目次
児童発達支援管理責任者(児発管)になるには、実務経験の要件を満たすことに加えて、研修を修了していなくてはなりません。実務経験の要件については、非常に複雑であることで知られています。平成31年4月から実務経験の要件が変更され、より複雑化したと感じる人が多いようです。また研修については基礎研修と実践研修の2種類が求められますが、基礎研修を修了した後、実践研修に入る前に「OJT」という2年以上の実務訓練期間を設けなくてはなりません。さらに児童発達支援管理責任者(児発管)の資格を取得した後にも、5年ごとの更新研修があり、受けなくてはなりません。
児童発達支援管理責任者(児発管)の資格を取得するための「実務経験の要件」は、さまざまなパターンがあって複雑ですが、いずれか1種類の実務経験があれば研修に向けて準備することができます。自分が対応可能な方法(パターン)を選びましょう。それぞれについて詳しく解説します。また最後にある図解を参考にして下さい。
指定された施設で「5年以上の相談支援業務の経験」を積むパターンです。相談支援業務とは、利用者が自立できるよう、助言や指導を行う仕事です。
ここで指定された施設とは、以下のいずれかであると定められています。
・相談支援事業
(地域生活支援事業/障害児相談支援事業/身体障害者相談支援事業/知的障害者相談支援事業)
・相談施設
(児童相談所/児童家庭支援センター/身体障害者更生相談所/精神障害者社会復帰施設/知的障害者更生相談所/福祉に関する事務所/発達障害者支援センター)
・福祉施設
(障害児入所施設/乳児院/児童養護施設/児童心理治療施設/児童自立支援施設/障害者支援施設/精神保健福祉センター/老人福祉施設*/救護施設*/更生施設*/介護老人保健施設*/介護医療院*/地域包括支援センター*)*障害者や子どもを対象とする相談支援業務に従事した期間に含まれない施設
(障害者職業センター/障害者就業・生活支援センター)
・教育機関
(幼稚園/小学校/中学校/義務教育学校/高等学校/中等教育学校/特別支援学校/高等専門学校)
・医療機関
(病院/診療所)
・介護老人保健施設
・介護医療院
・地域包括センター
・要件2「8年以上の直接支援業務の経験」
相談支援業務ではなく、以下の施設における「8年以上の直接支援業務の経験」でも児童発達支援管理責任者(児発管)への道へ進むことができます。
・福祉事業
(障害児通所支援事業/児童自立生活援助事業/放課後児童健全育成事業/子育て短期支援事業/乳児家庭全戸訪問事業/養育支援訪問事業/地域子育て支援拠点事業/一時預かり事業/小規模住居型児童養育事業/家庭的保育事業/小規模保育事業/居宅訪問型保育事業/事業所内保育事業/病児保育事業/子育て援助活動支援事業/障害福祉サービス事業、/老人居宅介護等事業*)
(障害児入所施設/助産施設/乳児院/母子生活支援施設/保育所/幼保連携型認定こども園/児童厚生施設/児童家庭支援センター/児童養護施設/児童心理治療施設/児童自立支援施設/障害者支援施設/老人福祉施設*/介護老人保健施設*/介護医療院*/療養病床関係病室*)
(特例子会社*/助成金受給事業所*)
・教育機関
(幼稚園/小学校/中学校/義務教育学校/高等学校/中等教育学校/特別支援学校/高等専門学校)
・医療機関
(病院/診療所)
*障害者や子どもを対象とする直接支援業務に従事した期間に含まれない施設
直接支援業務とは、利用者の食事、入浴、排泄などの介護や、リハビリ、療育など、利用者が日常生活をおくる、あるいは就業するために必要な教育や訓練が含まれます。
なお、これらで直接支援業務の経験を積んでいる人のうち、以下の資格があれば、8年ではなく5年以上の経験で良いと定められています。
・保育士 ・児童指導員任用資格 ・社会福祉主事任用資格 ・精神障害者社会復帰施設指導員任用資格 ・介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)以上 |
いずれの場合でも、「障害者や子どもを対象とする直接支援業務の期間」が3年以上必要になります。
上記で紹介したさまざまな施設のうち「障害者や子どもを対象とする施設」として認められていないもがあるので注意してください。それは以下の通りです。
