事業主に知っておいて欲しいこと(障害者雇用のルール)

  1. 障害者雇用率制度

従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。(障害者雇用促進法43条第1項
43条第1項 事業主(常時雇用する労働者を雇用する事業主をいい、国および地方公共団体を除く)は、厚生労働省令で定める雇用関係の変動がある場合には、その雇用する対象障害者である労働者の数が、その雇用する労働者の数に障害者雇用率を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる)以上であるようにしなければならない。
民間企業の法定雇用率は2.3%です。従業員を43.5人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。なお、2024年4月より(令和6年4月1日から令和8年6月30日までの間)、法定雇用率は2.5%、従業員を40.0人以上に拡大されます。

障害者雇用率制度とは……障害者について、一般労働者と同じ水準において常用労働者となり得る機会を確保することとし、常用労働者の数に対する割合(障害者雇用率)を設定し、事業主に障害者雇用率達成義務等を課すことにより、それを保障するものです。

■民間企業における雇用率設定基準

※ 短時間労働者は、原則、1人を0.5人としてカウント。
※ 重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人としてカウント。短時間重度身体障害者、重度知的障害者は1人としてカウント。

■ 特殊法人、国及び地方公共団体における障害者雇用率

一般の民間企業の障害者雇用率を下回らない率をもって定めることとされている。
(参考) 現行の障害者雇用率(令和5年4月1日から)

<国及び地方公共団体>
 国、地方公共団体 = 2.8%
 都道府県等の教育委員会 = 2.7%
<民間企業>
 民間企業 = 2.5%
 特殊法人等 = 2.8%
〇雇用・就業は、障害者の自立・社会参加のための重要な柱。
〇障害者が能力を最大限発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指す。
〇事業主に対して、従業員の一定割合(法定雇用率)以上の障害者の雇用を義務付けられています。
 民間企業:2.5%
 都道府県等の教育委員会:2.7%
 国、地方自治体:2.8%

週所得労働時間 30時間以上 20時間以上30時間未満 10H以上20H未満
身体障害者 1 0.5
重度 2 1 0.5
知的障害者 1 0.5
重度 2 1 0.5
精神障害者 1 0.5※ 0.5

精神障害者である短時間労働者で、①かつ②を満たす方については、1人をもって1人とみなす。
①新規雇入れから3年以内の方 又は 精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方。
②令和5年3月31日までに、雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方。

■雇用義務を履行しない事業主に対しては、ハローワークから行政指導が行われます。

◎障害者雇用率達成指導の流れ
実雇用率の低い事業主については、下記の流れで雇用率達成指導を行い、「雇入れ計画」の着実な実施による障害  者雇用の推進を指導しています。

雇用状況報告(毎年6月1日の状況)

雇入れ計画作成命令(2年計画)

雇入れ計画の適正実施勧告

特 別 指 導

企 業 名 の 公 表

(障害者雇用促進法 第43条第7項)



翌年1月を始期とする2年間の計画(※)を作成するよう、公共職業安定所長が命令を発出
(同法第46条第1項)


計画の実施状況が悪い企業に対し、
適正な実施を勧告(計画1年目12月)
(同法第46条第6項)


雇用状況の改善が特に遅れている企業に対し、
公表を前提とした特別指導を実施
(計画期間終了後に9か月間)



(同法第47条)

不足数の特に多い企業については、当該企業の幹部に対し、厚生労働省本省による直接指導も実施している。
※平成24年1月1日以降の日を始期とする雇入れ計画から計画期間は3年間から2年間に短縮している。

なお、障害者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できることとしています(特例子会社制度)。
また、企業グループ算定特例事業協同組合等算定特例といった制度があります。

〈申請書類〉

・企業グループ算定特例制度  
関係子会社特例認定申請書  
親事業主及び関係子会社の概要  
障害者雇用促進計画書 ※必要な事業主の方のみ
・事業協同組合等算定特例制度  
特定事業主特例認定申請書  
事業協同組合等及び特定事業主の概要  
障害者雇用促進計画書 ※必要な事業主の方のみ

※認定要件の確認にあたり、上記以外の書類も提出いただくこととしています。
 詳細な要件やご不明な点がございましたら、最寄りのハローワークまたは労働局までお問い合わせください。

■除外率制度の概要

このほか、機械的に一律の雇用率を適用することになじまない性質の職務もあることから、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度を設けています。
(この除外率制度は、廃止となっていますが、当面の間、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小することとされています。)

