社会福祉士

・ 社会福祉士とは?


 社会福祉士とは、いわゆる「ソーシャルワーカー」と呼ばれる社会福祉専門職の国家資格を有した人の名称です。

 法的には「社会福祉士及び介護福祉士法」(第二条第一項)において『社会福祉士』とは第二十八条の登録を受け、「専門的知識及び技術をもって、身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ、助言、指導、福祉サービスを提供する者、又は医師その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者(第四十七条において「福祉サービス関係者等」という)との連絡及び調整その他の援助を行うこと(第七条及び第四十七条の二において「相談援助」という)を業とする者」と定義されています。

仕事としては、身体的・精神的・経済的なハンディキャップのある人から相談を受け、日常生活がスムーズに営めるように支援を行ったり、困っていることを解決できるように支えたりすることが主なものとなります。また、他分野の専門職などと連携して包括的に支援を進めたり、社会資源などを開発したりする役割も求められます。地域を基盤として、さまざまな場所で活躍しています。
 社会福祉士資格取得者が働く職場としては社会福祉施設等が多く、その他社会福祉協議会、医療機関、行政機関、独立型社会福祉士事務所等が代表的なものです。
 1987年の「社会福祉士及び介護福祉士法」制定と同時に誕生し、少子高齢社会がすすみ、さまざまな福祉的課題が注目される現在、社会福祉士への期待はますます高まってきています。
 ※国家資格には「名称独占」と「業務独占」の2種類の資格がありますが、社会福祉士の資格は「名称独占」となります。資格を持っている人だけが「社会福祉士」と名乗れますが、業務に関しては資格を持っていない人も行うことが可能です。医師や看護師などの資格は「業務独占」となります。

・ 社会福祉士になるには


 厚生労働大臣の指定を受けた指定試験機関である指定登録機関財団法人社会福祉振興・試験センターが実施する「社会福祉士国家試験」(年1回実施)に合格しなければなりません。また、この国家試験には、一定の受験資格要件があります。

受験資格

社会福祉士受験に要する一定の資格。

引用元:詳しくはこちら←

  • 4年制大学で指定科目を修めて卒業した方であること
  • 2年制(又は3年制)短期大学等で指定科目を修めて卒業し、指定施設において2年以上(又は1年以上)相談援助の業務に従事した経験を有する方であること
  • 社会福祉士短期養成施設(6月以上)を卒業(修了)した方であること
  • 社会福祉士一般養成施設(1年以上)を卒業(修了)した方であること

詳しくは、(財)社会福祉振興・試験センターのHPを参照。

合格基準

次の2つの条件を満たした者を合格者とする。

  1. 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。
  2. 1を満たした者のうち、以下の18の試験科目群(ただし、(注意2)に該当する者にあっては7科目群)すべてにおいて得点があった者。

試験科目

[1] 人体の構造と機能及び疾病
[2] 心理学理論と心理的支援
[3] 社会理論と社会システム
[4] 現代社会と福祉
[5] 地域福祉の理論と方法
[6] 福祉行財政と福祉計画
[7] 社会保障
[8] 障害者に対する支援と障害者自立支援制度
[9] 低所得者に対する支援と生活保護制度
[10] 保健医療サービス
[11] 権利擁護と成年後見制度
[12] 社会調査の基礎
[13] 相談援助の基盤と専門職
[14] 相談援助の理論と方法
[15] 福祉サービスの組織と経営
[16] 高齢者に対する支援と介護保険制度
[17] 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度
[18] 就労支援サービス、更生保護制度

(注意1) 配点は、1問1点の150点満点である。
(注意2) 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則第五条の二の規定による試験科目の一部免除を受けた受験者にあっては、配点は、1問1点の67点満点である。

試験の方法

  1. 試験は、筆記の方法によって行われる。なお、障害があるも者等については、その申請により点字問題、拡大文字問題、チェック解答用紙等による試験を行うほか、試験時間の延長等必要な配慮が為される。
  2. 出題形式は五肢択一を基本とする多肢選択形式とし、出題は150問、そう試験時間は240分としている。

受験手数料

社会福祉士のみ受験する場合: 15,440円
社会福祉士と精神保健福祉士を同時に受験する場合: 28,140円
(=社会13,980円+精神14,160円)
社会福祉士の共通科目免除により受験する場合: 13,020円

*試験地は24試験地 北海道、青森県、岩手県、宮城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、福岡県、熊本県、鹿児島県、沖縄県

これまでの受験者と合格者

 第31回第30回第29回第28回第27回第26回第25回第24回
受験者数41,63943,93745,84944,76445,18745,57842,84142,882
合格者数12,45613,28811,82811,73512,18112,5408,05811,282
合格率29.9%30.2%25.8%26.2%27.0%27.5%18.8%26.3%

・ 社会福祉士の仕事内容は?


