新設・就労選択支援について

この制度の一番の特徴は、就労を希望する障害者本人と支援者が「一緒に」就労アセスメントを行うことにあります。
これまでは、例えばA型の場合は利用する事業所が決まってからその事業所がアセスメントを行うため、他のサービス利用や一般就労も含めた選択がしにくかったり、B型の場合はアセスメントの実施が法令で定められていないため、形式的になっていたりなど、必ずしも適切な支援に結び付いていなかった可能性があります。
就労を希望する障害者本人が、アセスメントに主体的に参加することによって、本人の意向に沿ったきめ細やかな支援が行えるのではないかと期待されています。

・「就労選択支援」とは何か?

就労選択支援とは、就労を希望する障害者に、本人の希望や適性、能力に合う仕事やサービス選びを支援するサービスです。
これまでも就労移行支援や就労継続支援などの就労系障害福祉サービスにアセスメントによる支援はありましたが、これらのサービス利用は申請段階でどのサービスを受けるのかを決めなければなりませんでした。そのため利用者にとっては必ずしも適切な選択ではないケースもあり、その結果として就労が定着しないなど、課題も幾つかありました。
この新たな就労選択支援制度の一番の特徴は、就労を希望する障害者本人と支援者が「協同して」就労アセスメントを行うことにあります。
希望や適性、能力のほか、時間・日数などの労働条件、働くにあたって必要な合理的配慮を客観的に考慮し、その情報をもとにサービスの利用や一般就労に向けての選択の機会を提供します。

 

画像出典:厚生労働省 第42回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料 資料1 就労選択支援に係る報酬・基準について

・就労選択支援の利用期間

就労選択支援の利用期間(支給決定までの期間)は、1か月が原則とされています。自己理解などの改善に向けて1か月以上必要であれば、2か月の利用まで認められています。また就労選択支援のサービス内容のうち「作業場面等を活用した状況把握」は2週間以内が基本とされています。

・就労選択支援の対象は?

就労選択支援の対象は、新たに就労系障害福祉サービスの利用を希望する方、すでに就労系障害福祉サービスを利用している方が対象となります。新たにサービス利用を希望する場合は、A型は2027(令和9)年4月から、B型は2025(令和7)年10月から、原則として就労選択支援を先に利用することが求められます。A型、B型とも、すでにサービスを利用している方が、支給決定の更新時に就労選択支援を利用するかどうかは任意となっています。就労移行支援については、新たにサービス利用を希望する方は任意となっています。但し、標準利用期間を超えて更新を希望する方は、2027(令和9)年4月から利用申請前に就労選択支援を利用することが求められます。

画像出典:厚生労働省 第42回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料 資料1 就労選択支援に係る報酬・基準について

・特別支援学校の生徒の利用について

今の「就労アセスメント」では、特別支援学校高等部の生徒については3年生が対象です。しかし本人や関係者の中でB型の利用意向が決まった後に就労アセスメントが実施される事例もあり、形骸化を防止する仕組みが求められていました。そのため就労選択支援では、3年生以外も対象とすることや複数回利用できるようにすることなどが検討されています。また特別支援学校以外の高校や大学の生徒・学生も、同様に在学中に利用できるよう検討がされています。

・就労選択支援の影響〈就労継続支援B型〉

就労継続支援B型では、令和7(2025)年10月以降、現行の就労アセスメント対象者(※)が新たにB型を利用したい場合、利用申請前に原則として就労選択支援を利用することになります。

※ 50歳以上または障害年金1級受給者、就労経験がある人以外

また現行の就労アセスメント対象外の人や就労選択支援開始時に既にB型を利用している人についても、3年に1回の支給決定更新の際に本人に就労選択支援について説明し、希望に応じて就労選択支援を利用できるような仕組みが検討されています。具体的なイメージとして、厚生労働省の検討資料では以下の図が示されています。

画像出典:就労選択支援に係る報酬・基準について≪論点等≫ P.7|厚生労働省

・就労選択支援の影響〈就労継続支援A型〉

就労継続支援A型では、支援体制の整備状況を踏まえつつとしながらも、令和9(2027)年4月以降に新たにA型を利用したい場合、利用申請前に原則として就労選択支援を利用することが予定されています。また就労選択支援開始時に既にA型を利用している人についても、3年に1回の支給決定更新の際に本人に就労選択支援について説明し、希望に応じて就労選択支援を利用できるような仕組みが検討されています。具体的なイメージとして、厚生労働省の検討資料では以下の図が示されています。