・老人居宅介護等事業 ・老人福祉施設 ・介護老人保健施設 ・介護医療院 ・療養病床関係病室 ・障害者雇用施設の特例子会社および助成金受給事業所 |
指定の国家資格等が必要な業務への5年以上の従事実績に加えて、障害者や子どもを対象とする相談支援業務もしくは直接支援業務への3年以上の実務経験があれば、児童発達支援管理責任者(児発管)になるための実務経験の要件を満たすことができます。
指定の国家資格等とは、以下のいずれかです。
・医師
・歯科医師
・薬剤師
・保健師
・助産師
・看護師
・准看護師
・歯科衛生士
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・視能訓練士
・義肢装具士
・あん摩マッサージ指圧師
・はり師
・きゅう師
・柔道整復師
・管理栄養士
・栄養士
・社会福祉士
・介護福祉士
・精神保健福祉士
これらの資格職で積んだ5年以上の実務経験期間と、障害者や子どもを対象とする相談支援業務もしくは直接支援業務の期間3年は、重複していてもいいとされています。
2019年から、児童発達支援管理責任者(児発管)の研修制度が変更されました。研修の内容について、解説します。
基礎研修は「相談支援従事者初心者研修」と「サービス管理責任者等研修」の2つに分けられます。先に紹介した、いずれかの実務経験を満たす2年前からの受講が可能となっています。
「相談支援従事者初任者研修の講義の一部」は、11.5時間の講義です。相談支援従事者の役割や障害者支援と児童福祉に関連する法的な部分、さらに相談支援に関連するマネジメント手法についてなどの講義があります。
次に受講する「児童発達支援管理責任者基礎研修の講義と演習」は、15時間にわたる演習を含めた講義研修です。児童支援についての概念や、個別支援計画書の作成方法などが主軸になります。講義だけではなく、サービス提供に関連する演習が行われます。
上記を総合した合計26時間の研修が、基礎研修となります。
OJTは、「On the Job Training」の略です。いわゆる現任訓練のことで、実務を経験しながら現場で研修の内容を実践し、学んでいくプロセスに該当します。基礎研修終了後の相談支援業務、もしくは直接支援業務への通算2年以上の従事が義務づけられており、これを完了すると実践研修へと進むことができます。
実践研修とは合計14.5時間に及ぶ「児童発達支援管理責任者実践研修の講義と演習」のことで、講義部分と、演習部分に分かれています。分かれているといっても単純な講義部分は1時間しかなく、残りはすべて、演習を交えた講義形式で進められていきます。
最初の講義は、障害福祉の動向に関連するものです。年々変化する現場の動向をつかむものです。あとはサービス提供、人材育成、さらに地域連携に関連する講義と演習があり、すべての研修を終えると、晴れて児童発達支援管理責任者資格の取得となります。
2019年以降は資格を持っている人も、5年ごとに更新研修の受講が必要になりました。更新研修を受講するには、現に児発管として働いているか、過去5年間に2年以上児発管として働いた経験が必要です。「児童発達支援管理責任者実践研修の講義と演習」として、13時間の講義と演習が行われます。
各種研修の申込方法については、勤務する事業所を通じて行うのが一般的ですが、個人の申込も可能です。自治体で問い合わせ窓口を持っていることが多いので、各自で調べてみることをおすすめします。
研修申込の完了後は、研修実施先で選考が開始されます。限られた定員のなかから受講者として選抜されるためには、事業所からの受講推薦が必要になることも多いため、慎重な準備が必要になります。
児童発達支援管理責任者(児発管)資格を得るために試験などはないですが、研修への遅刻、進行妨害などがあると、受講許可の取り消しや修了不認定になる恐れもありますので注意して下さい。
児童発達支援管理責任者(児発管)とは、障害を持つ子どもが福祉サービスを利用する際に必要な個別支援計画を作成し、提供サービスを管理する専門職です。
児発管は障害児支援施設へ1名以上配置することが義務付けられています。指導員との兼任はできませんが、管理者との兼任は可能です。個別支援計画は子どもや保護者の意向、子どもの適性、障がいの特性などを踏まえて作成されます。サービスの提供が始まったあとも経過をモニタリングし、半年に一度は計画の評価と修正をおこないます。