目次
・発達障害[総論]
発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児のうちから症状が現れ、通常の育児ではうまくいかないことがあります。成長するにつれ、自分自身のもつ不得手な部分に気づき、生きにくさを感じることがあるかもしれません。
発達障害とは、発達に偏りが診られる古典的な「自閉症」を中心として、それに類する障害のことをいいます。発達障害という大枠の中で、障害の種類は細かく分類されており、障害の程度が軽いものも発達障害の中に含まれます。
発達障害という概念は、実はまだきちんと統一されておらず、医学用語でもありません。2004年に施行された「発達障害者支援法」という法律で初めて、法律上の用語として取り上げられました。同法の第一章第二条において、発達障害は「自閉症、アスペルガー症候群やその他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥・多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」と定義されています。つまり、発達障害とは、発達に問題がある障害の総称ということです。
近年、発達障害と診断される子供の数が増えている背景のひとつとして、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などを含む概念である「自閉症スペクトラム障害」という考え方が2013年に登場し、発達障害の範囲が拡大したことが挙げられます。
1970年代ごろは、自閉症は人口1万人あたり約4~5名程度だといわれていました。現在、自閉症スペクトラム障害は、児童100人あたり約1人の障害だと言われています。
今、発達障害は子供のための教育行政や福祉行政における大きな問題として注目されていますが、実は発達障害の問題は幅広いところに関わっており、不登校の子供や、社会からドロップアウトしてしまう子供たちの中に、発達障害の方が沢山います。発達障害は、子供の成長や将来にとって、もっとも基本にある問題といえます。 いずれにしても発達障害はその特性を本人や家族・周囲の人がよく理解し、その人にあったやり方で日常的な暮らしや学校や職場での過ごし方を工夫することが出来れば、持っている本来の力がしっかり生かされるようになります。
・発達障害(ADHD/ASD/LD)の人の仕事探し
・自分に合った仕事を見つける
発達障害の人は仕事をする上で困り事や、戸惑い事が普通の人よりも多い傾向にあります。しかし、昔に比べて発達障害という障害は随分受け入れられるようになってきました。自分の得意な分野の仕事に就いたり、苦手な部分を伝えて自分でも対策を取ったり、周りにフォローしてもらう事で意外と働きやすくなります。発達障害と一口に言っても、症状は人によって異なる障害です。自分に合った職場環境や職種を知ることは、仕事を続けていく上でとても大切です。また、自分に合った仕事に就くことで本来の能力を発揮できることにも繋がります。以下、参考にしてみてください。
・発達障害の3分類
発達障害は大きく分けて3つに分類されています。それぞれに特性が違っているので、発達障害に向いている仕事と言っても人によって異なる事は覚えておかなくてはいけません。
- 発達障害は
—-- ASD(自閉症スペクトラム)
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- LD(学習障害)
以上の3つに分類されています。
ASDは、昔は「自閉症」、「広汎性発達障害」「不特定型広汎性発達障害」、「アスペルガー症候群」とそれぞれの名前で呼ばれていましたが現在はASDという名前で括られています。
以下にあげる職場条件はあくまでも一例です。
人によって症状の違いもありますが、発達障害の人全般に向いているのはマニュアルがしっかりとある仕事だと言われています。ルールや指示がきっちりとしている方が働きやすいといえます。例えば、「〇〇をしたら次に〇〇をする」、「〇〇時までにこの仕事をやり終えて、終わったら〇〇さんに報告する」と具体的な手順、時間、場所をしっかりと伝えて貰えると仕事がやりやすくなります。発達障害を周囲に知ってもらい、仕事をする時にはこの事を会社や上司、同僚に伝えていると仕事がスムーズにできます。また、会社に配慮してもらうだけではなく、メモの取り方などを自分でも工夫する事も大切です。発達障害の方が転職活動する際には、実際に発達障害の方を採用した実績のある企業の求人から探してみるのがおすすめです。
・ADHDの人の特性と仕事の探し方
【ADHDの人の特性】
ADHDの人の特性は、
- 注意不足が多い
- 落ち着きがない
- じっくりと考えずに行動に移してしまう
ことです。
【ADHDの人の苦手なこと】
仕事をする上ではミスが多かったり、遅刻欠勤などに気をつけなければなりません。この特性上、一人で完結させなければいけない仕事(電話対応など)や、集中力が続きにくいので同じことをコツコツと続けていく事は苦手とされています。
【ADHDの人に向いている職業】
向いている仕事は、企画職や営業職、エンジニアやプログラマー、及びクリエイティブ系の仕事などが挙げられます。毎日同じ事をするのではなく、その日その日で違う事をできる職業だと集中力が途切れにくいといえます。
・ASDの人の特性と仕事の探し方
【ASDの人の特性】
ASDの人の特性は、
- 他人とコミュニケーションを取るのが苦手
- 社会的な通念や空気感、表情から読み取ることが苦手
- こだわりが強い
ことだと言われています。
