虐待を受けた障害者の保護に対する協力と添付(虐待防止チェックリスト)その5

1 居室の確保に関する協力

養護者による障害者虐待や、住み込みで働いていた会社で使用者による障害者虐待を受けた場合等で、放置しておくと障害者の生命や身体に重大な危険を招くおそれが予測されると判断された場合、市町村は、虐待を受けた障害者を保護するため、契約による障害福祉サービスの利用(短期入所、施設入所等)や、やむを得ない事由による措置(短期入所、施設入所等)により、養護者等から分離することがあり、市町村から施設に対して緊急的な受入れを要請することがあります。身体障害者福祉法第 18 条の2、および知的障害者福祉法第 21 条において、やむを得ない事由による措置による委託を受けたときは、正当な理由がない限りこれを拒んではならないと定められており、施設としても受入について最大限の協力が求められます。
なお、災害等(虐待を含む)やむを得ない理由による場合は、定員超過による報酬の減算をうけることがないように、利用者数の算定から除外するものとされています。
また、平成 30 年度障害福祉サービス報酬改定において、短期入所では、緊急時に受入れを行った場合、「緊急」という局面を勘案し、期間を区切った上で、特例的に加算をするとともに(「定員超過特例加算」)、その間は定員超過利用減算を適用しないこととしています。さらに「緊急短期入所受入加算」についても、利用開始日のみだった加算を 7 日間(やむを得ない事情がある場合は 14 日間)まで広げており、こうした加算を活用することも可能です。

○障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律総合支援法に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について(抜粋) (平成18年10月31日障発第1031001号厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知) 第二 (略)

1.通則((1)~(6)略)

  • (7) 定員超過に該当する場合の所定単位数の算定について(①~⑤略)
    • ⑥ 利用者数の算定に当たっての留意事項
      ④及び⑤における利用者の数の算定に当たっては、次の(一)から(四)までに該当する利用者を除くことができるものとする。
      また、計算の過程において、小数点以下の端数が生じる場合については、小数点以下を切り上げるものとする。
      • (一) 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第18条第1項、若しくは第2項、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第15条の4若しくは第16条第1項第2号又は児童福祉法(昭和22年法律第164号)第21条の6の規定により市町村が行った措置に係る利用者を受け入れる場合
      • (二) (略)
      • (三) 災害等やむを得ない理由により定員の枠外として取り扱われる入所者
      • (四) (略)

2.介護給付費((1)~(6)略)

  • (7) 短期入所サービス費(①~⑱略)
    • ⑲ 緊急短期入所受入加算の取扱いについて
      • (一) 報酬告示第7の9のイの緊急短期入所受入加算(Ⅰ)については、以下のとおり取り扱うこととする。(ア~エ略)
        オ 本加算の算定対象期間は原則として7日以内とする。ただし、利用者の介護を行う家族等の疾病が当初の想定を超えて長期間に及んだことにより在宅への復帰が困難となったこと等やむを得ない事情により、7日以内に適切な方策が立てられない場合には、その状況を記録した上で 14 日を限度に引き続き加算を算定することができる。その場合であっても、利用者負担軽減に配慮する観点から、機械的に加算算定を継続するのではなく、随時、適切なアセスメントによる代替手段の確保等について、十分に検討すること。
    • ⑳ 定員超過特例加算の取扱いについて
      報酬告示第7の 10 の定員超過特例加算については、以下のとおり取り扱うこととする。
      • (一) 緊急利用者を受け入れ、かつ、運営規程に定める利用定員を上回る利用者に指定短期入所等を行った場合に、利用者全員につき算定可能とする。
      • (二)~(四)略

2 保護された障害者への対応

虐待による養護者等からの分離、保護を受けた障害者は、虐待によって心身の不調を抱え、急な分離と初めての環境への不安や緊張を感じて入所してきます。自分が置かれている状況が理解できない場合、不安や緊張がさらに高まる可能性もあります。その結果、興奮してパニックを起こしたり、食事が食べられなくなったり、不眠になったりといった症状が現れる場合もあります。障害者福祉施設等の職員は、保護された障害者が置かれている状況を理解し、心的な状態を鑑み、不安や緊張を和らげるよう対応することが求められます。
保護されて入所してくる障害者については、自宅でどのように過ごしていたか、また好きな活動は何かなど、支援をする上で必要とされる情報が少ない場合があると思います。勤務している職員同士で情報交換や申し送りを確実に行い、一日でも早く安定した生活を送ることができるような対応を心掛けることが必要となります。