 社会福祉士は困っている方の相談を受けて、その方の困りごとを解決する機関を紹介したり、制度を紹介したりして利用してもらうなど、調整役が主な仕事になります。社会福祉士が実際に解決するというよりも、解決をしてくれる人を紹介するというパターンが多いのです。例えばお金に困って相談に来た人がいるとします。社会福祉士はお金をもらえるような制度を紹介します。母子であれば母子手当の申請をしたり、ケースワーカーを紹介して生活保護の需給に務めたりもします。また地域の高齢者を支援するために地域包括支援センターと協力をしたり、行政と連携を取ったり、地域住民などを巻き込んで高齢者のふれあいセンターを開設させることもあります。

社会福祉士の勤務先

社会福祉士が働いているところで多いのは病院と老人ホームです。
病院では医療ソーシャルワーカーとして、退院する方が退院後も安全な生活を営めるような退院調整を行ったり、老人ホームでは相談員として高齢者やその家族の相談を受けて解決していくような仕事をしています。
地域包括支援センターには社会福祉士の設置義務がありますので、地域包括支援センターで働く社会福祉士も多くいます。その他社会福祉士の勤務先は非常に多岐にわたります。障害者施設や、母子施設、児童施設や学校、行政で働く社会福祉士もいますし、最近では刑務所で働く社会福祉士も増えてきています。福祉を扱うところには社会福祉士は勤務をしていると考えていて良いでしょう。

社会福祉士の資格手当

社会福祉士は勤務先で基本給以外に資格手当をもらっている場合があります。この点は介護福祉士と非常に似ていますが、実際はどれぐらいの金額をもらうことができるのでしょうか。ある施設では介護福祉士の資格手当は月7千円、社会福祉士は1万円としています。

資格を取得するためには

社会福祉士を取得するためには専門の科目を履修しないと、国家試験の受験が出来ません。介護福祉士やケアマネジャーなどは経験で受験をすることが出来ますが、社会福祉士は学校に通う必要があります。
もし介護職が社会福祉士を取得しようと思うとどんなルートがあるでしょうか。実は社会福祉士は働きながらでも取得をすることが出来るのです。まず相談援助の実務経験が必要になります。これは介護職の業務では経験の内に入りません。そのためケアマネジャーをまず取得してケアマネジャーとして経験を積みましょう。4年間の相談援助の経験があれば短期間の通信教育を学べば(9か月)、国家試験を受けることができます。国家試験は合格率が25パーセントで決して低い数字ではないのですが、ケアマネジャーと比べると受験の難易度は高く、介護業界の資格の中では難しい方です。約半数の方が大卒や専門学校を卒業した方々で、残りの半数は通信教育の学校を卒業した方になります。そのため、ケアマネジャーと比べて「きちんと勉強をして」受験している方の数が非常に多いのです。そのうえで合格率25パーセントは低い数値であるといえます。

・ 社会福祉士に向いている人


相手の立場で物事を考えられる人

社会福祉士が相談に応じる相手は、病気や怪我、老化などで介護が必要になった人や、心身に障害を抱える人、生活困窮者、虐待を受けている子ども、DVの被害者などです。そうした人たちは、いうなれば「社会的弱者」であり、境遇こそ個々に異なるものの、誰もがつらく厳しい状況に置かれ、福祉の手助けを切実に必要としています。社会福祉士にとって最も大切なことは、そのような相談者ひとり一人に共感し、同じ目線で物事を考えることです。
たとえ表面上は丁寧に対応しても、心の中にほんの少しでも相手を見下す気持ちがあれば、相談者と良好な関係を築くことは決してできないでしょう。また、「自分ならこうする」という手前勝手な考え方を押し付けても、相談者にとって真に有効なアドバイスとはならないでしょう。社会福祉士には、どんなときでも相手の立場で物事を考えられる、思いやりのある優しい人が向いています。

話を聞ける人

社会福祉士のおもな仕事は相談対応ですので、相手の話を聞くことは基本です。しかし、本当の意味で相手の話を聞くことは、決して簡単なことではありません。相談者がどのようなことを社会福祉士に求めているのか、きちんと正確に汲み取るためには、ただ話を聞くだけでなく、口調や仕草、表情などにも気を配り、注意深く相手の考えを洞察することが必要です。そのような「傾聴」の姿勢を長時間保つには、相応の努力や訓練、あるいは資質が必要になります。とくに意識していなくても、日常生活のなかで、人から悩みや相談ごとを持ちかけられやすく、アドバイスするのが得意な人は、生まれ持って社会福祉士の適性があるかもしれません。

