の方はホーエン・ヤールの重症度分類にかかわらず、障害者総合支援法のサービスを利用することが可能となります。ただし、介護保険制度の対象となっている方はそちらが優先されます。また、サービスを利用するにあたって、障害者支援区分の認定が必要になります。
〇身体障害者福祉法
パーキンソン病の患者さまは、身体障害者手帳交付の対象となる肢体不自由に該当します。こちらの制度を利用することによって、経済的支援や税金の減免などの支援を受けられます。申請は市区町村の担当窓口で行うことが可能で、申請時には診断書、意見書、証明写真などが必要です。しかし、身体障害者の認定は障害が固定されていることが前提条件となっているため、症状が変動しやすいパーキンソン病の場合は認定されないこともまれにあるので注意してください。
・最後に……
パーキンソン病の人が障害者手帳を取得や障害年金の受給、受けられる公的支援制度について理解できたところで、ここからは主な症状を解説して終わります。
〇運動症状
運動症状では、パーキンソン病の四大症状といわれている「安静時振戦」「筋強剛」「動作緩慢・無動」「姿勢反射障害」が表れます。
| 症状 | 内容 |
| 安静時振戦 | 手、足、顎などが震える |
| 筋強剛 | 筋肉がこわばり、手足の動きがぎこちなくなる |
| 動作緩慢・無動 | 身体の動きが遅くなったり、少なくなったりする |
| 姿勢反射障害 | 身体のバランスが悪くなり、倒れやすくなる |
このほかにも、歩くときに足が上がらずすり足になったり、1歩目がなかなか踏み出せなかったりと歩き方にも影響が出ます。
〇非運動症状
非運動症状は、運動症状が表れる前に発症することがあります。気になる症状がある方は、専門医に相談してみてください。
| 症状 | 内容 |
| 睡眠障害 | 不眠 |
| 日中の眠気 | |
| 睡眠時無呼吸症候群 | |
| レム睡眠行動障害 | |
| レストレスレッグス症候群 | |
| 認知・精神障害 | 認知機能の低下 |
| 気分障害、幻覚、妄想 | |
| 行動障害 | |
| 自律神経症状 | 便秘 |
| 排尿障害 | |
| 起立性低血圧 | |
| 発汗障害 | |
| 感覚障害、その他 | 痛み |
| 嗅覚障害 | |
| 体重減少 | |
| 疲労 |
非運動症状を抑えるのに効果的な薬はまだ開発されていませんが、日常生活の見直しや運動症状の改善によって快方へと向かうことがあります。
パーキンソン病は完治が難しい病気ですが、治療を続けて症状をコントロールすれば、命にかかわる病気へと変化することはありません。また、障害者手帳を取得することによって、生活にかかる負担を軽減させることができます。