0.はじめに
障害者施設で提供する福祉サービスのひとつに、食事サービスがあります。
利用者ごとに、食生活で気を付けなければならないことや、できること・できないことが異なります。それぞれに対応する必要があるのが大きな課題といえますが、さらに掘り下げて考えることで、よりきめ細やかなサービスを提供できるようになります。
障害者施設における食事サービスの目的をはじめとして、食事の課題と、そこから考えられる食事サービスのニーズついて以下、説明します。
1.障害者施設で提供する食事サービスの目的
障害者施設で提供する食事サービスの主な目的は、利用者の健康維持や増進です。
そのほかにも、利用者にとって以下のようなメリットがあります。
・食習慣や食事マナーを身につける
・社会性を養う
・食品名や献立名などの栄養知識を得る
・利用者家族への栄養相談を行う
・QOL(Quality of Life生活の質)を高める
特に注目すべきなのは、QOLの向上です。食事をただの栄養摂取の手法とするだけでなく、楽しい食事の時間を提供することで食生活が充実したものとなります。障害者施設だからこそ提案できることだといえます。
2.障害者施設における食事の課題
障害者施設で提供する食事サービスには、どのような課題があるでしょうか。課題を把握し改善を試みることで、よりきめ細やかなサービスが提供できるようになります。
それは利用者にとっての利益となり、満足度につながります。利用者やその家族との関係構築ができれば、それは障害者施設の評判となり、施設の利益にも貢献します。
利用者ごとに食事に関するニーズがある点が、課題として挙げられます。
障害者施設の利用者と一口にいっても、ハンデの種類や身体状況などの特性は人それぞれです。そのような特性ごとに、適した食事形態は異なります。
障がいの特性や身体状況以外にも、以下のような点への配慮が求められます。
・嚥下障害の有無
・食物アレルギー濃霧
・普段の食事形態
・嗜好
・食事への要望 など
障害者施設においても、利用者の高齢化への対応が求められます。高齢化が進む日本では、介護施設に関する課題は頻繁に取り上げられますが、障害者施設でも例外ではありません。障害者施設の食事サービスにおいても、深刻な問題となるケースがあります。
たとえば加齢に伴い、今まで出来ていたことが出来なくなるといったことがあります。すると、食事の内容や調理法を変更したり、食事介助が必要になったりします。
障害者施設における栄養ケア管理は、個別支援計画に基づいて行われます。そのため、さまざまな職種のスタッフと連携しながらの食事計画が必要です。利用者や提供するサービスによって異なりますが、障害者施設のサービス管理責任者や生活支援員をはじめとして、管理栄養士、看護職員、介護職員、作業療法士などとの連携が求められる場面もあります。
疾病、咀嚼・嚥下障害がある場合には、医師に指示を仰ぐことが必要です。
なお事業所の種類によっては、栄養マネジメントが加算対象となります。
栄養マネジメント加算
施設入所支援、福祉型障害児入所施設の場合には、「栄養マネジメント加算」があります。入所者の栄養状態を良好に保つことを目的としています。入所者ごとの栄養ケア計画作成、計画に基づくサービス提供、定期的な見直しなどを実施した場合に加算可能です。そのほか、常勤の管理栄養士を1名以上配置していること、事前に利用者の家族へ説明を行い、同意を得ることも算定要件に含まれます。
利用者の健康維持・増進にとって欠かせないのが栄養管理です。障害者施設では当然、栄養面に配慮した食事を提供します。しかし本来食事の目的は、栄養摂取だけではありません。むしろ栄養を摂ることだけを考えて、食事の用意をしたりご飯を食べたりする人のほうが少ないはずです。
楽しむための食事を提供することも、障害者施設の果たすべき役割といえます。
利用頻度が高い、あるいは入所期間が長くなればなるほど、食事メニューに飽きてしまいがちです。利用者によっては食事形態に制限があるため仕方がない部分もありますが、マンネリ化しないような配慮が求められます。
食事の満足度が、日常生活の充実やモチベーションアップにつながるケースも少なくありません。食事の時間が楽しみになるよう、飽きの来ないメニューを提供したいところです。
3.障害者施設における食事サービスのニーズ
障害者施設における食事の課題を上記に5つ取り上げました。これらをふまえて、障害者施設で求められる食事サービスのニーズとはどのようなものか考えてみたいと思います。利用者のニーズに応じることで、利用者やその家族の満足度向上を図りましょう。
それぞれの利用者に応じた食事形態を提供することが求められます。先述した通り、利用者ごとにハンデの種類や身体状況など、さまざまな特性があります。それらに応じる形で、常食以外にもきざみ食やミキサー食、流動食といった形態で対応できるとよいでしょう。そのほかにも、アレルギーへの対応や食事量の調整などができると、サービスの質向上につながります。
障害者施設においても、高齢化への対応が不可欠です。食事に関して言うと、加齢に伴い以下のような変化が現れます。
・食事が乾燥していると飲み込みづらい
・のどの渇きが感じにくい
・味が感じにくくなり、濃い味付けを好むようになる
・胃もたれしやすい このようなことをふまえて、食事の内容を変更したり、介助したりする必要が生まれます。
楽しい食生活を提供するのも障害福祉サービスの役割です。栄養を摂るためだけの食事ではなく、楽しむための食事を提供することは、利用者の自立支援にも貢献します。そのためには、栄養面に加えて、彩り豊かな食事が必要です。また、季節行事に合わせた食事の提供や、利用者参加型の食事作りやお菓子づくりなどのイベントの開催も効果的です。
このような取り組みは、食生活のマンネリ化といった課題解決にもつながります。
利用者の特性に合わせた食事提供をベースとして、献立のバリエーションの豊富さも求められます。食事サービスの主な目的は健康維持や増進ですが、心身の健康のためには食事を楽しむ、味わうといったことが必要です。
そこで欠かせないのが、さまざまな味付けやメニューが楽しめる食事です。
障害者施設向けの配食サービス等を利用する場合には、その点にも配慮しながら選定するとよいでしょう。
4.最後に、食事の課題解決で利用者のQOLを高める
障害者施設における食事の課題は、利用者ごとに特性が異なり、それぞれに応じた食事サービスの提供が求められることです。また、利用者にとって楽しい食事が提供できるか否かも重要な課題です。
課題を洗い出しそこから利用者のニーズを把握することで、質の高いサービスが提供できるようになります。
またニーズに応えて充実した食生活を提供することは、利用者のQOL向上にも貢献します。QOL向上は、これからの障害者施設が考えるべきことのひとつといえます。