難病⑤骨関節疾患

骨関節疾患について

   骨関節疾患とは、骨や関節などの運動器官に病変を有する疾患です。はっきりとした原因は特定されていませんが、加齢や薬の副作用や遺伝など、様々な原因によって体中の骨や関節の状態が変化・変形することによって、痛みなど、日常生活に様々な支障をきたすと考えられています。
 人口の高齢化により骨関節疾患を発症する患者さんが増加してきています。厚生労働省の国民生活基礎調査では、実際に介護が必要になる原因の10.9%が関節疾患、10.2%が骨折・転倒によるものです。この2つを合わせると21.1%となり、約5人に1人が骨関節疾患によって自立度低下が起こっていることになります。これらの骨関節疾患の治療には薬物療法や手術療法などとあわせて、リハビリテーションが必要となります。リハビリテーションでは、理学療法・物理療法・装具療法・生活指導などを行い、あわせて障害福祉サービスや介護保険制度の利用(家屋改修・ヘルパー利用)など、生活環境の改善をめざしています。

主な疾患と特徴

1.靱帯(じんたい)骨化症

   背骨には多くの靱帯組織が付着して、“柱”としての脊柱の構造を形成しています。椎体の前方には前縦靭帯が、椎体の後方(脊髄の前方)には後縦靭帯が存在し、それぞれの椎体を上下方向に連結しています。脊髄の後方には黄色靭帯が存在し、上下の棘突起を連結しています。何らかの原因により靱帯が肥厚して骨のように固くなる(骨化)する事で周囲の組織を圧迫して様々な症状の原因となります。
 骨化する人体によって後縦靱帯骨化症、黄色靱帯骨化症、前縦靱帯骨化症にわかれ、またそれぞれ他の靱帯骨化症を合併しやすいのが特徴で、骨化部位は縦方向や横方向に増大・伸展していきます。
     このうち後縦靱帯骨化症とは、後縦靭帯が骨になった結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気です。骨になってしまう脊椎の部位によってそれぞれ頚椎後縦靱帯骨化症、胸椎後縦靱帯骨化症、腰椎後縦靱帯骨化症と呼ばれます。 病気が発症するのは中年以降、特に50歳前後で発症することが多く、男女比では2:1と男性に多いことが知られています。
     単一の原因で生じる病気ではなく、複数の要因が関与して発病すると考えられています。この病気に関係するものとして、遺伝的素因、性ホルモンの異常、カルシウム・ビタミンDの代謝異常、糖尿病、肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレス、またその部位の椎間板脱出(ヘルニアの種類)などいろいろな要因が考えられています。
     特に家族内発症が多いことから遺伝子の関連が有力視されています。これまでの家計調査や双子の調査などにより、病気に遺伝が関係している事は明らかで、患者さんの兄弟に靭帯骨化症が認められる確率は約30%と報告されています。ただし、患者さんの血縁者に必ず遺伝するわけではなく、遺伝のほかにもさまざまな要因が関係して発症すると考えられてはいますが、はっきりとした原因の特定には至っていません。
     頚椎にこの病気が起こった場合に最初にでてくる症状として、首筋や肩甲骨周辺・指先の痛みやしびれがあります。さらに症状が進行すると、次第に痛みやしびれの範囲が拡がり、脚のしびれや感覚障害、足が思うように動かない等の運動障害、両手の細かい作業が困難となる手指の巧緻運動障害などが出現します。重症になると立ったり歩いたりすることが困難となったり、排尿や排便の障害が出現したり、一人での日常生活が困難になることもあります。
     胸椎にこの病気が起こると体幹や下半身に症状がでます。初発症状としては下肢の脱力やしびれ等が多いようです。重症になるとやはり歩行困難や排尿や排便の障害が出現することもあります。
