親のための就労支援サービス利用までの流れ

目次
  1. はじめに
  2. 働きたいと思ったら
  3. 行動に移そうと思ったら
  4. 用意しておきたいもの
  5. 実際、行動に移すと
  6. 離職、転職を考えだしたら
  7. 最後に
1.はじめに

 みなさんは、心配ではありませんか? お子さんの就職活動について。こどもはどんなに大きくなっても親にとってこどもはこどもです。こどもが何をするにしても、気になるものです。まして社会に出るとなると、本人は「自分一人でできる、大丈夫だから」と過保護だの甘やかすなと言って、親の心配はどこ吹く風といったところです。本人が障害を持っていれば、尚更、心配の種は尽きることはないことと思います。

 障害をお持ちのお子さまがいて、親としてもこどもの就職や就労支援サービスの全体の流れについてある程度知っておきたいとういうのが親心というものです。
 そこで、できるだけ分かりやすく図解を紐解きながら、お子さまがどんな手順を辿って就労までの道のりを歩むのか、以下に説明します。

2.働きたいと思ったら

 障害のある日々の生活から、他の人と同じように働きたいと本人が思うようになったら、親はどのようにこどもに接したらいいのでしょうか。
 そこは親が手取り足取り教えるというのも、こどもの障害の状態に応じてはケアとして必要なことかもしれません。最近はコンピューターと向き合っていることの多い方が多く、コンピューターを使って調べることは、それほど苦にならないことが多いようです。

 もし本人が働きたいという意志を持っているようであれば、自分で検索して探してみることを促し、親としてはこどもが自分の力で社会の扉を開こうとするのをじっと見守ってあげて下さい。
 では、本人が働きたい意志があった場合、実際コンピューターを使ってどのような検索をするのかを見てみます。

下記「就職に向けての相談」の図をご覧下さい。
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 本人自身の状態を鑑み、知りたい内容に応じて、訪ねるべき場所が違ってきます。ハローワークを訪ねるのか、障害者職業・生活支援センターなのか、地域障害者職業センターなのか、そのうちのどれかを訪ねることに行き当たるでしょう。

 では、職業相談のできるところであるハローワークや障害者職業・生活支援センター、地域障害者職業センターとはどんなところなのか、以下、簡単に説明します。

ハローワークは、就職を希望する障害者の求職登録や、きめ細かな職業相談、職業紹介、職場適応指導を実施しています。
障害者職業・生活支援センターは、障害者の身近な地域において、就業面と生活面の一体的な相談・支援をしています。
地域障害者職業センターは、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを提供する施設です。
また何処にあるのかが次に気になるところです。勿論、各市町村のHPや便利手帳で調べることもできます。また、実際各自治体の障害福祉の窓口で訊くこともできます。

以下の単語検索で、より詳しく知ることができます。
 ・ハローワーク
 ・障害者職業・生活支援センター
 ・地域障害者職業センター

3.行動に移そうと思ったら

 調べているうちに就労経験のないお子さんにとっては、直接紹介された企業にいきなり面接に行くというのは、ハードルが高いかもしれません。どんな準備や心構えが必要か、不安になる材料は、面接や試験日などが近づくにつれ、次から次へと増えるばかりです。勇気があれば、なんとかなるとは言っても、お子さんにとってはかなりのストレスがかかる社会へ踏み出す行動です。そのことで就労が怖くなったり、億劫になったりしては、もともこもありません。当然、健常者と同じように就職活動を促すことはできません。

 いろいろコンピューターで検索しているうちに障害者の受け入れに成功している企業の情報は、検索できるものは限られており、倍率も高い所が多いようです。このような情報を個人で収集するのは、自分の手には負えないと思うかもしれません。
 そこでそのような情報が手に入りやすい福祉事業所のサービスを受け、就労に必要な情報、技術の習得、雇用前の準備の手助けを得るのも一考に値します。

 そのようなサービスが受けられる所に、Aの「就職に向けての準備/訓練」とBの「就職活動、雇用前支援」で図解したものがあります。
A「就職に向けての準備/訓練」(下記図)では、
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ワンクッション置いて(就職の準備や訓練を受けて)就労にこぎつける方法で、
B「就職活動、雇用前支援」(下記図)にあるような
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直接ハローワークに求人応募を探しに行く方法と、専門的な技術を身につけて就職するという方法があります。

