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治療のために用いられる薬が、ときとして害をもたらすことをご存じでしょうか? 薬害と薬の副作用は近しい意味であるものの、詳しくは異なる意味合いを持っています。以下、基礎的な知識として「薬害」について説明します。
・薬害と副作用の違いから
《薬害》とは、医薬品などによる健康被害のことであり、医薬品の不適切な使用などによって社会問題となるまで被害の規模が広がったものをいいます。
では、薬害と副作用に違いについて言うと、治療に必要な薬の作用のことを「主作用」といい、それ以外の作用のこと、または害のある作用のことを「副作用」といいます。薬害は薬によって健康被害が広がったものであり、《副作用》は薬の害ある作用そのものを指しています。
・代表的な薬害
代表的な薬害としては、薬害エイズ事件、サリドマイド事件、キノホルム薬害事件、MMR薬害事件などがあります。
- サリドマイド事件…
鎮痛・催眠剤のサリドマイドを妊娠中に服用した母親から、奇形を持った子供が生まれた。 - スモン=キノホルム薬害事件…
キノホルム剤を服用した人に痛み・全身のしびれ・視力障害などの被害が発生。 - 薬害エイズ事件…
血友病患者に対して、加熱処理をせずにウイルスの不活性化をおこなわなかった血液凝固因子製剤を投与したことで、エイズに感染。 - MMR薬害事件…
はしか・おたふくかぜ・風疹を一回の接種で予防できるとして1989年から1993年までにおこなわれたMMRワクチンによって、無菌性髄膜炎の被害が発生。 - クロロキン事件…
抗マラリア薬として開発されたクロロキンにより、クロロキン網膜症が多発。
・薬害根絶デーとは?
薬害被害者や支援団体などでつくられている全国薬害被害団体連絡協議会によって、薬害根絶に向けた行動を起こす薬害根絶デーが、毎年8月24日前後で行われています。1999年8月24日に、薬害根絶の誓いの碑が厚生省正面玄関前に建立・設置され、誓いの碑の前では、薬害根絶の誓いが薬害根絶デーに行われています。また、厚労省や文科省に対して、薬害根絶に向けた要望がおこなわれたりしています。
・医薬品副作用被害救済制度
医薬品副作用被害救済制度は、薬害によってつくられた制度であり、キノホルム薬害事件がきっかけとなっています。この医薬品副作用被害救済制度は、医薬品の副作用によって患者が死亡したり入院した際に、独立行政法人医薬品医療機器総合機構が給付をおこなうというものです。
・副作用かもしれないと思ったら
薬を服用して、副作用の症状があらわれたかもしれない…と思えば、すぐに医師または薬剤師に相談しましょう。これは、診察後に処方される医療用医薬品に限った話ではなく、ドラッグストアや通販サイトなどで購入できる市販薬についても同じことが言えます。
市販薬は通販サイトでも購入できるため、とても手軽なものですが、市販薬だから安心…と思わずに、市販薬であっても服用によって害ある副作用があらわれる場合もある…ということを頭に入れておきましょう。また、長期連用によっても副作用があらわれやすくなりますので、添付文書には必ず目を通した上で用法・用量を守って服用してください。
・最後に……
以上の説明を簡単にまとめると……
- 薬害とは、医薬品等による健康被害が社会問題となるまで規模が広がったものである
- 治療に必要な薬の作用のことを主作用といい、それ以外の作用が副作用である
- 代表的な薬害には、薬害エイズ事件、サリドマイド事件、キノホルム薬害事件などがある
- 副作用かもしれないと思ったら、すぐに医師または薬剤師に相談すること
以上の点が重要なポイントです。