画像出典:就労選択支援に係る報酬・基準について≪論点等≫ P.7|厚生労働省

・就労選択支援の影響〈就労移行支援〉

就労移行支援では、支援体制の整備状況を踏まえつつとしながらも、令和9(2027)年4月以降、2年間の標準利用期間を超えて利用したい場合には、支給決定の更新前に原則として就労選択支援を利用することが予定されています。但し標準利用期間を超えたとしても、面接や職場実習といった一般就労に向けた具体的な予定があるなど、就労移行支援事業所が明らかに就職の可能性があると判断した人については原則利用の対象外となる見込みです。

・就労選択支援の実施するのは?

サービスの特性から、障害者の就労支援に一定の実績や経験を持ち、地域における就労支援に関する情報(社会資源、雇用事例など)を適切に提供できる事業者が運営の主体になると見込まれます。厚生労働省のサイトでは、「検討の方向性」として以下のように挙げています。

  • 障害者就労支援に一定の経験・実績を有し、地域における就労支援に係る社会資源や雇用事例などに関する情報提供が適切にでき、過去3年間において3人以上、通常の事業所に新たに障害者を雇用させている以下の事業者()を実施主体としてはどうか検討がなされています。

    就労移行支援事業所、就労継続支援事業所、障害者就業・生活支援センター事業の受託法人、自治体設置の就労支援センター、人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)による障害者職業能力開発訓練事業を行う機関、これらと同等の障害者に対する就労支援の経験及び実績を有すると都道府県等が認める事業者

  • 指定基準において、「就労選択支援事業者は、定期的に(自立支援)協議会に参画することとし、また、ハローワークへ訪問するなどして、地域における就労支援に係る社会資源や雇用事例などに関する情報収集に努め、収集した情報を利用者に提供することで、より的確な進路選択を行いやすくするように努めなければならない」ことを規定するように検討しています。

参照出典:厚生労働省 第42回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料 資料1 就労選択支援に係る報酬・基準について 19ページより

ただし、既存の就労移行支援や就労継続支援を運営する事業者が就労選択支援も担う場合、「利用者に一般就労できる可能性があるにもかかわらず、自法人の就労継続支援にとどめておく」「利用者を自法人の就労系障害福祉サービスへ誘導する」などのケースが発生する可能性は否定できません。そこで厚生労働省では、中立性を担保するために以下の規定を設けることを検討しています。

  • 自法人が運営する就労系障害福祉サービス等へ利用者を誘導しない仕組み
  • 必要以上に就労選択支援サービスを実施しない仕組み(本来の主旨と異なるサービス提供の禁止)
  • 障害福祉サービス事業者等からの利益収受の禁止
  • 本人へ提供する情報に偏りや誤りがないようにするための仕組み(※多機関連携によるケース会議)

※多機関連携によるケース会議

  • 多機関連携によるケース会議において把握した本人の意向、関係機関の見解等を踏まえてアセスメント結果を作成する。
  • (自立支援)協議会の就労支援部会等を定期的に活用する。
  • オンライン会議等の活用も可能とする。

以上、参照出典:厚生労働省 第42回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料 資料1 就労選択支援に係る報酬・基準について

・最後に……

これまでも、就労を希望する障害をもつ方の能力・適性などは、就労支援サービスの利用時に把握する取り組みを行ってきました。しかし、その内容が必ずしも就労先の選択や本人に合った働き方には結びついていないケースが見受けられました。そこで、今回の就労選択支援を創設し、各人の希望・能力・障害の状況などに応じた、よりきめ細かい支援ができるようにしていくものとなります。一般就労をしている障害者の方も、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所などの就労系障害福祉サービスを一時利用できるようになるようです。
就労選択支援の開始により、障害のある方と就労系サービスなどとのミスマッチの減少や支援場面でのアセスメント情報の活用など、これまで以上に質の高い就労支援の実施が期待されています。







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