《除外率制度について》

障害者雇用促進法では、障害者の職業の安定のため、法定雇用率を設定しています。
現在の民間事業主の法定雇用率・・・2.5%
一方、機械的に一律の雇用率を適用することになじまない性質の職務もあることから、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際に、除外率に相当する労働者数を控除する制度(障害者の雇用義務を軽減)を設けていました。
この除外率制度は、ノーマライゼーションの観点から、平成14年法改正により、平成16年4月に廃止となりました。 経過措置として、当分の間、除外率設定業種ごとに除外率を設定するとともに、廃止の方向で段階的に除外率を引き下げ、縮小することとされています(法律附則)。
平成16年4月と平成22年7月に、それぞれ、一律に10ポイントの引下げを実施しました。
除外率設定業種 除外率
・非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬精製業を除く。) ・倉庫業
・船舶製造・修理業、船用機関製造業 ・航空運輸業
・国内電気通信業(電気通信回線設備を設置して行うものに限る。)
5%
・採石業、砂・砂利・玉石採取業 ・水運業
・窯業原料用鉱物鉱業(耐火物・陶磁器・ガラス・セメント原料用に限る。)
・その他の鉱業
10%

・非鉄金属第一次製錬・精製業
・貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く。)

15%

・建設業 ・鉄鋼業 ・道路貨物運送業 ・郵便業(信書便事業を含む。)

20%
・港湾運送業 25%
・鉄道業 ・医療業 ・高等教育機関 30%
除外率設定業種 除外率
・林業(狩猟業を除く。) 35%
・金属鉱業 ・児童福祉事業 40%
・特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く。) 45%
・石炭・亜炭鉱業 50%
・道路旅客運送業 ・小学校 55%
・幼稚園 ・幼保連携型認定こども園 60%
・船員等による船舶運航等の事業 80%

《「障害者」の範囲》
障害者雇用率制度の上では、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象としています(短時間労働者は原則0.5人カウント)。
ただし、障害者雇用に関する助成金については、手帳を持たない統合失調症、そううつ病(そう病、うつ病を含む)、てんかんの方も対象となり、またハローワークや地域障害者職業センターなどによる支援においては、「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方」が対象となります。

  2. 障害者雇用納付金制度

障害者を雇用するためには、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要となるために、健常者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うことから、障害者を多く雇用している事業主の経済的負担を軽減し、事業主間の負担の公平を図りつつ、障害者雇用の水準を高めることを目的として 「障害者雇用納付金制度」が設けられています。

具体的には……法定雇用率を未達成の企業のうち、常用労働者100人超の企業から、障害者雇用納付金が徴収されます。この納付金を元に、法定雇用率を達成している企業に対して、調整金、報奨金を支給します。障害者を雇い入れる企業が、作業施設・設備の設置等について一時に多額の費用の負担を余儀なくされる場合に、その費用に対し助成金を支給します。

障害者雇用納付金制度の概要
障害者雇用納付金制度の手続

《特例給付金制度の創設》
令和元年改正の障害者雇用促進法において、週所定労働時間が20時間未満の障害者を雇用する事業主に対する特例給付金制度が創設されました(令和2年4月1日施行)。
特例給付金について
特例給付金のご案内

  3. 雇用の分野における障害者の差別禁止および合理的配慮の提供義務

障害者に対する差別の禁止

事業主は、募集・採用において、障害者に対して障害者でない者と均等な機会を与えなければなりません。また、賃金・教育訓練・福利厚生その他の待遇について、障害者であることを理由に障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはなりません。(障害者雇用促進法第34~35条)

障害者に対する合理的配慮

事業主は、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となっている事情を改善するため、募集・採用に当たり障害者からの申出により障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければなりません。
また、障害者である労働者と障害者でない労働者との均等待遇の確保や、障害者である労働者の能力発揮の支障となっている事情を改善するため、障害の特性に配慮した、施設整備、援助者の配置などの必要な措置を講じなければなりません。ただし、事業主に対して「過重な負担」をおよぼすこととなる場合は、この限りではありません。(障害者雇用促進法第36条の2~36条の4)
改正障害者雇用促進法に基づく「障害者差別禁止指針」と「合理的配慮指針」について
障害者雇用 無料相談窓口((公社)全国障害者雇用事業所協会) (厚生労働省委託事業)

  4. 障害者職業生活相談員の選任

障害者を5人以上雇用する事業所では、「障害者職業生活相談員」()を選任し、その者に障害のある従業員の職業生活に関する相談・指導を行わせなければなりません。(障害者雇用促進法79条)
障害者職業生活相談員の資格認定講習を修了した従業員のうちから選任してください。

障害者を雇用する上で必要な3つの手続きをご存知ですか?