     腰椎にこの病気が起こると体幹や下半身に症状がでます。初発症状としては下肢の脱力やしびれ等が多いようです。重症になるとやはり歩行困難や排尿や排便の障害が出現することもあります。
     すべての患者さんにおいて症状が悪化するわけではなく、半数以上の方は数年経過しても症状が変化しません。また骨化があればすぐに症状が出現するわけではありません。 症状のない方は定期的にレントゲン真検査をする必要があります。症状が重度になると、日常生活に障害がでて、介助を要することもあります。
     一般に骨化が急速に大きくなることは少なく、脊髄神経症状も必ずしも進行性とは限りませんので、手術時期を含めた治療方針は主治医の先生と相談の上、決定する必要があります。また、いったん手術によって症状が改善しても、数年から10年程度の経過で、同部位かほかの部位の骨化が大きくなって、再度症状が出現することがあります。そのため、この病気で手術した場合には、生涯にわたって定期的に画像検査を受けることが勧められます。
     手術をしない場合、骨化によって圧迫されている神経を保護することが治療の主目的となります。頚椎ではまず安静保持を保つため、外固定装具(頚椎カラー)の装着等を行います。この時頚椎は快適な位置にあることが必要です。高さの調節可能な装具が勧められます。また、首を後ろにそらせる姿勢は避ける必要があります。その他、薬物療法として消炎鎮痛剤、筋弛緩剤等の内服で自覚症状の軽減が得られることがあります。
     症状が重度の場合は手術治療をおこないます。手術方法は骨化の状態や部位に応じて様々な方法があります。基本的な手術の考え方は除圧と固定です。除圧とは脊髄への圧迫を取り去っていくことをいいます。圧迫が取り去られると神経症状が改善されます。また固定とは不安定な椎間を安定させることです。この2つにより、頸椎後縦靭帯骨化症を治療します。
     椎弓(ついきゅう)形成術が、もっともポピュラーな手術です。実際の手術としては、「椎弓」という部分を開いていき、脊柱管を広げます。これにより、脊髄の圧迫を取り除いていきます。開いた椎弓には、人工骨または本人の骨(棘突起:きょくとっき)などを入れます。
     前方除圧固定術は、その名の通り、頸の前側から椎体を削る手術です。椎体を削ることにより神経の圧迫を取り除いていきます。圧を取り除いた後、人工骨や金属製のプレートで椎体を固定します。
     後方除圧固定術の手術ではまず、椎弓形成と同じように頸の後ろ側から椎弓を開いていきます。それにより神経の圧迫を取り除いていきます。圧を取り除いた後に、スクリュー(医療用のねじの一種)を用いて椎体を固定していきます。
     胸椎では背骨が丸くなっているため、後方法で脊柱管を拡げるだけではなく、ボルトなどを用いて固定を加える手術が行われることが多くなっていますが、前方法が選択されることもあります。
     腰椎では後方法が一般的です。日常生活では、軽微な外力、例えば転倒などで神経の障害が急速に進行したり、四肢麻痺になることもありますので、十分注意する必要があります。
     一方、黄色靱帯が骨化すると、その部位での脊髄を圧迫して脊髄の症状(手足のしびれ感、筋力低下、歩行障害など)が出現します。黄色靱帯骨化症は胸椎に発生する事が多い傾向にあります。
     患者さんの多い胸椎の黄色靱帯骨化症では、足のしびれ、締めつけられるような感じ、脱力感、歩きにくさ、排尿の障害(頻尿・尿漏れなど)がでます。症状が軽い場合には、薬で様子を見ることがあります。神経の麻痺が進む場合には、神経を圧迫している靭帯の骨化を取り除く手術をします。日常生活では転んだりすると急に麻痺が進むことがあるので、注意が必要です。定期的な医療機関への受診をお勧めします。