添付 施設・地域における障害者虐待防止チェックリスト

A:体制整備チェックリスト

社会福祉法人 全国社会福祉協議会「障害者の虐待防止に関する検討委員会」平成 23 年 3 月版

【規定、マニュアルやチェックリスト等の整備】

項目 チェック欄
1.倫理綱領、行動規範等を定めている。 □はい
□いいえ
2.倫理綱領、行動規範等について職員への周知徹底ができている。 □できている
□できていない
3.虐待防止マニュアルやチェックリスト等を作成している。 □はい
□いいえ
4.虐待防止マニュアルやチェックリスト等について、職員に周知徹底する
とともに、活用している。
□できている
□できていない
5.緊急やむを得ない場合の身体拘束等の手続き、方法を明確に定め、
職員に徹底している。
□できている
□できていない
6.身体拘束について検討する場を定期的に設けている。 □はい
□いいえ
7.緊急やむを得ない場合の身体拘束等について、利用者(家族)に
説明を行い、事前に同意を得ている。
□はい
□いいえ
8.個別支援計画を作成し、これに基づく適切な支援を実施している。 □できている
□できていない
9.個別支援計画作成会議は、利用者の参加を得て実施している。 □できている
□できていない

【職員への意識啓発、研修】

10.職員に対して、虐待の防止に関する研修や学習を実施している。 □はい
□いいえ
11.日々の支援の質を高めるための知識や技術の向上を目的とした研修を実施している。 □はい
□いいえ
12.職員の虐待防止に関する意識・関心を高めるための掲示物等を掲示している。 □はい
□いいえ
13.「職員チェックリスト」の活用を図り、職員の虐待に対する意識や
日々のサービス提供等の状況把握に努めている。
□できている
□できていない
14.「早期発見チェックリスト」の利用の徹底を図るとともに、発見時の報告、
対応等について明確にしている。
□できている
□できていない

【外部からのチェック】

 

【苦情、虐待事案への対応等の体制の整備】

22.虐待防止に関する責任者を定めている。 □はい
□いいえ
23.虐待防止や権利擁護に関する委員会を施設内に設置している。 □はい
□いいえ
24.苦情相談窓口を設置し、利用者等に分かりやすく案内をするとともに、
苦情解決責任者等を規定等に定め、利用者からの苦情の解決に努めている。
□できている
□できていない
25.苦情相談への対応について、第三者委員を定め、利用者に案内をしている。 □はい
□いいえ
26.職員が支援等に関する悩みを相談することのできる相談体制を整えている。 □はい
□いいえ
27.施設内での虐待事案の発生時の対応方法等を具体的に文章化している。 □はい
□いいえ
28.施設内での虐待事案が発生した場合の再発防止策等を具体的に文章化している。 □はい
□いいえ

【その他】

29.施設において利用者の金銭及び、貴重品を預かっている場合、
その管理は複数の職員によるチェック体制のもとになされている。
□できている
□できていない
30.施設は、利用者またはその家族の意見や要望を聴く場を設けている。 □できている
□できていない
31.施設経営者・管理者は、職員の意見や要望を聴く場を設けている。 □できている
□できていない
32.施設経営者・管理者は、施設職員同士がコミュニケーションを行う
機会の確保に配慮や工夫を行っている。
□できている
□できていない
33.利用者の希望や必要に応じて成年後見制度の利用支援を行っている。 □できている
□できていない
34.希望や必要に応じて成年後見制度の活用等について利用者・家族に説明を
行っている。
□できている
□できていない
35.利用者・家族、一般市民やオンブズマン等からの情報開示にいつでも
応じられる準備をしている。
□できている
□できていない
36.虐待の防止や権利擁護について利用者、家族、関係機関との意見交換の
場を設けている。
□はい
□いいえ