チーム・プレーが得意な人

社会福祉士の業務は、相談者との一対一の関係だけで完結するものではありません。社会福祉士は、相談者のニーズを聴取し、最もふさわしい福祉サービスを紹介することが仕事であり、相談者と各福祉サービスとを結びつける役割を担っています。このため、自身が所属する以外の、さまざまな福祉サービスを提供している施設と密に連絡を取り合い、連携しながら働くことが必要です。個人プレーに走るのではなく、周りと協力しながら物事を進めることのできる、チーム・プレーが得意な人は、社会福祉士に向いているでしょう。

コミュニケーション・スキル

社会福祉士は、老人から子どもまで、さまざまな人を相手に、難しい相談に乗らなければなりません。
年齢も事情も異なる相手に心を開いてもらって、必要な情報を聞き出すためには、また、複雑な福祉制度などをわかりやすく伝えるためには、非常に高度なコミュニケーション・スキルが求められます。コミュニケーション・スキルは一朝一夕で向上するものではありませんので、日ごろからの意識的な鍛錬が必要になるでしょう。

忍耐力

相談者のなかには、つらい状況にあるがゆえに、泣いたり怒ったりと、過度に感情的になってしまう人や、言っていることが支離滅裂になってしまう人もいます。また、こちらの話に耳を貸さず、一方的に自分の言いたいことだけを喋り続ける人もいますし、反対に、何をたずねてもろくに応えてくれない人もいます。社会福祉士は、どんなときでも、相談者の心情に配慮し、広い心をもって、粘り強く接することが求められますので、相応の忍耐力も必要になるでしょう。

・ 社会福祉士に向いていない人


完璧主義の人

 社会福祉士の元を訪ねる相談者は、ニーズや事情も違えば、性格も考え方もさまざまです。相談者のためになると確信して紹介した福祉サービスであっても、必ずしもよい結果を生むとは限りません。相談対応ひとつ取ってみても、場を和ませるために言ったことが悪く捉えられたり、相手のためを思って言ったことが、逆に相手の反感を買ったりすることもあります。人と人とのコミュニケーションに絶対の正解がない以上、社会福祉士の仕事も、どれだけ経験を積んだとしても、失敗することはあり得ます。そのため、社会福祉士は、過度にミスを嫌う性格の人には不向きの職業だと言えそうです。

軽薄な印象の人

 社会福祉士の手助けを必要とする人の多くは、自分一人では手に余る深刻な悩みを抱えています。ときには、個々の問題を解決するために、社会福祉士はかなり各相談者のプライベートに深く立ち入ることもあります。言葉遣いや表情、仕草、身だしなみなど、総合的な誠実さが感じられる人でないと、そうした内面に踏み込むことを許されるほど、相談者からの信用を得ることは困難です。このため、たとえ悪気はなくとも、どことなく軽薄な印象を与える人や、あるいは職務上知った秘密を漏らしてしまいそうな人など、態度が軽かったり、口が軽い人は、社会福祉士に向いているとはいえそうにもありません。

・ 社会福祉士の活躍の場


【介護施設】

介護施設では、入所者の生活に関わる相談に対応したり、家族との連絡調整などを行ったりします。また、入所や施設生活に関する相談だけでなく、施設介護から在宅介護へ移行するための連絡や調整、アドバイスを行うこともあります。

【障害者施設】

障害者支援施設では、社会福祉士は「生活指導員」、「生活相談員」、「支援相談員」などの名称で呼ばれることもあります。主に、利用者の相談援助や家族との連絡調整、施設の入退所手続きといった業務を担います。施設利用者の自律支援や退所後の生活援助を行うこともあります。

【児童福祉施設】

社会福祉士は児童福祉の分野で、「ファミリーソーシャルワーカー」、「児童指導員」として活躍することができます。主に18歳未満の子どもが支援の対象です。児童福祉施設では、子育てに関する悩みや、非行や虐待などの問題と向き合います。

 児童福祉施設のほかに、児童養護施設や母子生活支援施設など、児童福祉に関する様々な場所で活躍することが可能です。また、教育機関でスクールソーシャルワーカーとして児童や家族の相談に乗ることもあります。

【医療現場】

社会福祉士の活躍の場として、病院や保健所などの医療機関が挙げられます。医療現場では、「医療ソーシャルワーカー」として、患者さんやその家族が抱く問題に対し、相談に乗ったり問題を解決したりします。医療機関では、医療保険や各種手続きなどの情報提供や転院や退院の援助などを行うこともあります。

【地域の福祉サービスの場】

社会福祉士は、都道府県や市区町村といった公的機関でも活躍することができます。県庁や市役所、地域包括支援センターでは、地域住民の福祉に関する相談窓口としての職務を担います。市民の悩みや相談に耳を傾け、各機関と連携し、より役立つ福祉サービスが提供できるように働きかけることが役割です。






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