 上記図Aの「就職に向けての準備/訓練」にあげられている就労移行支援事業所や就労継続支援A型事業所は、いずれも目的が明確になっている福祉事業所です。
 就労移行支援事業所は、通所期間が決められており、就職に特化してプログラムが組まれています。
就労継続支援A型事業所とは、給料(最低賃金)をもらいながら仕事に慣れ、本人の要望があれば就職説明会などに参加することもできます。以下、簡単にですが説明しておきます。

就労移行支援事業所とは……一般企業等での就労を希望する障害者が対象です。
①一般企業等への就職に向けたトレーニングができる
②自分に合った職場を探すことができる
③就職活動のサポートが受けられる
④就職後、安定して働き続けるために支援が受けられる
より詳しくは、以下の単語検索を参照下さい。
就労移行支援事業所

就労継続支援A型事業所とは……一般企業等での就労が困難な障害や難病を持つ方が対象です。
①実際に働ける場を提供する
②知識や能力の向上のために必要な訓練を行う
③雇用契約を結び、給料(最低賃金)もらいながら利用する
④障害や病気に理解のあるスタッフのサポートが受けられる
より詳しくは、以下の単語検索を参照下さい。
就労継続支援A型

4.用意しておきたいもの

 上記のようにAやBにあげた行動を移す前に、または行動を移す中で、用意しておきたいものがあります。就労支援サービスを受けるために手元に用意しておくか、または知っておくと、よりスムーズに手続きができるものがあります。これまでに紹介した各事業所の福祉サービスの利用に必要な申請を各自治体の障害福祉の窓口で手続きをして下さい。
 勿論、事前に準備しておくと便利なのですが、障害者手帳以外は、ハローワークや福祉事業所の見学時に、詳しく必要な申請を聞いてから手続きをしても遅くはありません。

  • 以下に、障害者手帳とそれ以外の申請について説明します。
    障害者手帳(身体障害者手帳、精神障害保健福祉手帳、療育手帳)だけは事前に取得されることをお薦めします。お子さんが就労に限らず様々なサービスを受けるためには欠かせないパスポート(身分証明書)となります。申請には医師の診断書等も必要ですので、その旨をかかりつけの医師に伝えておくことをお薦めします。

より詳しい取得の方法やサービスについての説明は、以下の単語検索をご覧下さい。
障害者手帳とは

  • サービス利用の申請(介護給付、訓練等給付)は、事前になくても訪問時に窓口や相談員から説明を受けてから手続きをしてもかまいません。但し、あらかじめ介護給付に関しては、ある程度時間がかかることは心にとめておいて下さい。では、申請にはどんな手順で手続きがとられるのか全体の流れをこと細かく図解してあるのが、「1.サービス利用の申請について」です。

「1.サービス利用の申請について」大きく分けて介護給付の申請と訓練等給付の申請、二つのものがあります。特に就労支援サービスには、この訓練等給付の申請が必ず必要となります。二つの申請は、サービス利用を市町村の障害福祉の窓口に申請すると、「心身の状態に関する106項目の調査」を受けることと、サービス受給者証の発行に至る手前で、「勘案事項の調査・サービス利用意向の聴取」が共通してあります。それ以外、二つの申請はサービスの利用までのプロセスが異なります。以下、違っているところを簡単に説明しておきます。

  • 介護給付の申請は、障害を持つ方の生活全般(地域生活・就労・日常生活・介護者・居住)で必要な福祉サービスを受けるために必要となる認定調査です。障害程度区分を認定するまでに多くの時間が割かれます。それは障害程度区分一次判定、二次判定、障害程度区分の認定という流れでおこなわれます。区分は1~6まであり、数が多いほど必要度は高く多くのサービスが受けられます。
  • 訓練等給付の申請は、障害を持つ方が就労訓練に関する福祉サービスを受けるために必要となる手続きです。訓練等給付の申請は、ほぼ「心身の状態に関する106項目の調査」と「勘案事項の調査・サービス利用意向の聴取」は直結していますが、その後の事業所の体験や面接によって、採用がほぼ来まると暫定支給が決定され、個別支援計画が作成されるとサービス受給者証が発行されます。

 但し、暫定支給決定不要の報告書・採用予定確認可能書類・アセスメント票を提出すれば上記のプロセスを踏まない市町村もあります。実際、こちらの方法を取る市町村が多くなっているようです。このような暫定支給決定をしない事業所は、サービス利用が始まって1か月以内に個別支援計画を市町村に提出するようになっています。

