A2 聴覚障害者は情報が入りにくいことで不便さを感じることが多く、その情報差を解消するためにそれぞれに工夫を行っています。
たとえば電車を利用していて、事故などで電車が止まってしまったとき、聴覚障害者は何が起こっているかわかりません。そんな時、何があったか教えてほしいということを紙に書いて周りの人に尋ねます。また病院や金融機関などで順番を待っているとき、音声で呼ばれても気づくことができません。これは一例ですが、病院で呼ばれている声に気づけずに何時間も待ったという例もあります。そんな時、以前では受付で耳が聞こえないので合図をしてもらうようにお願いしていました。現在大きな病院では電光掲示板に番号が表示されるところが多くなっているので不便さは解消されつつありますが、小規模のクリニックなどでは掲示板があるところはまだ少数で、わざわざ聞こえないことを伝える必要があるという不便さがあります。
また電話で会話をすることが困難な聴覚障害者にとって、公的機関や金融機関などの電話での手続きの際、本人確認ができないために手続きを進めることができません。現在大手の金融機関などではファックスを送ることで認めてもらえるところも出てきています。
さらに電話でタクシーを呼ぶこともできないため、自分でタクシーを探し、タクシーがなければ歩いて移動しなければなりません。
それだけでなく、110番や119番、エレベーターが止まった時など命に係わる緊急時の対応も、音声で伝えられない聴覚障害者にとっての大きな課題です。
このように電話が困難な人のために、電話リレーサービスといって、聞こえない人と公的機関などの間にオペレータが入って、聞こえない人とオペレータは手話や文字で話し、オペレータが本人に代わって電話をかけるサービスを活用することもできます。これでもまだ電話での会話のすべてを補えるわけではありませんが、有用な手段の一つです。
また近年ではマスクを着けて会話をしなければならないことも多く、聞こえない人にとっては口元が見えないため相手が何を言っているかがわからずに困ってしまいます。そんな時は紙に書いたり、身振りで伝えてもらうことで答えることができます。またゆっくり話してもらうことで、完全ではありませんが、だいたいの内容を理解することができます。
次に、災害が起きた時、避難所での情報格差も課題の一つです。避難所などで物資配布時の案内放送を聞くことができない聴覚障害者は物資をもらうことができないなど、情報格差による不公平が生まれます。このような災害時、すぐに通訳者を派遣することは困難です。また外見からわかりにくい聴覚障害者にとって、すぐに気づいて対応してもらうことも難しいのが現状です。どのような場面でも聴覚障害者が困っているということを、多くの人がそのことに気づき理解することが課題を解決する近道かもしれません。