A3 肢体不自由の障害は、その障害のある部位によって症状や程度が異なり、よって介助の方法も多様です。ここでは車イスでの介助方法を説明しますが、その前に車イスについて簡単に説明します。
まず車イスは利用者が自分で漕いで進む自走式と、介助者が後ろから押して進む介助式の主に2種類が存在します。自走式は利用者がこぐためのハンドリムがついていて、重量が重く車イスの幅も介助式より広いのが特徴です。それに比べ、介助式は自走式と比べ重量が軽い反面安定感が少なくなります。
以上、車イスについて簡単におさらいしたところで、次に車イスによる介助方法を順番に説明します。
まず車イスには折りたためるものもあります。介助者が車イスを広げるときや利用者が車イスに乗るときは必ずブレーキがかかっているかを確認します。また利用者の足を乗せるフットサポートは必ず跳ね上げておきます。降りたままになっていると乗る際に車イスが前に倒れ非常に危険です。アームレストが跳ね上がるものは上げておくと介助が楽になります。そして必ず利用者の足がフットレストに乗っていることを確認してから車イスを動かしましょう。
段差を上る際は前輪がぶつからないように必ずいったん手前で止まりティッピングレバーを足で押して前輪を段差に乗せ、そのまま車イスを押して後輪で段差を上ります。段差を降りるときは前から行くと転倒の危険性があるので段差の手前まで来たら、その場で反転し後ろ向きに降ります。坂を上るときは車イスが後ろに下がらないようにブレーキをかけながら登り、逆に下るときも段差と同様に後ろ向きでブレーキをかけながら降ります。ちょっとした坂でも車イスで上るのはとても力を使います。また下りの坂や段差は車イスに乗る人の目線からはとても恐怖を感じます。街中などで坂や段差の前で困っている車イス・ユーザーを見かけたときは優しく「お手伝いしましょうか?」と声をかけてもらうととても心強く感じられます。
そのほかに車イスからベッドや椅子への移乗介助は、利用者を持ち上げるのではなく前に傾いてもらいおしりを浮かせてできるだけ少ない力で行うと介助者の負担が少なくなるので、介助者はユーザーが前かがみになりやすい位置に体を移動させるようにします。この時、介助時にズボンや服を持つとおむつが破れて転倒・転落の危険があり、また下着が食い込み皮膚がすれてけがをする恐れもあります。足がある程度動かせる場合、移乗を補助するときは手を持つのではなく、介助者が下からユーザーの肘(ひじ)を持ち、ユーザーは介助者の肘を上から持つようにするとスムーズに介助することができます。
立たせるときはベッドの高さに注意し、ユーザーが立ちやすい足の位置を意識し、おしりの位置が後ろや前になりすぎないように注意します。
他に症状別に理解して欲しいこととして、車イスを利用していると、高いところには手が届かず、床にある物も拾いにくいため、そのような場面では床や高いところのものを代わりにとってもらえると助かります。
また脊髄損傷では、体温調整ができず、尿意をコントロールすることも難しい場合があるため、室内の温度をこまめに調節したり本人に部屋の温度について尋ねたりするようにしてください。
進行性筋ジストロフィーは、全身性の筋肉の障害であるため、手先の動作が鈍く、自動販売機に小銭を投入することやレジでの支払いに手間がかかります。これも、自動販売機には代わりに小銭を入れてもらうと助かりますしレジでは焦らずゆっくり見守ってもらうか「代わりに小銭を出しましょうか?」と声をかけてから手伝ってください。
最後に、他の障害についても言えることですが、介助を申し出ても断られることもあります。その場の状況やその人の気持ちなどによって、たまたま支援が必要でなかっただけのこともあるので、べつの機会にまた声をかけてみてください。