2.特発性大腿骨頭壊死症

   特発性大腿骨頭壊死症とは、大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(骨が腐った状態ではなく、血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態のことです。骨壊死が起こること(発生)と、痛みが出現すること(発症)、には時間的に差があることに注意が必要です。つまり、骨壊死があるだけでは痛みはありません。骨壊死に陥った部分が潰れることにより、痛みが出現します。したがって、骨壊死はあっても、壊死の範囲が小さい場合などでは生涯にわたり痛みをきたさないこともあります。
     特発性大腿骨頭壊死症は、危険因子により、ステロイド関連、アルコール関連、そして明らかな危険因子のない狭義の特発性に分類されています。万一、大腿骨頭壊死症になり、痛みが出現した場合でも、手術などの適切な治療により、痛みのない生活を送ることができますので、過度な心配は禁物です。大量に飲酒される方や、ステロイドというお薬を大量に投与を受けた方に比較的多く発生しますが、何の誘因もなく生じることもあります。
     好発年齢(疾患にかかりやすい、あるいはおこしやすい年齢層)は、30~50歳代、ステロイド関連に限ると30歳代です。働き盛りの年代に好発するといえます。新患における男女比は、全体では1.8:1です。なおステロイド関連のものに限ってみると0.8:1といわれています。
     もともと血液循環の悪いところだけが壊死するので、その周囲の比較的血液循環のよい部分は時間が経過してもそのままです。したがって、細菌感染のように周囲に広がることはなく、ほとんどの場合、大きさに変化はありません。逆に、範囲が小さい場合は修復されて時間の経過とともに縮小することがあります。 症状は骨壊死に陥った部分が潰れて大腿骨頭に圧潰(あっかい)が生じたときに出現します。大腿骨頭壊死症の発生から症状が出現するまでの間には数ヵ月から数年の時間差があります。自覚症状としては、比較的急に生じる股関節部痛が特徴的ですが、腰痛、膝痛、殿部痛などで初発する場合もあります。初期の痛みは安静によって2~3週で軽減することもありますが、大腿骨頭の圧潰の進行に伴って再び増強します。治療法は年齢、内科的合併症、職業、活動性、片側性か両側性か、壊死の大きさや位置などを考慮して決定します。
     壊死の大きさや位置から予後がよいと判断できる場合や症状がない場合は保存療法が適応されます。関節症性変化が進むまで可動域は比較的保たれるため、積極的な可動域訓練は必要ない場合が多く、疼痛が強い時期には安静が大切です。杖による免荷や、体重維持、長距離歩行の制限、重量物の運搬禁止などの生活指導が行われます。疼痛に対しては鎮痛消炎剤の投与で対処します。 しかしながら、これらの方法では圧潰の進行防止は大きく期待できないため、圧潰進行が危惧される病型では骨頭温存のための手術療法の時機を逸しないことが重要です。症状が出現すれば、変形が進む前に手術療法を受ける方が治療効果は高くなります。
     自覚症状があり圧潰の進行が予想されるときは速やかに手術適応を決定します。若年者においては自分の関節を残す骨切り術が第一選択となりますが、壊死範囲の大きい場合や骨頭圧潰が進んだ症例、高齢者などでは人工関節置換術が必要となることもあります。
     大腿骨の転子間部で大腿骨頭及び頸部を内側に傾け(内反させ)たときに、壊死部が内側へ移動し荷重部からはずれる場合に適応があります。骨切りの形状に工夫をした大腿骨転子間弯曲内反骨切り術では合併症が少ないとされています。
     大腿骨頚部軸を回転軸として大腿骨頭を前方あるいは後方に回転させることで壊死部を荷重部から外し、健常部を新しい荷重部とする方法です。また、同時に大腿骨頭を内反させることにより、寛骨臼(かんこつきゅう)荷重部に対する健常部の占める割合をさらに増やすことができます。
     圧潰した大腿骨頭を人工骨頭で置き換えたり、股関節全体を人工股関節で置換したりします。骨切り術に比べて早期から荷重が可能で、入院期間も短期間ですみますが、人工物自体に耐久性の問題があり、将来再置換術が必要になる可能性があることを念頭に置く必要があります。若年者の場合は骨切り術の可能性をできるだけ追求し、人工関節置換術の適応には慎重でなければなりません。
     なお、ステロイド薬はいろいろな病気の治療のために使用します。既に処方されているステロイド薬を勝手に中止したり、量を減らすと、元の病気が悪化することや具合が悪くなることがありますので、決して自己判断で中止したり減らしたりしないでください。また合併疾患に対するステロイドの投与を継続しても壊死の範囲は大きくならないため、必要に応じてステロイドを継続投与することは可能です。

