事業主に望まれること

各事業所においては、それぞれの事業所の実情に応じて、次のような措置を実施することが望まれています。

 1.障害者が能力や適性が発揮でき、生きがいを持って働けるような職場作り

◎〔障害者雇用対策基本方針〕(平成30年厚生労働省告示第178号)

事業主が行うべき雇用管理に関して指針となるべき事項

事業主は、法の規定に基づき、障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供を実施するとともに、関係行政機関や事業主団体の援助と協力の下に、以下の点に配慮しつつ適正な雇用管理を行うことにより、障害者が男女ともにその能力や適性が十分発揮でき、障害のない人とともに生きがいを持って働けるような職場作りを進めるとともに、その職業生活が質的に向上されるよう努めてください。

1 基本的な留意事項

    障害者個々人の能力が十分発揮できるよう、障害の種類及び程度を勘案した職域を開発することにより積極的な採用を図ってください。また、採用試験を行う場合には、募集職種の内容や採用基準等を考慮しつつ、応募者の希望を踏まえた点字や拡大文字の活用、手話通訳者等の派遣、試験時間の延長や休憩の付与等、応募者の能力を適切に評価できるような配慮を行うよう努めてください。 さらに、必要に応じて職場環境の改善を図りつつ、障害者個々人の適性と能力を考慮した配置を行うようにしてください。
    障害者は職場環境や職務内容に慣れるまで、より多くの日時を必要とする場合があることに配慮し、十分な教育訓練の期間を設けてください。 また、技術革新等により職務内容が変化することに対応して障害者の雇用の継続が可能となるよう能力向上のための教育訓練の実施を図るようにしてください。 これらの教育訓練の実施に当たっては、障害者職業能力開発校等関係機関で実施される在職者訓練等の活用も考慮してください。
    障害者個々人の能力の向上や職務遂行の状況を適切に把握し、適性や希望等も勘案した上で、その能力に応じ、キャリア形成にも配慮した適正な処遇に努めてください。 なお、短時間労働者である障害者についても実雇用率の算定対象となっていますが、障害者である短時間労働者が通常の所定労働時間働くこと等を希望する旨の申出があったときは、事業主は、当該障害者の有する能力に応じた適正な待遇を行うよう努めることとされています(法第 80 条)。社会保険料負担を免れる目的で、その雇用する障害者の勤務形態を一方的に短時間労働に変更することは、不適切な待遇に当たるものであり、本人の希望、能力等を踏まえた適切な待遇に努めてください。
    障害の種類および程度に応じた安全管理を実施するとともに、職場内における安全を図るために随時点検を行ってください。また、非常時においても安全が確保されるよう施設等の整備を図るようにしてください。 さらに、法律上定められた健康診断の実施はもとより、障害の特性に配慮した労働時間の管理等、障害の種類および程度に応じた健康管理の実施を図ってください。
    障害者の職業の安定を図るためには、雇入れの促進のみならず、雇用の継続が重要であることから、障害があるために生じる個々人の課題を把握し、適正な雇用管理を行うことにより、職場への定着を図るようにしてください。また、法に基づき企業が選任することとされている、障害者の雇用の促進およびその雇用の継続のための諸条件の整備を図る等の業務を行う障害者雇用推進者や、障害者の職業生活に関する相談および指導を行う障害者職業生活相談員について、雇用する労働者の中からその業務に適した者を選任し、障害者就業・生活支援センターと連携しつつ、生活面も含めた相談支援を図ってください。これらに加え、社内での配置も含め職場適応援助者(ジョブコーチ)を活用することや障害者が働いている職場内において関係者によるチームを設置すること等により、障害者の職場定着の推進を図ってください。
    障害者が職場に適応し、その有する能力を最大限に発揮することができるよう、職場内の意識啓発を通じ、事業主自身はもとより職場全体の、障害および障害者についての理解や認識を深めるようにしてください。 特に精神障害および発達障害について、各都道府県労働局が開催する精神・発達障害者しごとサポーター養成講座の出前講座を活用するなどにより職場内全体の理解の促進を図るようにしてください。
    障害者虐待防止法に基づき、事業主は障害者虐待の防止等を図るようにしてください。また、障害者差別および合理的配慮の提供についての問題が生じており、企業内での自主的な解決が困難な場合には、その問題解決および再発防止のために、都道府県労働局長による紛争解決援助障害者雇用調停会議による調停を活用してください。

2 障害の種類別の配慮事項

(1)身体障害者

身体障害者については、障害の種類および程度が多岐にわたることを踏まえ、職場環境の改善を中心として以下の事項に配慮してください。

なお、イからハまでに関して、「身体障害者補助犬法」(平成 14 年法律第 49 号)に基づき、常用労働者を 45.5 人(一般事業主の法定雇用率が 2.3%となった際は 43.5人)以上雇用している事業主ならびにその特例子会社及び関係会社は、その事業所に勤務する身体障害者が身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬および聴導犬をいう)を使用することを拒んではならないこととされ、また、その他の事業主についても拒まないよう努めることとされており、同法に基づき適切に対応するようにしてください。