【地域における虐待の防止、早期発見・対応】

1.障害者(児)やその家族、地域住民等に対し虐待の防止に関する
普及・啓発を実施している。
□はい
□いいえ
2.家族、地域関係者との連携と情報交換を積極的に行い、虐待の可能性の
ある事案の観察や早期発見に努めている。
□できている
□できていない
3.地域における虐待防止において、障害福祉サービス事業者(施設)等の
事業者間の連携を図っている。
□できている
□できていない
4.地域における虐待防止について、相談支援事業者、地域自立支援協議会や
行政機関等との連携・協力(意見交換等も含む)をしている。
□できている
□できていない
5.虐待事案のみならず、福祉サービスの利用等を含め、相談窓口を
設置・広報し、地域住民の相談を受けている。
□はい
□いいえ
6.地域の障害者が虐待を受けた場合の積極的な受け入れ
(市町村からの依頼があった場合等)を行っている。
□はい
□いいえ
7.虐待を受けた障害者・児の受け入れとその支援に関するマニュアル等を
一般のマニュアル等とは別に作成している。
(虐待を受けた障害者・児への支援)
□はい
□いいえ
8.虐待事案の疑いがある場合、もしくは、発見した場合の相談支援事業者や
行政機関等への連絡(通報)について手順等が具体的に文章化している
□はい
□いいえ
9.虐待事案の疑いがある場合、もしくは、発見した場合に直接訪問する等の
対応を行う努力をしている。
□できている
□できていない
10.虐待事案の疑いがある場合、もしくは、発見した場合に、施設・事業所
として迅速かつ一元的な対応が可能となる体制を事前に定めている。
□はい
□いいえ

B:職員セルフチェックリスト

社会福祉法人 全国社会福祉協議会「障害者の虐待防止に関する検討委員会」平成 23 年 3 月版

項目 チェック欄
1.利用者への対応、受答え、挨拶等は丁寧に行うよう日々、心がけている □できている
□できていない
2.利用者の人格を尊重し、接し方や呼称に配慮している。 □できている
□できていない
3.利用者への説明はわかり易い言葉で丁寧に行い、威圧的な態度、
命令口調にならないようにしている。
□できている
□できていない
4.職務上知りえた利用者の個人情報については、慎重な取扱いに留意している。 □できている
□できていない
5.利用者の同意を事前に得ることなく、郵便物の開封、所持品の確認、
見学者等の居室への立ち入り等を行わないようにしている。
□できている
□できていない
6.利用者の意見、訴えに対し、無視や否定的な態度をとらないようにしている。 □できている
□できていない
7.利用者を長時間待たせたりしないようにしている。 □できている
□できていない
8.利用者の嫌がることを強要すること、また、嫌悪感を抱かせるような支援、
訓練等を行わないようにしている。
□できている
□できていない
9.危険回避のための行動上の制限が予想される事項については、事前に本人、
家族に説明し同意を得るとともに、方法を検討し実施にあたっては複数の
職員によるチームアプローチをとっている。
□できている
□できていない
10.利用者に対するサービス提供に関わる記録書類(ケース記録等)について、
対応に困難が生じた事柄や不適切と思われる対応をやむを得ず行った場合等の
状況も適切に記入している。
□できている
□できていない
11.ある特定の利用者に対して、ぞんざいな態度・受答えをしてしまう
ことがある。
□はい
□いいえ
12.ある特定の職員に対して、ぞんざいな態度・受答えをしてしまうことがある。 □はい
□いいえ
13.他の職員のサービス提供や利用者への対応について問題があると感じる
ことがある。
□はい
□いいえ
14.上司と日々のサービス提供に関わる相談を含め、コミュニケーション
がとりやすい雰囲気である。
□はい
□いいえ
15.職員と日々のサービス提供に関わる相談を含め、コミュニケーションが
とりやすい雰囲気である。
□はい
□いいえ
16.他の職員が、利用者に対してあなたが虐待と思われる行為を行っている
場面にでくわしたことがある。
□はい
□いいえ
17.他の職員が、利用者に対してあなたが虐待と思われる行為を行っている
場面を容認したこと(注意できなかったこと)がある。
□はい
□いいえ
18.最近、特に利用者へのサービス提供に関する悩みを持ち続けている。 □はい
□いいえ
19.最近、特に仕事にやる気を感じないことがある。 □はい
□いいえ
20.最近、特に体調がすぐれないと感じることがある。 □はい
□いいえ