【ASDの人の苦手なこと】
大人数で行動する事を苦手で、冗談が通じない、空気が読めないと言われたりすることがあります。どのような仕事にも人間関係はありますが、他人と接する事が多くマニュアル通りにいかない仕事は向いていません。
【ASDの人に向いている職業は?】
ASDの方の場合、向いている職業は「他人と多くコミュニケーションを取る必要のない仕事」だといえます。また、ASDの人の特性として、1つの物事に抜群の集中力を発揮できるという特性もあります。このような特性を生かした仕事に就くことがおすすめです。例を挙げると、プログラマーや研究職、またデスクワークに限らず、同じことをコツコツと続ける工場のライン作業も向いています。
・LDの人の特性と仕事の探し方
【LDの人の特性】
LDの人の特性は、
- 学習に関する特定の能力が欠けていて実行が困難であるという事です。
【LDの人の苦手なことと向いている職業】
LDの人は行動の特性というよりも、どの能力で苦手と感じるかで出来ないことが異なります。
「失読症」ならば文字を読むことができないといったように、読み、書き、計算など学習する上で必要な特定の能力で欠けています。知的能力には問題がありません。
そのため、視覚で物事を把握できるデザイナーやカメラマンなどが向いていると言われています。俳優として活躍されているトム・クルーズさんもLDの「失読症」です。台本が読めないので第三者に台本を読んでもらい、聞いて覚えるという手段で覚えているそうです。このように、LDの人は人によって苦手とする分野が違うため、自分で工夫することが大切になります。
・発達障害の人の仕事探しポイント
発達障害の人は、特性によってできる仕事が限られたり、働きづらさを感じることがあります。では、発達障害のある人が仕事を探す時には、どのようなポイントを意識したらよいのでしょうか。
〇障害のある人の雇用実績があるかを確認する
- 企業のホームページや掲載している求人票で情報を探す
- 人材紹介サービスなどの民間のサービスやハローワークで聞いてみる
- 会社説明会や選考時に直接企業に聞いてみる
などの方法を通して、障害のある人の雇用実績を確認してみるといいでしょう。障害者の雇用人数が多ければ、バリアフリーなど受け入れ体制が整っていると考えられます。また、平均勤続年数が長ければ、障害者に対する理解や、悩みなどを話しやすい環境が整えられている可能性があります。
〇働き方改革に取り組んでいるかを確認する
発達障害の人は障害によってストレスを感じやすかったり、体調管理が難しいケースがあります。また、定期的に医師の診察や治療が必要な場合もあります。そのため、体調面などを考慮して、時短勤務やフレックスタイムなど柔軟な働き方に理解がある企業を選ぶのがおすすめです。また、テレワークによる在宅勤務は、障害者にとって通勤や移動による身体的、精神的な負担が軽減されるメリットがあるため、障害者本人の希望に合わせて雇用形態を選べる企業がおすすめです。時間や場所を柔軟に調整できることで、障害の特性に対応しやすくなり、働く選択肢が増えます。また、就業機会や能力を発揮する機会が増えることにもつながります。
・発達障害の人には難しいかもしれない職場環境や職種
発達障害の人にはニュアンスを汲み取らなければならない場面があったり、他人と多くのコミュニケーションを取らなければならなかったり、自分で全ての采配をしなければならない仕事や環境は向いていないといわれています。
例えば、ASDの人は1つの物事にコツコツと集中して取り組むことができるため、職人も向いていると言われていますが、フリーランスや自営業はおすすめできません。
これはADHDの人にも当てはまります。なぜなら、自分で段取りや計画、経理を全てこなさなくてはならない自営業やフリーランスは、特性によって苦手だとされる部分をこなさなくてはならないからです。
これは雇用されている場合も同じで、アドリブやニュアンスで行わなければならない事が多いほど、向いていない仕事や職場環境だといえます。もちろん周囲の人のサポートがある場合や、苦手な部分を任せられる人がいる場合はその限りではありません。
・最後に……
向いている仕事ではない分野でも、「どうしてもやってみたい」と、やりたい職業があるかもしれません。そういう時には、その職種に就いている、似たような障害のある人の話を聞いて参考にしたり、自分のこれまでの経験を棚卸しすることで、自分の得意不得意がわかるはずです。最終的には、応募する前にしっかりと自分の苦手なところを把握して会社に伝える、自分でどうしたらできるのかを工夫する事が大切です。周囲の人もできること、できないことをしっかり伝えて貰えると対策が取りやすくなります。
一般職の他に障害者雇用の仕事を利用することも一つの手段です。発達障害の人は自分に合った仕事が分からず、なかなか一つの職場で働き続けることが難しい人が多いという現状があります。自分だけではよく自分の特性が把握できなかったり、発達障害に理解のある職場を探したいと思った時には各市町村の発達障害支援センターやハローワーク、転職エージェントを利用するのもひとつです。
・Q&A(クリックすると、記事内容が見れます)
Q1 発達障害にはどのような障害が分類されてあるのでしょうか?
Q2 発達障害の治療法を教えて下さい。
Q3 自閉症スペクトラム障害というのが、いま一つ解りにくいのですが?
Q4 療育とはあまり聞かない言葉ですが?
Q5 大人のADHDについて教えて下さい。
Q6 大人の学習障害(LD)について教えて下さい。
Q7 発達障害者のコロナストレスの影響について教えて下さい。