A7 勿論、それだけが理由ではありませんが、そのようなケースが目立つのも事実です。
身近な人との関わりがきっかけで、摂食障害になる場合があります。母親や父親との関係、両親の不和、恋人に代償として求める過重な愛情などからも考えられますが、例証が多いのは、母親にかまってほしいという願望から摂食障害になってしまうケースです。確かに母親は摂食障害の原因になりえますが、それ以上に回復のためのサポーターとして重要な存在であることも忘れないで下さい。
摂食障害になる理由の一つに、幼少期に思うような愛情を得られなかったことによってなるケースがあります。「関心を自分に集めたい」という思いから、拒食や過食をしてしまうようです。これが原因で摂食障害になった人の傾向は、小さい頃から「親に負担をかけないようにしよう」という、俗に言われる「いい子」に振る舞うことに慣れていることが報告されています。「母親に好きだから嫌われたくない」という気持ちがきっかけとなり、「ありのままの自分では愛されない」と思い込んでしまうようです。だんだん「関心を持ってもらいたい」「甘えたい」などの願望が無意識に溜まり摂食障害に陥ります。痩せたり太ったりして母親の注意を引こうと自分を追い詰めてしまいます。
他にも「完璧でなければ愛されない」と思い込んだ人が、挫折をきっかけに発症することもあります。葛藤の多い思春期に本当の自分と「いい子」の自分の差が大きくなっていき、耐えきれなくなった時に発症します。高すぎる理想とのギャップが原因で摂食障害を発症する90%は女性です。体形を気にされる人が多いのも、このことと関係しているようです。
一方、関心を引きたいという理由以外に、「大人(母親のよう)になりたくない」といった恐怖心から摂食障害になる場合もあります。昔から両親や他の大人との関係がよくなかったり、苦労している姿を間近で見てきたりしていると、「母親のようになるのは嫌だ」「苦労するのは嫌だ」と否定する気持ちがめばえるようです。カラダが成長して大人に近づくにつれ、女性らしい丸みをなくすためにダイエットをしたり、大きくなりたくないという思いから食事を捨てたりするようになります。成長したくないと嘔吐を繰り返す症状を発症する場合もあるようです。
夫婦仲が良くない場合、両親に仲良くしてもらいたい思いから、食事を摂らなくなったり食べすぎたりする人もいます。自分の摂食障害をきっかけに両親が協力するのではといった期待から拒食が加速することもあります。ギスギスした両親の様子にストレスを感じ、ストレス発散のために過食衝動が始まるということもあります。
それに対して、例え、摂食障害を改善するために両親が協力し合うようになったとしても、「不安になる=拒食」「ストレス発散=過食」といった行動パターンが染みついてしまうと、治療対策は異なってきます。夫婦の不仲は、あくまでもきっかけのひとつになる可能性が高いというだけで、「夫婦の仲がよくなれば治る」といった単純な問題に事態はなっていません。ですから夫婦、お互いを責める必要も、形だけ仲良くする必要もありません。解決策は他にあります。
子供が摂食障害になったからといって、すべて母親の責任という訳ではありません。生まれ持った性格・身体・環境など、色んな要素が複雑に絡み組み合わさって、摂食障害につながります。自分を責め、精神的なプレッシャーを感じ、焦る必要はありません。独りで悩むことなく、本人と話し合って、周りや専門家の助けを借りて治療のサポートをしてあげて下さい。