C:早期発見チェックリスト

社会福祉法人 全国社会福祉協議会「障害者の虐待防止に関する検討委員会」平成 23 年 3 月版

  • 虐待の予兆や発生に対する気づきを高めるため、日々のサービス提供において以下の点に留意してください。
  • 多くの項目にあてはまると、虐待の可能性が高いものと考えられますが、これらは、主な着眼点ですので、日々の利用者の変化には十分に配慮した実践に取り組み虐待の早期発見に努めてください。
  • なお、これらの着眼点は、単に虐待防止の観点のみならず、利用者の意向や状況の把握にも役立ちサービスの質の向上にもつながります。

★「着眼点」に該当する場合にチェックしてください

《1.「身体的虐待」発見の着眼点》

着眼点 チェック欄
1.身体に不自然なキズ、あざ、火傷(跡)が見られることはありませんか?
*衣服の着脱時等にも留意してください。
2.1 について原因や理由が明らかにならない場合が多くありませんか?
3.以前に比べて家族や他の利用者、また、職員等への応対や態度が変わったように
感じられることはありませんか?
*急におびえる、少しの動きにも身を守るような素振りをとる 等
4.特に体調不良でもないような場合に、職員とのコミュニケーションが、
急に少なくなる等の変化はありませんか?
5.急に周りの人に対して攻撃的になることはありませんか?

《2.心理的虐待の着眼点》

着眼点 チェック欄
1.自傷、かきむしり等自らを傷つけるような行為が増えていませんか?
2.生活リズムが急に不規則になったようなことはありませんか?
*睡眠、食の嗜好、日課等の変化
3.身体を萎縮させるようなことがありませんか?
4.突然わめいたり、泣いたりすることが多くなったと感じられることは
ありませんか?
5.過食や拒食等、食事について変化が見られませんか?
6.以前よりも意欲がなくなった、投げやりな様子になった等と感じることは
ありませんか?
7.体調が悪いと訴える機会が増えていませんか?

《3.性的虐待の着眼点》

着眼点 チェック欄
1.人に対して嫌悪感を抱いているような態度や言動をとることが増えて
いませんか?
2.人に触れられることを極度に嫌がることが増えたように感じられることは
ありませんか?
3.歩行等がいつもより不自然であることや、座位が保てないようなことは
ありませんか?
4.肛門や性器からの出血やキズがみられませんか?
5.急に怯えたり、恐ろしがったりする、また、人目を避けるようなことは
ありませんか?
6.一人で過ごす時間が増えていませんか?

《4.経済的虐待の着眼点》

着眼点 チェック欄
1.年金等があるにも関わらずお金がないと訴えることはありませんか?
2.お金を引き出すことが頻繁ではありませんか?
3.サービスの利用料や生活費の支払いができないようなことはありませんか?
4.知人や友人に誘われて夜間出歩くようになっていませんか
(なっていると聞いていませんか)?
5.今まで付き合いのなかった人が家に出入りしていませんか
(するようになっていると聞いていませんか)?
6.出費をともなう外出や娯楽の機会が急に減ったように感じられませんか?

《5.ネグレクトの着眼点》

着眼点 チェック欄
1.食事を摂っていないように見えたり、空腹を頻繁に訴えることはありませんか?
2.劣悪な衛生状態や衛生環境にあると感じられることはありませんか?
異臭がする、髪や爪等が伸びたままで汚い、衣服が常に同じ 等
3.いつ見ても皮膚に湿疹や、オムツかぶれがあるように見られませんか?
4.整容に対して無頓着、あるいは拒否が多く見られませんか?
5.自分や他者、物に対して投げやりな態度が見られることはありませんか?
6.約束事や支援サービスを当日になってキャンセルすることが多くありませんか?

チェック後は、次のような「点検シート」に書き込んで結果を振り返りましょう。これ以外の方法でも構いません。課題を見つけて解決・改善につなげることが、点検の最大の目的です。







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