3.広範脊柱管狭窄症

  広範脊柱管狭窄症とは、頚椎、胸椎、腰椎の広範囲にわたり脊柱管が狭くなり、脊髄神経の障害を引き起こす病気です。頚椎部、胸椎部または腰椎部のうち、いずれか2カ所以上の脊柱管狭小化による神経症状により日常生活が大きく影響されることが疾患の条件です。頚椎と胸椎の移行部または胸椎と腰椎の移行部のいずれか一カ所のみの狭小化は除かれます。
     病気の原因は現在のところ不明ですが、加齢とともに椎間板や椎間関節の変性や黄色靭帯の肥厚などにより脊柱管狭窄を生じてくることが考えられています。男女比は2:1で男性に多く、中年以降特に60歳代に多く認められています。
    狭窄する脊柱管の部位の組み合わせによって手足にさまざまな神経症状がおきます。頚椎の病変からは、手のしびれ、使いにくさ、下肢のしびれやつっぱり、歩行障害、頻尿などがおこります。胸椎からはこのうち、手以外の部位の症状が出ます。腰椎の病変からは、立ち上がった時や歩いた時の下肢の痛みやしびれが生じます。
    治療として局所の安静を必要とします。そのため固定装具等を用います。消炎鎮痛剤やビタミンB12、血流を改善させるプロスタグランジン製剤、あるいは神経障害性疼痛に効くとされるプレガバリン等の薬も使われますが、痛みが強い場合には神経ブロックが行われることもあります。一般に、手や足に痛み、あるいはしびれが存在する場合、症状は良くなったり悪くなったり反復しますので、保存的治療を受けながら経過を観察します。
    それでも効果がないときは入院して安静にしたり、前記薬剤の点滴、また神経ブロックも併用したりすることがあります。しかし、手足の力が落ちて箸が使いにくくなったり、歩行障害が出たりする場合、また排尿や排便の障害がある場合など、脊髄の麻痺症状が明らかな場合や、保存治療でも効果がみられない場合は、手術療法を行います。頚椎部では狭窄部位に対しては後方から除圧する椎弓形成術が一般的ですが、まれに前方からの手術も行われます。胸椎部では後方から椎弓切除術が行われます。腰椎部では後方から椎弓切除術や拡大開窓術などが行われます。いずれの場所でも、背骨と背骨の間にある椎間関節まで除圧の範囲が拡がってしまう場合には、金属と骨移植を併用した固定術を行います。
     この病気は悪化してからでは改善が思うように行かない場合がありますので、その点を良く覚えておいて下さい。症状の変化には十分留意し、手足の痺れ、動きの悪化、感覚障害や、排尿排便の問題が出てきたら、必ず病院で相談して下さい。頸椎や腰椎に対して、急激な力を加えるような施術は避けるほうがよいでしょう。症状が改善しないか、悪化する場合には、整形外科や脳神経外科の専門医を受診して下さい。病態を把握し、正しく診断されることが第一です。

