A2 解離性障害には有効な薬はありません。統合失調症と混同されやすい幻覚についても、抗精神病薬もあまり有効とはいえないようです。むしろ解離性障害の症状を悪化させているような併存症に対する薬が処方されます。たとえば、うつ症状に対する抗うつ剤や、PTSDを含む神経症症状に対する精神安定薬などです。
隔離性障害の治療は精神的ケアが主な治療法となります。
治療の基本
解離性障害の治療の基本は、安心できる治療環境を整えること、家族など周囲の人の理解、主治医との信頼関係です。解離性障害の主な原因は、心的なストレスによりほかの人に自分を表現することができないことです。つまり解離されている心の部分は、安心できる関係性でしか表現できません。
解離性障害の症状の多くは、ある程度の時間を経れば自然に解消されるか、別の症状へ移行するのが一般的です。早い段階で、催眠や暗示によって、解離性の健忘や、失立、失声、麻痺等を解消することは効果が期待できないだけでなく、症状を悪化させることもあります。安全な環境や自己表現の機会を提供しながら、それらの症状の自然経過を見守るという態度も重要です。
心理教育・情報提供について
治療者が解離性障害一般について十分な知識をもち、患者や家族に積極的に情報を提供することは重要です。大半の解離性障害の患者は、まずその病態を信用してもらえない、演技と思われてしまうという問題を抱え、そのことが解離性の症状をさらに悪化させることもあります。また本人が自分に起きていることを理解していない場合も少なくありません。本人やその家族がまずこの障害を理解し、症状を受け入れることが環境調整の第一歩ともいえます。