A 性同一性障害と性分化疾患は混同されやすい。以下、違いを確認しながら、性分化障害について解説します。
性別の判断は、染色体(XX,XY)、性腺(卵巣、精巣)、性器(子宮・膣、陰茎)がどちらに統一されているかで決められているが、それらが先天的に統一されていないかあいまいな状態を医学用語で「性分化疾患」という。
これまでこうした状態はインターセックス、半陰陽等の用語が充てられてきた。しかし誤解を招きやすく、当事者には蔑視的に感じられる言葉であるとして、国際的にDSD(Disorders of Sex Development)を用いることが提唱され(2006年)、2009年日本小児内分泌学会において日本語訳は「性分化疾患」に統一された。なお、心と身体の性が一致しない「性同一性障害」は含まれない。
「性分化疾患」の原因解明は、1990年代以降急速に進んだが、現在でも診断は難しく、誤った性別判断や不適切な医療の例が報告されている。そのため日本小児内分泌学会は、診断のガイドライン策定に着手した。
一方、新生児の段階で性別や治療の方向性を決めなければならない家族の心理的負担は大きい。当事者にとってはインフォームド・コンセントを欠いた医療となり、生育過程で自分の性に疑問や葛藤を抱えることにもつながる。さらに社会の偏見を前に、当事者や家族が声をあげられない状況もある。今後、当事者たちの内面も含めた包括的な支援が求められている。また、男・女の2つの性で区分されることが絶対的なものではないという理解を広げることも重要になっている。