・Q&A

[▼開く] Q1.骨関節疾患における食事療法はありますか?[閉じる▲]
  A1.全粒の穀物と野菜を中心にした食事療法は、生涯に渡って、健康な骨格構造を維持するために寄与するとしています。またマクロビオティックの食事療法を行う場合には、必ず事前に専門家に相談するようにしてください。食事療法としては、以下のような生活様式や家庭療法があるとされます。
 1.毎食の主食として全粒穀物を摂る。 特に蕎麦(そば)は、若年者や健康な人の、骨や関節を強化する。ただし、すでに内臓に硬化や収縮症状が見られる場合には、蕎麦や粒蕎麦は避けること。 また、黒米など、黒色または黒っぽい色の穀物は、骨格の滋養となりますが、関節炎などの収縮症状には陽性が強すぎるため避けること。
 2.小麦粉食品は、できるだけ避けること。うどんやそうめん、全粒パスタなどの麺類は、1週間に2~3回食べてよい。
 3.精製された砂糖やはちみつ、チョコレートなどの単糖類は避けること。
 4.動物性食品は避けること。ただし、白身魚などの魚介類ならば、1週間に1~2回摂ってよい。
 5.豆類は、特に骨や関節を強化する食品です。 特に小豆やレンズ豆、ひよこ豆、黒豆など、小粒な豆を選んで使うとよい。豆製品も定期的に使うようにすること。豆製品では、特に高野豆腐がよい。
 6.野菜類では、根菜類や切干大根、干しシイタケ、ケールなどの冬野菜が、特に骨や骨格の滋養になる。 硬化や収縮の症状が見られる場合には、緑の葉物野菜が特によい。
 7.油分の過剰摂取を避ける。少量のゴマ油や良質の植物油は、骨や関節の疾患の大半で食事療法に使われる。ただしドレッシングなど、生の油は摂らないこと。
 8.海藻類ではコンブがよいが、陽性過剰な症状には収縮作用が強すぎるため避けること。
 9.味噌や醤油、自然海塩を含めた塩分の量は中庸とし、陽性症状ではやや少なめに、陰性症状ではやや多めに調節すること。
 10.果物や果汁は、基本的には制限するか避ける。 ただし陽性過剰な症状の場合には、例外的に少量摂るようにする。 ドライフルーツやブラックベリーなどの黒っぽい果物、スイカなどは、硬化した骨や関節を緩めるにはよい。
 11.ふりかけ類として、鉄火味噌や塩コンブ、塩海苔、ジャコ(乾燥小魚)には、骨や関節に対する強化作用がある。
 12.水分は、適量にして摂りすぎないようにするが、減らしすぎにも注意する。茎番茶や小豆のお茶、コンブ茶など、伝統的なお茶を主な飲み物とする。これらのお茶は、腎臓や骨格の滋養になるものである。 特に小豆のお茶は、腎臓や膀胱の機能向上と骨の育成に効果的である。少量の自然海塩またはコンブ1片を入れて作ったお茶を、1週間に2~3回、小さなカップに1~2杯ずつ飲むと、機能保持に役立つ。
 《留意点》
 1.骨折や内出血、重症な疾患が疑われる症状の場合、至急、西洋医学で医師の診断を受けること。
 2.放射線による治療は、骨を膨張させ、痛みや不快感、長期に渡る合併症を引き起こす可能性があるとされます。やむを得ず放射線治療が勧められる場合もありますが、その場合も、頻度や強度を可能な限り抑えるようにします。この場合、味噌や海藻、ゴマ塩、梅干しなど、塩気のある調味料やふりかけ類をやや多めに摂ると、放射線の影響を相殺する助けになるとしています。
[▼開く] Q2.生活するうえで使っている便利なグッズを教えてください[閉じる▲]
 A2.障害を抱える人が使用する自助具は、昔はその障害者専門の機関などでしか購入することができませんでした。またその選択肢も少なく、デザインも地味なものが多いというのが、正直な印象で、値段も一般的なものよりも高額になりがちでした。 しかし現在、障害当事者からの要望や世界的なバリアフリー化の動きから、町のお店やインターネットなどで、障害の有無に関係なく、誰もが手軽に購入することができるものが増えてきています。デザインも工夫され、おしゃれなものやより使いやすいものが研究・開発されています。
 たとえば今や誰もが持っているスマートフォンですが、もちろん肢体不自由の人も使用します。しかし四肢にまひがあったり握力が少ない人はスマートフォンを手で握って持つことができません。そこでこのスマホリングに指をひっかけることで、握力がなくてもしっかりと持つことができます。スマホリング自体は特段肢体不自由の人専用に作られているわけではなく、多くの人が普段使用する便利グッズとして販売されています。ですが肢体不自由の人にとってもこれは欠かせないものとなっています。 他にも化粧水用の瓶などにつけるポンプヘッド、マジックテープでものを固定して持つことができるグローブなども販売されています。そしてバリアフリーのことを考えて作られ、誰もが気軽に購入できる商品はこれからも増え続けることが期待されます。
[▼開く] Q3.難病で体が不自由になっても楽しめる娯楽を教えてください[閉じる▲]
 A3.何らかの障害があることによって、健常な人ならできる娯楽ができなくなることもあります。中でも身体障害は、障害される部位や程度によりますが、他の障害に比べてもその難易度は高いといえます。しかし、工夫や努力次第で残された能力を活かして楽しめる娯楽はいろいろあります。 スポーツではパラリンピックが最も有名でしょう。パラリンピックの選手の中には、人生の途中で身体に障害を負い、そこから壮絶な努力を重ねてその分野のトップに上り詰めた人がたくさんいます。
 次にアート分野ですが、絵を書く場合には手が使えない方は口を使って描いたり、障害者で組んでいるバンドグループでは楽器を演奏する人と歌う人を障害の種類によって分担したりと、工夫しながらアート活動を行っている方がいます。健常な方では感じ取れていない部分を独特の感性で表現するアートはきっと多くの人の心を動かすものになるでしょう。 ほかにも、車いす利用者で旅行が趣味の人は、他人の力を借りながら旅を楽しんだりもします。 大切なのは障害があってもなくても、「何ができるか」ではなく「何がしたいか」ということで、それを主軸にすえ、それに向かって課題を解決するために、全力で努力し、また時には他人の力に頼って、やりたいことができた時の達成感や喜びは、きっと何にも代えがたい自分だけの宝物になることでしょう。

 







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