Q5 解離性障害と統合失調症とはなかなか判別するのは難しいと聞きます。何かいい参考書はありませんか?

A5 柴山雅俊さんの『解離性障害―「うしろに誰かいる」の精神病理』(2007年/ちくま新書刊)などコンパクトでわかりやすいかもしれません。以下は柴山雅俊さんの『解離の構造―私の変容と〈むすび〉の治療論―』(2010年/岩崎学術出版社刊)からの抜粋です。

“解離性障害の診断は実際には簡単ではない。従来、解離の病態と報告されてきたのは解離性健忘や解離性遁走、多重人格などであったが、これらの「典型的」な解離性障害の診断は比較的容易である。実際に解離性障害で多いのは、「非典型的」な解離性障害であり、この病態を診断することはなかなか大変なのである。多くの解離症例がたんにパニック障害などの不安障害や気分障害、パーソナリティ障害と診断されているのも事実である。近年では気分障害の範囲が拡大し、多くの解離性障害が気分障害と診断されている可能性がある。治療者によって解離的側面に注目されないならば、精神療法的接近は切り離されがちとなり、もっぱら薬物治療が主となってしまう。危惧されるのは、これらのケースがパーソナリティ障害や難治性の気分障害とされ、回復への道筋が閉ざされてしまう場合である。幻覚などがみられれば安易に統合失調症と誤診されてしまうこともしばしばである。早期に誤って統合失調症の告知を受けてしまえば、その後に訂正されることは少なくなる。 治療者が解離の症候学について疎い場合、解離性障害を統合失調症と誤診する可能性はきわめて高くなるだろう。もちろん一見、解離性障害のように見えても実際には統合失調症であることもある。解離の症候学と統合失調症の症候学の双方に通暁していなければ、ひいてはあらゆる精神疾患の症候学について詳しくなければ、そもそも正しく診断することが困難であるのは当然である。実際には、統合失調症の症候学の教育を受ける機会が比較的多いのに対して、解離の症候学についてはそれを知る機会が少ないのが現状であろう。診断する者は自分がよく知っている疾患を診断する傾向がある。知識や経験に乏しい疾患の診断をすることは概して困難なのである。解離性障害であるか否かについて正しい判断をするためにも、解離の症候学や病態への理解はさらに普及されなくてはならないであろう。このことが本書を書いた第一の目的である。これまでは、医療者の観察者的視点に対して、患者の当事者的視点すなわち主観的体験についてはあまり注目されてこなかったように思う。症状や体験について訊くことが、治療的態度に抵触しないで、むしろ安心感を与えるような症候学と病態構造を私は求めてきた。私はこれらの症候を多くの患者から詳しく教わったが、統合失調症でしばしば指摘されるような、症候を面接の話題に取り上げることによって病像の悪化がみられるということはほとんどなかった。一見悪化することがあるように見えるのは症候について訊くことによるのではなく、患者に対するある種のこちら側の偏った眼差しが影響を及ぼすことによると感じられたこともしばしばであった。解離の病態は精神病とは異なり、主観的体験がわれわれのそれとの連続性を保っていることが多い。それでも患者が語る内容は私からすると驚くようなものだった。”

(「はじめに」より)

 柴山雅俊さんの近著には、『解離の舞台―症状構造と治療』(2017年/金剛出版刊)もある。







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