就労移行支援について解説・利用までの手順

目次

 就労移行支援事業所とは、障害者総合支援法に規定される障害福祉サービス(自立支援給付)の中の訓練等給付に位置付けられるサービスを提供する事業所です。
 障害があって一般就労したいけど就職が決まらない方、履歴書作成、面接やコミュニケーション等が苦手な方、仕事が長続きせずキャリアが作れない方など、就職に困っている方のために就職から定着までをサポートしています。就労移行支援事業所では、「2年間」という利用期間の中で、一般企業に就職しその後の就労継続を目指して支援します。

就労移行支援の利用対象者

 就労移行支援の対象になる方は、以下のとおりです。

  • 原則として18歳以上満65歳未満(※)の方

    ※例外として「65歳に達する前の5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けていた方で、65歳に達する前日において就労移行支援の支給決定を受けていた方は、当該サービスについて引き続き利用することが可能」と定められています。
  • 身体障害、知的障害、精神障害(統合失調症やうつ病、双極性障害、適応障害、てんかんなど)、発達障害、難病の方のある方
  • 一般企業(※)への就職を目指しており、就労が可能と見込まれている方

     「就労継続支援事業所(A型・B型)」のように、通常の事業所に雇用されることが困難な方に向けた、福祉支援サービスである事業所は対象となりません。
  • 現在、就労していない方(※)

    ※申請を受けつける自治体の判断により、休職中やアルバイトをされている方などの利用が、例外的に認められる場合もあります。休職者については、所定の要件を満たす場合に利用が可能となります。
     就労移行支援は、障害者手帳をお持ちでない方でも、医師の診断書や意見書など、障害や疾患により支援が必要であることが確認できる書類があれば、利用を申請することができます。
     また、一般企業で働いていたが休職中の方や、在学中の大学生(4年制大学・大学院・短大・高専含む)の方についても、一定の条件を満たす場合にも、ご利用いただけることがあります。
就労移行支援のサービス内容

就労移行支援のサービスは、以下の「4つのステップ」に沿って支援が提供されます。

  1. 職業訓練:仕事をするために必要な知識・能力向上のための訓練、職場体験、企業実習
  2. 就職活動のサポート:就職相談、応募書類作成アドバイス・面接対策、適性に合った職場探し
  3. 職場探し:個人の適性や能力に応じた求人案件のリサーチ・開拓、求人案件の紹介
  4. 就職後の職場定着支援:勤務継続するために必要な相談、支援をするための面談、企業に対する職場環境調整の依頼
利用する際に必要な手続きは?

 就労移行支援制度とは社会福祉サービスの一種です。サービスを利用される際には各自治体の障害福祉課の窓口で「サービス等利用計画書」と本人が障害や難病を抱えている方だということを証明できる書類(障害者手帳や医師の診断書、または通院記録など)の提出が必要です。就労移行支援制度のような社会福祉サービスを受けるときは、手続きの始めとして、市区町村が発行する「受給者証」が必要です。利用計画書は自分で作成することもできますが、市区町村が指定する「指定特定相談支援事業所」で作成してもらうこともできます。

利用までの流れ

6つのステップで利用までの流れを簡単に説明しました。先ずは気軽に問合せすることから始めましょう。

就労移行支援のサービス利用期間
 就労移行支援は利用開始から2年以内という期間で就職することを目指しているため、期間は原則2年と定められています。その後引き続き職場に定着するまでケアを受けられる、定着支援は原則6か月間の期間が別に設定されています。

 また就労移行支援を利用して、途中で辞めてまた入り直すという場合は、利用期間をゼロからリセットすることはできません。例えば期間中、1年利用して中断した場合は、残りの1年が再利用可能期間となります。

 就活支援期間の2年で就労に結びつかなかった場合は期間延長することが可能ですが、その期間延長ができるかどうかは市区町村の審査会によって決定されます。合理的な根拠(延長することで支援効果が見込まれるなど)があれば最大延長期間として1年間、期間延長することが可能となります。

 ただ、期間延長しても一般企業への就労が困難と見られる場合は、「就労継続支援」というもう1つの福祉支援サービス制度を利用することを勧めるか検討されます。

サービスの利用料金

 就労移行支援制度の利用期間中の利用料金は厚生労働省によって定められており、9割を市区町村が補助金で負担し、1割の利用料金を利用者が就労移行支援事業所に支払います。
本人の負担額は年収や利用日数によって異なりますが、1か月の利用限度額が下記のように決まっているので、年収や利用日数が多くなってもその利用料金額を超えることはありません。

 なお、収入によって利用料金の負担額が決まることから、約9割の方が0円(無料)で利用されています。

 就労移行支援事業所では、基本的に賃金(工賃)の支払いはありません。就労移行支援で行う一連の作業などはあくまでも一般就労を目指した訓練であるという位置付けのためです。

1か月の利用限度額
世帯収入状況 負担上限額/月
生活保護世帯
市区町村民税非課税世帯
(約年収300万円未満)
0円
市区町村民税課税世帯(約年収600万円未満) 9,300円
上記以外 32,000円
就労移行支援のまとめ

 以上、就労移行支援について、利用対象からサービス内容、利用の手続きや流れ、利用期間、利用料金まで障害者のためのその就労サービスがどのようなものであるか、お解りいただけたと思います。
障害者差別解消法や、障害者雇用促進法では、企業などの事業主の側が障害者に対して「合理的配慮の提供」をおこなうことを定めていますが、いくら障害への配慮を提供してもらえるとは言っても、どのような配慮でも無条件に受けられるわけではありません。合理的配慮の提供を求める際には、障害者の側も「自分自身でケアができる部分」と「配慮が必要な部分」とを明確にしたうえで、企業の側との話し合いによって配慮が提供されるかどうかが決まります。そこで大切になるのが、以下のことがらです。

  • 自分の得意なこと、苦手なことは何か。
  • どのようなことであれば、自分は仕事で貢献ができるのか。
  • 自分に向いている働き方や職種や職場環境は、どのようなところなのか。
  • 自分は「働く」ことを通じて、どのような目標を実現したいのか。
  • 目標を実現するためには、一般雇用枠と障害者雇用枠のどちらで就職すべきなのか。

就労移行支援事業所を訪ねるにあたって、これらのことを漠然とでも考えておくことをお奨めします。ひと口に「障害者雇用での就職・転職を目指す」といっても、考えるべきことはたくさんあり、自分一人で就職活動をおこなうには限界があります。「自分らしい働き方」を見つけるためにも、自分の目標に向けたよりよい就職・転職活動ができますことを願っております。

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