言語聴覚士

 言語聴覚士とは

言語聴覚士とはどんな仕事をする人のことを言うのでしょうか。先ずは総論的なことからお話しします。

言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist (ST))とは、「ことば」「聞こえ(聴こえ)」「飲み込み」に障害のある人のリハビリや、家族に指導・支援を行う医療職です。

理学療法士・作業療法士と同じように「リハビリ職」に当たる仕事となります。1997年に国家資格となり、国家試験に合格して厚生労働大臣から免許を受けなければ言語聴覚士にはなれません。毎年1千5百名程度が言語聴覚士となり、有資格者数は、2012年3月には2万人を超え、2019年3月には約3万2千人となっています。
私たちはことばによってお互いの気持ちや考えを伝え合い、経験や知識を共有して生活をしています。
ことばによるコミュニケーションには言語、聴覚、発声・発音、認知などの各機能が関係していますが、病気や交通事故、発達上の問題などでこのような機能が損なわれることがあります。言語聴覚士は専門的なサービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。また、摂食・嚥下(えんげ=飲み込み)の問題にも専門的に対応します。
ことばによるコミュニケーションの問題は脳卒中後の失語症、聴覚障害、ことばの発達の遅れ、声や発音の障害など多岐に渡り、小児から高齢者まで幅広く現れます。言語聴覚士はこのような問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査・評価を実施し、必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行います。
このような活動は医師・歯科医師・看護師・理学療法士・作業療法士などの医療専門職、ケースワーカー・介護福祉士・介護支援専門員などの保健・福祉専門職、教師、心理専門職などと連携し、チームの一員として行います。
言語聴覚士は医療機関、保健・福祉機関、教育機関など幅広い領域で活動し、コミュニケーションの面から豊かな生活が送れるよう、ことばや聞こえに問題をもつ障がい者とご家族を支援します。
その歴史は浅く言語聴覚士の国家資格は、1960年代半ばからその必要性が叫ばれてきました。1971年には国立聴力言語障害センター(現国立身体障がい者リハビリテーションセンター)に専門職員養成所が設置され、言語聴覚士の養成が始まりました。
その後、急速な高齢化社会の到来を迎え、言語聴覚士の早急な国家資格化が必要であるということで、1997年12月の国会で言語聴覚士法が制定されました。1999年3月に第1回国家試験が実施され、4003名の国家資格者としての言語聴覚士がこの国で最初に誕生しました。

 言語聴覚士になるには

言語聴覚士になるためには、高校卒業後、文部科学大臣が指定する学校(3~4年制の大学・短大)または厚生労働大臣が指定する言語聴覚士養成所(3~4年制の専修学校)を卒業することで受験資格が得られます。一般の4年制大学を卒業している人は、指定された大学・大学院の専攻科または専修学校(2年制)を卒業すれば受験資格を得られます。その後、国家試験に合格してはじめて言語聴覚士になります。

まとめると、養成校には次の4種類があります。

  • 4年制の大学
  • 3年制の短大
  • 3年または4年の専門学校
  • 一般の4年制大学の既卒者は2年制の専修学校

医療系の国家資格は、通信教育では取得できません。学校へ通う必要があります。

同じリハビリ専門職でもある理学療法士や作業療法士に比べて養成校は少ないのが現状です。例えば理学療法士や作業療法士は国立大学の養成学校がありますが、言語聴覚士は国立大学の養成校はありません。公立の大学では、唯一県立広島大学だけです。

合格率

「言語聴覚士の合格率は低い」と一般的に言われています。確かに2013年くらいまでは50~60%台で推移していました。理学療法士、作業療法士の合格率が80%ほどであるのと比べても難易度は高めでした。 
しかし、過去10年間の推移では徐々に合格率は高まっています。2014年以降はほぼ70%以上(2016年は67.6%)を維持し、2018年(第20回)では79.3%と、80%に近い合格率です。ほぼ理学療法士、作業療法士の合格率に近づいたといえます。 言語聴覚士の合格率は低いというのは過去の話しになりつつあるようです。

受験に関する書類は、公益財団法人医療研修推進財団(〒105-0003東京都港区西新橋1丁目6-11)に提出して下さい。日程に関しては公益財団法人 医療研修推進財団 (pmet.or.jp)で確認ください。

