A1 肢体不自由の人について理解してもらいたいことはいくつかありますが、その中の一つはオストメイトについてです。
脊椎損傷などによってお腹に排泄のための『ストーマ(人工肛門・人工膀胱)』を造設した人を『オストメイト』といいます。オストメイトの人たちは排泄をする際、多目的トイレなどにあるオストメイト用の便器を使用します。その時、障害のない人が多目的トイレを使用していると、オストメイトの人たちはトイレを使用することができないことを理解してください。
そのほかにも、これは肢体不自由の障害者に限った話ではなく、一般に障害がある人は程度の差はあれ、日常生活において周囲の人に何らかのサポートをお願いする場面が出てきます。特に肢体の不自由な人は、身体や車イスを持ち上げたりおむつを交換したりと、一見して介助が大掛かりになりがちです。そのため、介助してもらうこと自体に負担や引け目を感じたり、逆に介助者の配慮が過度になりすぎて本当にして欲しいことを言えずに生きづらさを感じたりすることもあります。ここで分かっておいて欲しいことは、介助することも介助されることも当たり前ではないということです。介助する側もされる側も常にコミュニケーションを大切にし、互いに感謝を忘れないことが、良い支援につながると言えるでしょう。
またこれはどの障害にも言えることですが、間違った支援や思い込みによる支援はたがいにとって良い結果を生みません。同じ障害でもその程度や状態は十人十色、千差万別です。一方過度な支援もたがいの負担になってしまいます。
「この障害だからこれはできない」、「この障害のある人はこれができる」などと決めつけずに、また本人のできることまで過度にサポートしすぎることなく、本人が本当に望む支援を本人とのコミュニケーションの中から見つけ、適切な支援をすることが大切です。
目が悪くなれば眼鏡をかけるように、不自由さを補う道具や援助があればできることは多いので、本人の障害の状態を見ながら、できることは本人に行ってもらうことで、生活の質(QOL, Quality of Life)の維持と向上にもつながります。
また最近のテレビ番組などに、「みんな一緒に」、「できないことや苦手を克服」、「障害があるのに頑張っている人がいる」など、障害者を美化する内容のものが多く見受けられます。
障害者も一人の人間です。その障害によっては日々の生活だけで精一杯の人や、頑張ることで疲れてしまって日々の生活に支障が出る人もいます。また誰だって日によって頑張れる日があったり、頑張れない日があったりして波があるものです。「障害者だから頑張って当たり前」、「障害者は頑張れない」ではなく、一人の人間として扱ってもらいたいと、ほとんどの障害者は感じています。