・更年期障害とは?
更年期とは、女性では卵巣機能の低下が起こる閉経前後10年間(45歳から55歳)の時期をいいます。男性では50〜60代で発症しやすいようです(30代半ばから徐々に)。「更年期障害」は、このときに認められる自律神経症状を主にした多様な症状の総称だといえます。
・更年期に抑うつ症状が出やすい2つの理由
① 女性ホルモンが減ってしまう
女性のからだでは、卵巣でエストロゲンという女性ホルモンが作られています。エストロゲンはリラックス効果・幸福感の源であるセロトニンという幸せホルモンの分泌を促進します。更年期にはエストロゲンが閉経とともに少なくなってしまうことで、このセロトニンの分泌も減ってしまい、結果として気分が落ち込むといった抑うつ症状が出てきます。
② 心理的・社会的なストレスによる影響
更年期は、人生の中で変化が重なることが多い時期でもあります。こどもが成人し、子育てがひと段落したり、会社勤めを続けられている方は重要なポストを任されたりする時期にあたります。またさきほども出てきたエストロゲンの分泌低下によって、美容面でも肌の調子が悪くなったり、スタイル維持が難しくなったりとストレスのもとになることも多いでしょう。このようなからだの中での変化、またそれ以外にも更年期にうつになりやすい原因があるとされています。
・更年期障害の症状について
更年期障害の症状としては以下のような不定愁訴(ふていしゅうそ:明確な原因が特定できない体の不調や不快感を訴える状態)をされる方が多いです。
【症状例】
- 顔がほてる
- めまい
- 動悸やふらつき
- 冷や汗や寝汗
- 上半身の発汗
・更年期障害と「うつ病」
更年期障害の一部として抑うつ症状が出ることもあれば、更年期の時期にうつ病を発症することもあります。
この2つは治療が異なってくるため、正しい診断が求められます。
【更年期の抑うつ症状】
精神的な症状
- 気分の落ち込み
- イライラ
- 情緒不安定
身体的な症状
- ホットフラッシュ(ほてり・のぼせ)
- めまい
- 頭痛
- 全身の疲労感
- 動悸
【うつ病の症状】
精神的な症状
- 1日中気分が落ち込んでいる
- 楽しめない
- ネガティブに考えてしまう
- 無関心になる
身体的な症状
- 寝付きが悪い
- 深く眠れない
- 体重が減る
「更年期障害」の治療は、性ホルモンの補充療法が中心となります。女性ではエストロゲン補充薬、男性ではテストステロン補充薬を使うことが多いです。その他には、向精神薬(抗不安薬・抗うつ薬)を利用したり、漢方薬を使用することもあります。また薬以外の治療法としては、運動によるストレスの発散やアロマテラピーによるリラックス効果など、気分転換することも効果が認められています。
「更年期障害」の診断治療は、女性は婦人科で、男性は泌尿器科、内科、メンズヘルス外来*で行っています。
*メンズヘルス外来は、男性の更年期うつで受診する診療科のひとつです。男性の婦人科とも呼ばれていて「性的な悩み」「身体の不調」「不安」など、さまざまな症状が重なり「どの診療科を選べばいいか分からない」ときなど、多くの疾患から自分にあてはまる疾患を診断してくれます。
しかし、この年代の、自律神経症状のような不定愁訴は、女性ホルモンの低下による「更年期障害」だけでなく、この年代の様々なライフイベントの変化などによって引き起こされる「うつ病」の可能性もあります。「うつ病」の症状は主に精神的なもが多く、身体的な症状は起きにくいとされています。しかし、頭痛やめまい、動悸など自律神経症状を伴うこともあります。「うつ病」になると、家事の効率が悪くなったり、イライラしたり、強い不安症状や睡眠にかかわる症状を発症したりします。このような症状は、「更年期障害」でも起こる可能性はありますが、「更年期障害」の治療でなかなか良くならない場合は、「うつ病」の可能性も考えてみることをお薦めします。
うつ病では、主に精神的な症状が現われます。そのための治療法としては、抗うつ薬や抗不安薬を使うことが多いです。また薬以外にも、休養をしっかりとることは、日々のストレスを軽くするため、うつ病の治療に役立ちます。ストレスを減らすコツとしては「ストレスを感じる場所から離れること」「しっかりと身体と心を休めること」です。休養と併せて治療薬を正しく使うことで、うつ病の症状は良くなります。
最後に……
更年期にはどうしてもマイナスなイメージがついており、なるべくなら避けて通りたいと考える方もいると思います。しかし、過度に意識することで逆にストレスになってしまうこともあります。予防しようとするよりむしろうまく付き合って行くことを目標にしましょう。自分なりの気分転換の方法や相談できるパートナーや家族、友人の存在も助けになります。
更年期は女性なら誰もが経験する時期です。正しい知識を持って、身構えすぎずにいることをお薦めします。もし症状がひどい場合や、更年期障害なのかうつ病なのか迷ったり、ほかに心身に関わることで気になることがある場合は、心療内科、精神科や婦人科へ受診を検討しましょう。