    視覚障害者については、通勤や職場内における移動ができるだけ容易になるよう配慮してください。また、視覚障害者の約60%を重度障害者が占めることを踏まえ、個々の視覚障害者に応じた職務の設計、職域の開発を行うとともに、必要に応じて、照明や就労支援機器等施設・設備の整備や、援助者の配置等職場における援助体制の整備を図るようにしてください。 さらに、実態として、あん摩・はり・きゅうといったいわゆる「あはき」業における就労に大きく依存せざるを得ない状況にあることから、ヘルスキーパー(企業内理療師)や特別養護老人ホームにおける機能訓練指導員としての雇用等、職場の拡大に努めるようにしてください。
    聴覚・言語障害者については、個々の聴覚・言語障害者に応じて職務の設計を行うとともに、光、振動、文字等、視覚等による情報伝達の設備の整備や、手話のできる同僚等の育成を図ることにより職場内における情報の伝達や意思の疎通を容易にする手段の整備を図ってください。そのほか、会議、教育訓練等において情報が得られるよう、手話通訳者や要約筆記者の配置等職場における援助体制の整備を図ってください。
    肢体不自由者については、通勤や職場内における移動ができるだけ容易になるよう配慮するとともに、職務内容、勤務条件等が過重なものとならないよう留意してください。また、障害による影響を補完する設備等の整備を図ってください。
    心臓機能障害者、腎臓機能障害者等のいわゆる内部障害者については、職務内容、勤務条件等が身体的に過重なものとならないよう配慮するとともに、必要に応じて、医療機関とも連携しつつ職場における健康管理のための体制の整備を図ってください。
    重度身体障害者については、職務遂行能力に配慮した職務の設計を行うとともに、就労支援機器の導入等作業を容易にする設備・工具等の整備を図るようにしてください。また、必要に応じて、援助者の配置等職場における援助体制を整備してください。さらに、勤務形態、勤務場所等にも配慮してください。
    中途障害者については、必要に応じて休職期間を確保した上、 円滑な職場復帰を図るため、全盲を含む視覚障害者に対するロービジョンケア(視覚的な障害があるため、日常生活に何らかの支障をきたしている人に対して医療的・教育的・職業的・社会的・福祉的・心理的など様々な面から行われる支援の総称)の実施等、パソコンやOA機器等の技能習得を図るとともに、必要に応じて医療、福祉等の関係機関とも連携しつつ、地域障害者職業センター等を活用した雇用継続のための職業リハビリテーションの実施、援助者の配置等の条件整備を計画的に進めてください。

(2)知的障害者

知的障害者については、複雑な作業内容や抽象的・婉曲な表現を理解することが困難な場合があること、言葉により意思表示をすることが困難な場合があること等と同時に、十分な訓練・指導を受けることにより、障害のない人と同様に働くことができることを踏まえ、障害者本人への指導および援助を中心として以下の事項に配慮してください。

 作業工程の単純化、単純作業の抽出等による職域開発を行ってください。また、施設・設備の表示を平易なものに改善するとともに、作業設備の操作方法を容易になるようにしてください。

 必要事項の伝達に当たっては、分かりやすい言葉づかいや表現を用いるよう心がけてください。

 日常的な相談の実施により心身の状態を把握するとともに、雇用の継続のためには家族等の生活支援に関わる者の協力が重要であることから、連絡体制を確立するようにしてください。

 重度知的障害者については、生活面での配慮も必要とされることを考慮しつつ、職場への適応や職務の遂行が円滑にできるよう、必要な指導および援助を行う者を配置するようにしてください。

 十分な指導と訓練を重ねることにより、障害のない人と同様に働くことができることを考慮し、知的障害者の職業能力の向上に配慮するようにしてください。また、近年では、製造業のみならず、サービス業や卸売・小売業等、知的障害者が従事する業種が拡大していることを踏まえ、知的障害者の特性や能力に応じた就業が可能となるよう、職域の拡大を図ってください。