障害者職業生活相談員の選任、障害者雇用推進者の選任、障害者の解雇は届け出等が必要です。

①障害者職業生活相談員の選任

常時雇用する障害者が5人以上の事業所では、障害者の実人員が5人以上となってから3か月以内に、職場内で障害者の職業生活全般の相談に乗る「障害者職業生活相談員」を選任する必要があります(選任する者には一定の要件があります)。これは、障害者が職場に適応し、また、その能力を最大限に発揮できるよう、障害特性に十分配慮した適切な雇用管理を行うことを目的としています。
また、選任後は、遅滞なくその事業所を管轄するハローワークに「障害者職業生活相談員選任報告書」を届け出る必要があります。
《障害者職業生活相談員について》
障害者職業生活相談員(以下「相談員」)は、障害者の職業生活全般についての相談、指導を行う企業内担当者をいいます。

具体的な職務は以下のとおりです。
(1)障害者の適切な職務の選定、能力の開発向上等障害者が従事する職務の内容に関すること。
(2)障害者の障害に応じた施設設備の改善など作業環境の整備に関すること。
(3)労働条件や職場の人間関係等障害者の職場生活に関すること。
(4)障害者の余暇活動に関すること。
(5)その他障害者の職場適応の向上に関すること。

相談員に選任する者は、以下のような要件のいずれかを満たす必要があります。
● 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施する「障害者職業生活相談員資格認定講習」を修了している必要があります。
※研修の日程等はこちらをご参照ください。
 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04/koshu.html
● 大学等卒業後、1年以上障害者である労働者の職業生活に関する相談および指導の実務に従事した経験がある。
● 3年以上、障害者である労働者の職業生活に関する相談および指導の実務に従事した経験がある相談員を選任(変更を含む)した場合は、「障害者職業生活相談員選任報告書」の提出が必要となります。届出様式は厚生労働省ホームページでダウンロードできるほか、電子申請も可能です。

②障害者雇用推進者の選任

障害者の雇用義務のある事業主(38.5人※以上の特殊法人、43.5人※以上の民間企業)は、企業内で障害者雇用の取組体制を整備する「障害者雇用推進者」を選任するよう努める必要があります(人事労務担当の部長クラスを想定しています)。
毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する様式内に、障害者雇用推進者の役職・氏名を記入する欄があります。
※ 短時間労働者(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者を言います)の場合は、1人を0.5人としてカウント。

《障害者雇用推進者について》
障害者雇用推進者は、障害者の雇用の促進および継続を図るため、企業内の障害者雇用の取組体制の整備や、施設または設備、その他の諸条件の整備を図る責任者をいいます。
毎年6月1日現在の「障害者雇用状況報告」を記入する際、障害者雇用推進者の選任状況も併せて記入してください。

③障害者の解雇の届け出

障害者の再就職は一般の求職者と比べて困難であるとされているため、ハローワークでは、解雇される障害者に対して、早期再就職の実現に向けて的確かつ迅速な支援を行っています。このため、全ての事業主は、障害者を解雇する場合、速やかに障害者を雇用していた事業所を管轄するハローワークに「解雇届」を届け出る必要があります。
※週所定労働時間20時間未満の常時雇用する障害者を解雇する場合も、届出が必要です。

《障害者の解雇の届け出について》
「労働者の責めに帰すべき理由による解雇」や「天災事変その他やむを得ない理由のために事業の継続が不可能となったことによる解雇」を除き、障害者を1人でも解雇する場合、解雇届の提出が必要です。
届出様式は厚生労働省ホームページでダウンロードできるほか、電子申請も可能です。
周知用リーフレット[PDF形式:727KB]
障害者職業生活相談員選任報告書[Excel形式:45KB]
電子申請によって報告することもできます。

  5. 障害者雇用に関する届出

 ①障害者雇用状況報告

従業員43.5人以上の事業主は、毎年6月1日現在の障害者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務があります(障害者雇用促進法43条第7項)。毎年報告時期になりますと、従業員43.5人以上規模の事業所に報告用紙が送付されますので、必要事項を記載の上で7月15日までに報告してください。
電子申請によって報告することもできます。
なお、報告に当たっては、プライバシーに配慮した障害者の把握・確認を行うようにしてください。
PDF プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの概要-事業主の皆様へ- [874KB]
PDF プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドラインの本文-事業主の皆様へ- [550KB]

 ②解雇届

障害者を解雇しようとする事業主は、その旨を速やかにハローワークに届け出なければなりません。(障害者雇用促進法81条第1項)
周知用リーフレット[前項]障害者を雇用する上で必要な3つの手続きをご存知ですか?の③参照。
障害者解雇届[Excel形式:49KB]。
電子申請によって報告することもできます。

  6. 障害者の虐待防止

障害者を雇用する事業主は、障害者虐待を防止するため、労働者に対する研修(※)の実施、障害者や家族からの苦情処理体制の整備などの措置を講ずることが必要です。(障害者虐待防止法第21条)
※具体的には、障害者の人権、障害者の特性に配慮した接し方や仕事の教え方などに関する、従業員に対する研修です。
《参考》
障害者虐待防止の研修のためのガイドブック 社会福祉法人 全国社会福祉協議会 令和4(2022)年1月版







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