A6 「大丈夫?」と聞くより「困っていることない?」と聞くことを薦めます。
摂食障害になりやすい人は、自尊心が低く完璧主義なタイプが多いため、心配してかけた言葉がけを違った意味合いで受け取ってしまうことがあります。例えば「なんで食べないの?」とか「痩せているよ」と、こちらが良かれと思ってかけた言葉が逆に症状を悪化させることにつながってしまうこともあるので注意して下さい。
摂食障害の人は自分自身が病気であるという意識がない場合が多いです。他人からみると異常な食事制限や過食でも、本人からすると「普通のダイエット」「ちょっとした食べ過ぎ」という意識しかありません。
注意するポイントのまず第一は、病人扱いをすることは避けて下さい。摂食障害になった理由に例え家族関係からなったとしても、本人はそれを知られたくないし、認めたくないものです。
次に「痩せたよね」「キレイになったね」と褒められることは、摂食障害の人にはこの上ない喜びです。褒められることで、周りから認められたと喜びを感じ、さらに痩せようと頑張ってしまい、悪循環を生む場合もあるということです。痩せていることを自覚させることで、これ以上痩せる必要がないことを伝えようと褒めちぎる人がいますが、余計にダイエット熱を燃え上がらせる結果に繋がりかねません。体型や見た目の話に触れないことが一番です。話題にあげることも避けましょう。
三つには、「せっかく料理を作ったのに」や「ちょっとだけ食べてみない」といった明らかに体重を増やそうとする考えや誘いはしないようにして下さい。言葉の端に「食べようよ」というニュアンスを感じとられると、その人の言葉に警戒するようになります。体重が減っていくのを幸せと感じている摂食障害の人にとって、体重を増やそうとする人のことが敵に見えてきます。善意からの誘いだとしても、勝手に心配して勝手に個人の価値観を押し付けてくると感じてしまうのです。そこで反発して信頼関係にひびが入るくらいならまだいいですが、嫌われたくないために無理をして食べ、陰で食べた物を吐き出そうとする過食嘔吐へ転換する可能性もあります。ただの過食や拒食から過食嘔吐に切り替わると、「食べても吐けばいいんだ」という考えに変わるため、吐きだすという負担が余計に増えて治療がさらに難しくなります。過食嘔吐のきっかけを作らないためにも、食べられないことを受け入れることの方が大切です。
クローズド・クエスチョンからオープン・クエスチョンへ
よく病気の人にかける言葉に「大丈夫?」「食べられている?」と聞くことがあるかと思いますが、この質問の仕方だと返事は「いいえ」か「うん」といった返事しかできません。こういった質問の仕方を「クローズド・クエスチョン」といいます。
ここで「いいえ」と答えてしまうと、質問した人に不安や心配を与えます。心配されたくない、不安を与えたくないという気持ちから「うん、大丈夫」と答える方が殆どでしょう。摂食障害を抱える人は、病気だと思っていない方が多いため、余計に大丈夫じゃないと伝えにくいものです。
本当にその人の不安や困っているかどうかを聞きたい場合は「困っているようだけどどう?」「最近元気ないようだけど不安があるんじゃない?」と、困っていることや不安があることを前提に質問してみて下さい。これが「オープン・クエスチョン」という質問方法です。不安がないかと言われることで、本当に不安があったら「気づかれていたんだ」「この人はちゃんと見てくれている」と安心感を与え、不安が話しやすくなります。もし、不安がなかったとしても「なぜ不安そうに見られたんだろう」「せっかく聞かれたし話しておこうかな」と、自分で不安な点を探し出し、話し出せなかったことを聞き出すきっかけになります。
質問の仕方ひとつで気持ちを追い詰めたり、落ち着かせたりすることができるものです。