(3)精神障害者

本人の状況を踏まえた根気強く分かりやすい指導を行うとともに、ある程度時間をかけて職務内容や配置を決定するようにしてください。
職務の難度を段階的に引き上げる、短時間労働から始めて勤務時間を段階的に延長する、本人の状況に応じ職務内容を軽減する等必要に応じ勤務の弾力化を図ってください。特に、当初は長時間の勤務が困難な精神障害者については、採用に当たり本人の適性や状況を見極めた上で職務内容や勤務時間を決定し、採用後は常用雇用に移行できるよう、勤務時間を段階的に引き上げながら円滑に職場に定着できるよう配慮してください。
日常的に心身の状態を確認するとともに、職場での円満な人間関係が保てるよう配慮してください。また、通院時間、服薬管理等の便宜も図るようにしてください。
職場への適応、職務の遂行が円滑にできるよう、必要な指導および援助を行う者を配置するとともに、必要に応じて職場適応援助者(ジョブコーチ)の活用もしてみてください。
企業に採用された後に精神疾患を有するに至った者については、企業内の障害者職業生活相談員や産業医等による相談・指導・援助のほか、地域障害者職業センターによる職場復帰支援(リワーク支援)、産業保健推進センターや精神保健福祉センターによる支援等の活用により、医療・保健機関や職業リハビリテーション機関との連携を図りながら、円滑な職場復帰に努めるようにしてください。

(4)その他障害者

発達障害、難病等に起因する障害、高次脳機能障害、若年性認知症、各種依存症等により長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者については、個々の障害の状況を十分に把握し、必要に応じて障害に関する職場の同僚等の理解を促進するための措置を講じ、職場内の人間関係の維持や当該障害者に対して必要な援助・指導を行う者の配置、障害状況に応じた職務設計、勤務条件の配慮等を行ってください。

  2.障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度

 

令和元年改正の障害者雇用促進法において、障害者雇用に関する優良な取組を行う中小事業主に対する認定制度が創設されました(令和2年4月1日施行)。

この認定制度は、障害者雇用に対する社会的な関心を喚起し、先進的な取組を進めている中小事業主が社会的メリットを受けることに加え、既に認定を受けた事業主の取組状況の公表を通じて、地域における障害者雇用の身近なロールモデルとして認知され、中小事業主全体で障害者雇用の取組が一層進展することを目的としています。

詳しい制度の内容につきましては「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」のページをご確認ください。

認定事業主となることのメリット》

①障害者雇用優良中小事業主認定マーク(愛称:もにす)が使用できます

障害者雇用優良中小事業主(もにす認定事業主)は、以下の商品等に「障害者雇用優良中小事業主認定マーク」(※)を付することができます。

愛称は「もにす」。認定マークの報道発表については、2020年7月2日掲載の報道発表資料「障害者雇用の取組が優良な中小事業主の認定マークのデザイン・愛称を決定しました。」をご覧ください。

【認定マークを表示できる商品等】
・商品
・役務の提供の用に供する物
・商品、役務または事業主の広告
・商品または役務の取引に用いる書類、または電磁気的記録
・事業主の営業所、事務所その他の事業場
・インターネットを利用する方法により公衆の閲覧に供する情報
・労働者の募集の用に供する広告または文書

②日本政策金融公庫の低利融資対象となります

認定事業主は、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」(※)における低利融資の対象となります。

「働き方改革推進支援資金(国民生活事業)」
「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」のご融資を通じて、非正規雇用の処遇改善に取り組む方や従業員の長時間労働の是正に取り組む方などのお手伝いをさせていただいております。

《利用いただける方》

1.非正規雇用の処遇改善に取り組む方
2.従業員の長時間労働の是正に取り組む方
3.次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長へ届け出ている方(届出が義務付けられている方を除きます。)
4.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長へ届け出ている方(届出が義務付けられている方を除きます。)および同法に基づく認定を受けた方
5.青少年の雇用の促進等に関する法律 に基づく「ユースエール認定企業」の認定を受けた方
6.障害者の雇用または障害者に対する合理的配慮の提供に取り組む方
7.事業場内最低賃金の引上げに取り組む方(注)
  (注)事業場(事業場が複数ある場合、いずれか一つの事業場)における労働者(正社員、有期契約労働者または短時間労働者)の最も低い時間当たりの賃金額を2%以上増額することをいいます。
8.外国人労働者の雇用管理の改善に取り組む方
《資金の使いみち》働き方改革実現計画を実施するために必要とする設備資金および運転資金
《融資限度額》7,200万円(うち運転資金4,800万円)
《返済期間》設備資金 20年以内(うち据置期間2年以内)
      運転資金 7年以内(うち据置期間2年以内)
尚、利率、担保・保証人、融資条件、併用できる融資制度等については……「働き方改革推進支援資金(国民生活事業)」を参照し、詳しくは日本政策金融公庫にお問い合わせください。

③厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークによる周知広報の対象となります

認定事業主の情報は、厚生労働省及び都道府県労働局のホームページに掲載され、社会的認知度を高めることができます。
また、ハローワークの求人票に認定マークを表示するなど、積極的に周知広報を行います。また、認定事業主に限定した合同面接会等も企画する場合があります。
詳しくは最寄りの都道府県労働局またはハローワークにお問い合わせください。







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