学校の選び方

どの学校を選ぶかで言語聴覚士としての人生が左右されると言っても過言ではありません。卒業した学校には多くの求人案内がきますが、学校によって内容も随分異なります。最初に勤めた病院・施設によって、言語聴覚士としての方向性や将来は半分くらい決まります。多くの学校ではオープンキャンパスを行っているので、見学を兼ねて話しを聞きに行くのもよいでしょう。しかし、生徒を集めたいのはどこも同じです。オープンキャンパスではどこもよい話しか言わないということを頭に入れておく必要があります。
在学中の学生に話しを聞くのも手です。一番ためになる情報を提供してくれるのは現場に出ている卒業生です。
日本言語聴覚士協会のホームページに養成校一覧というページがありますので参考にしてください。そこで複数校選んでオープンキャンパスへ行かれるのもよいでしょう。 肝心な学校の実力ですが、ホームページに載っている就職実績を見ればだいたい判断できるようです。総合病院、リハビリテーション病院、などと大型の病院や専門施設への就職実績が並んでいれば安心です。
介護老人保健施設、訪問リハビリステーション、などの就職先ばかりが多く並んでいたら注意した方がいいかもしれません。あまり職場環境がよくないケースがこれまではあったからです。
済生会、公立病院(市立、県立、国保、国公立大学附属)、大学付属など安定した大型の病院や施設が並んでいる学校はお薦めです。就職後は給与・待遇も安定しており、長く安心して勤められます。
何故こんなことを言うかというと、まだまだ言語聴覚士の歴史が浅いことに起因しています。大きな病院であれば理学療法士、作業療法士、言語聴覚士としっかりと役割分担ができているのですが、地域医療(リハビリ施設・訪問リハビリなど)の現場では、これまで理学療法士と作業療法士はどちらでもいい場合がほとんどでした。それに対して、言語聴覚士は理学療法士や作業療法士の代わりはつとまりません。つまり、病院側としても、言語聴覚士の必要性は薄いというというのが現だったのです。そのことを考えると、まだまだ認知されていないため安定した職場を考えると、上記のような言い方になってしまいます。
但し、理学療法士や作業療法士が飽和状態に近づいている反面、まだまだ言語聴覚士はこれから求められ認知されてゆくことの間違いない国家資格です。現状はそうでもこれから徐々に認知は上がり、必要とされる場が増え環境は徐々に整っていくことは憶えておいて下さい。

受験資格

国家試験の受験資格を得るためには、大きく分けて2つのルートがあります。
1つ目は、高校卒業後に文部科学大臣が指定する3~4年制の大学や短期大学、または都道府県知事指定の専修学校に進むルートです。もう1つは、一般の4年制大学を卒業後、指定の大学・大学院の専攻科や言語聴覚士養成校(専修学校)を卒業するルートです。これらの学校にて「基礎分野」「専門基礎分野」、「専門分野」の3分野に関する知識・技能を身に着けます。なお、「専門分野」では、コミュニケーションや摂食・嚥下などにおける障害や疾患について講義で学ぶと同時に、演習にてそれらの障害・疾患の治療法およびリハビリテーションの技能を身に着けていくことになります。その後、毎年2月に行われる国家試験をパスすることで、はれて言語聴覚士の資格を取得することができます。
例外には、①言語聴覚士の養成に関わる一定基準の科目をすでに習得している者、②外国で言語聴覚士に関する教育をすでに修了した者の場合があります。
①の場合は、1年間、指定された養成校にて学ぶことで、②の場合は、厚生労働大臣の認定を受けることで、それぞれ言語聴覚士の国家試験の受験資格を取得することができます。

試験情報

申込手続 11月中旬~12月上旬
試験日  2月中旬、合格発表3月下旬
試験地  北海道、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県

試験科目 筆記試験

・基礎医学
・臨床医学
・臨床歯科医学
・音声・言語・聴覚医学
・心理学
・音声・言語学、
・社会福祉・教育
・言語聴覚障害学総論
・失語・高次脳機能障害学
・言語発達障害学
・発声発語・嚥下障害学
・聴覚障害学

受験手続(令和元年の場合)

基本的に学校や養成所で受験の手続きは準備できるので窓口で訊ねてみて下さい。

受験願書

規則様式第5号により作成する。受験願書に記載する氏名は、戸籍に記載されている文字を使用することになっています。

写真

出願前6ヵ月以内に脱帽正面で撮影した縦6センチメートル、横4センチメートルのもので、その裏面に撮影年月日及び氏名を記載し、公益財団法人医療研修推進財団において交付する受験写真用台紙に貼り付けた上、同台紙に所定の事項を記入して提出する。なお、写真の提出に当たっては、卒業し、若しくは在籍している学校若しくは言語聴覚士養成所又は公益財団法人医療研修推進財団において、その写真が受験者本人と相違ない旨の確認を受けて下さい。







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