自治体によっては、ヤングケアラー・コーディネーター(YCC)を配置していない所もありますが、ヤングケアラーの支援を考えると、今後ますます必要とされるのではないでしょうか? ヤングケアラー・コーディネーター(YCC)になるための要件などは、自治体の募集の要件などを確認ください(例えば、社会福祉士、保健師又は教育職員免許法に規定する普通免許状を有する者であって、コーディネーターとして必要な学識経験を有する者などがあります)。以下では、役割や配置などおおまかなことを説明します。
1.役割
「ヤングケアラー・コーディネーター(以降、YCCと表記)」は、ヤングケアラーと思われるこどもに気付いてから支援へのつなぎにおいて核になる人材です。関係機関は、ヤングケアラーと思われるこどもに気付いた場合は、YCCに情報を集約しましょう。
また、「把握したが動けない」、「周りが動かない」等、支援機関が対応に悩んだ場合もYCCに共有・相談をしてください。YCCが関係者調整や支援をサポートします。
〇ヤングケアラー・コーディネーター(YCC)の役割
本人・家族との対話 | ● 本人・家族との対話・相談対応・サポート、ニーズ把握等 |
関係機関からの 情報集約、機関への 相談支援・助言、 他の機関へのつなぎ※、 支援方策検討 |
● 関係機関からの相談支援、情報集約(特に個人情報の観点) ● 家族が受けているサービス状況等の確認 ● 関係機関への助言・相談対応 ● 緊急性の判断・多機関連携の必要性の検討 ● 連携先(連携する関係者)の検討、連携先へのつなぎ、会議等の調整 ● 支援策の検討における関係者への助言・指導 |
支援計画作成 | ● 支援計画の作成 |
見守り・情報共有 | ● 支援後の見守り、関係機関との情報共有、本人・家族との対話、必要に応じ見直しの会議招集 |
※ 地域ごとにYCCを配置することも可能です。
研修の実施 | ● 関係機関向けヤングケアラー支援研修の企画、実施 |
地域の民間 支援団体との連携 |
● こども食堂、学習支援、見守り訪問、家事・育児支援、ピアサポート等を行う支援者団体との連携 |
体制構築・ 地域資源の開発 |
● 関係機関等におけるヤングケアラー支援体制の構築、地域資源の開発 ● 支援機関への定期訪問等による周知啓発・関係性づくり (基幹病院・MSW、訪問支援等を行う福祉機関、学校等へ) |
YCCになる方へ
YCCは、ケースに応じ必要と思われる関係者や必要なサービスを検討し調整していくことが求められ、各機関の役割について熟知していることが求められます。また、業務内容が多様かつ高度な役割を求められることから、YCCにはアセスメントとコーディネートができること、ソーシャルワークの実務を熟知していること、こども側・家族側双方の立場を理解し、寄り添い、対話できること等が求められます。
YCCは、都が実施する「ヤングケアラー・コーディネーター研修」へ参加するとともに、業務を通じて常に研鑽を積み、YCCが本人と一緒に考え、本人の選択を支援する心構えをもつことが大切です。
YCC配置機関の方へ
YCCの主な役割は上記のとおりですが、地域の実情に応じ、他の役割を付加して構いません。
業務量等に応じ、個別ケースに関する役割を担うYCC、関係者との関係性構築を行うYCCを別々に配置する、地域ごとにYCCを配置する等、柔軟に対応してください。
2.配置場所
YCCは、「ヤングケアラー支援のネットワーク」における中心機関への専任配置を想定しています。地域の実情に応じ配置してください。配置しない場合は、支援のネットワークの中心機関が組織として機能を代替してください。
なお、重層的支援体制整備事業活用モデルの場合は、CSW(コミュニティソーシャルワーカー)が類似の役割ですが、YCCはヤングケアラー・若者ケアラー支援に特化する等の役割分担が考えられます。
ネットワークの中心パターン | YCCの想定配置先 |
① こども家庭支援センター中心モデル | こども家庭支援センター |
② 生活福祉/障害/高齢中心モデル | 福祉事務所、自立相談支援機関、特定相談支援事業所、地域包括支援センター 等 |
③ 重層的支援体制整備事業活用モデル | 重層的支援会議の調整機関 (生活福祉分野等の中心機関、福祉事務所、 自立相談支援機関、社会福祉協議会 等) |
3.関係機関からの情報集約について
個別ケースについて、「関係機関からの情報集約」はYCCの重要な役割です。その際、家庭支援の観点を持ちましょう。既にケアを受けている家族側のサービス提供者(相談支援事業所、居宅介護支援事業所等)等にて、家族側のケアの状況や家庭環境等について把握している場合があります。
また、「見守り」の名のもと埋もれてしまうケースが無いよう、適時、適切に支援が行われているか、関係者間の調整を行うことも必要です。
関係機関から周辺情報を集め家庭の状況やケアの全体像を理解すると、当事者の意向に沿った支援ができます。
4.地域資源開発の重要性
ヤングケアラー支援は公的なサービスだけでは十分ではないことが多く、特にヤングケアラー本人に対する家事支援をはじめとした日常生活支援、息抜き、学習支援等は民間団体、地域による支援が不可欠です。
連携した支援を円滑に進めるためには、関係者との日々の関係性構築が重要です。日頃から地域学校協働活動やコミュニティ・スクール等において、学校と関わりのある地域住民等の理解を得ることにより、地域全体でこどもたちを見守る目を増やし、早期に気付くことも重要です。
民生児童委員といった地域の協力者や、こども食堂や児童館等のこどもの居場所は、行政機関より家庭に近い立ち位置にあるため、早期にヤングケアラーと思われるこどもに気付いたり、状況の把握をするという視点から見ても重要な資源といえます。
地域によっては、現状、地域資源が十分ではないこともあるかもしれません。そのような地域でも、YCCによる周知啓発等により、まずはヤングケアラーへの認識を高め、徐々に地域における支援の糸を増やしていきましょう。
学校や病院、福祉機関等、関係機関からも、「ヤングケアラーかもしれないこども」がいたらすぐに連絡をもらえるように、定期的に訪問して顔の見える関係性を築いておく必要があります。
5.その時々に必要な支援を検討する「ヤングケアラー・コーディネーター(YCC)」
○ 状況はケースごとに様々です。また、ケア相手の状況、家族の状況、本人の状況の複合要素で、緊急度や求められる支援が異なってくるため、状況によっても変化します。
○ どの時点でどのような支援が必要か、これら一連の支援を調整していく担当者がYCCです。YCCはいずれの支援にも横断的にかかわります。
○ 「課題解決型支援」では、ケース会議を開催し支援計画に基づき各機関が支援をすることが一般的ですが、ヤングケアラー支援においては「伴走・寄り添い型支援」、「共感型支援」で会議以外の形で柔軟に継続的に支援していくことも、支援のあり方です。
●支援の重層構造の例
本人・家庭のニーズ、緊急度、状況に応じ、必要な支援を引いたり足したり適宜組み合わせる。
状況に応じ、ヤングケアラー・コーディネーターを核に適切な支援関係者が連携して支援する・見守る。