 これらのサービス利用の申請は、障害者総合支援法に基づくサービスです。以下、介護給付、訓練等給付にどんな項目があるのかを表にしてみました。利用できる障害対象者を右半分に簡略して記してあります。空白は、対象者が利用できないものです。

障害者総合支援法に基づくサービス
障害者総合支援法に基づくサービス
■介護給付
居宅系サービス
居宅介護(ホームヘルプ) 身体 知的 精神 難病 障害児
重度訪問介護 身体 知的 精神 難病  
同行援護 身体     難病 障害児
行動援護   知的 精神 難病 障害児
重度障害者等包括支援 身体 知的 精神 難病 障害児
短期入所(ショートステイ)
知的 知的 精神 難病 障害児
通所系サービス
生活介護 身体 知的 精神 難病  
療養介護 身体 知的   難病  
居宅系サービス
施設入所支援 身体 知的 精神 難病  
■訓練等給付
通所系サービス
就労移行支援 身体 知的 精神 難病  
就労継続支援(A型) 身体 知的 精神 難病  
就労継続支援(B型) 身体 知的 精神 難病  
就労定着支援 身体 知的 精神 難病  
自立訓練(機能訓練) 身体 知的 精神 難病  
自立訓練(生活訓練) 身体 知的 精神 難病  
居住系サービス
自立訓練(宿泊型) 身体 知的 精神 難病  
共同生活援助(包括型) 身体 知的 精神 難病  
共同生活援助(日中サービス支援型) 身体 知的 精神 難病  
共同生活援助(外部サービス利用型) 身体 知的 精神 難病  
自立生活援助 身体 知的 精神 難病  

 この他にも地域相談支援給付、計画相談支援給付、その他のサービスはありますが、ここでは話が散漫になるので省きます。就労支援に特化して説明します。

5.実際、行動に移すと

 福祉サービス利用の申請の全体像が分かったところで、本人はどんな手続きをしながら入所に至るのでしょうか。

 手元に障害者手帳があります。早速行動に移してみると、どの事業所も大方手続きの流れは変わらないので、ここではAにある就労継続支援A型事業所のサービスを利用をするための手続きを説明します。以下、時間軸で理解ができる「2.サービス利用の手続きについて」の図解を説明したいと思います。
「2.サービス利用の手続きについて」では、左から福祉事業所、本人、市町村の行政窓口と順に並んでいます。本人の行動を中心にして縦に手続きの時間の流れが解るようなっています。以下、手順を見てみましょう。

就労継続支援A型事業所に通所するまでの流れ
 ① 行政窓口での障害者手帳の入手

 ② 行政窓口でサービス受給者証有無の相談
 ③ 事業所への見学の申込み(ハローワークでの事前の登録は必須。)
 ※当サイトの簡単「事業所見学予約」で申込みもできます。
 ④ 事業所の見学(約束の日時を間違えないで下さい)
 ⑤ 気に入れば、ハローワークから紹介状の取得と採用のための面接と体験を申込む
 ⑥ 行政窓口でサービス受給者証の入手(障害者手帳持参のこと)
 ⑦ 事業所での面接及び体験(およそ一週間の体験)
 ※持参するものは、障害者手帳、障害福祉サービス等利用受給者症、ハローワークの紹介状、写真付き履歴書
 ⑧ 事業所から採用の連絡と勤務開始日の連絡
 ⑨利用開始

 以上が大まかな流れです。図には行政窓口と事業所の連絡等も図解してあり、全体像が分かるようになっています。

 各手続きを滞りなく済ませてゆけば、本人の体調やよほどのことがなければ、断られることはありません。但し、入所にあたって本人が守らねばならない共労のルール(基本的にモラルに関するもの)があります。それを破るようなことはしないで下さい。

 どのような就労もハローワークが起点となっています。ハローワークには障害者用の窓口があり、相談できるようになっています。何も分からなくとも、相談してもらえれば、何処に行けばいいか、何が必要か、申請手順等、丁寧に説明してくれます。ですから、いかなる就労についてもハローワークが社会と本人を繋ぐ窓口で、サービス申請は市町村の障害福祉の窓口と覚えるようにして下さい。
6.離職、転職を考え出したら
 少し先の話になりますが、例え無事、就職がかなったとしても、障害を持っていることでなかなか職場に馴染めなかったりすることもあるかと思います。この時、せっかく就職できたのだからとお子さんを無理に頑張らせるようなことはしない方が良いでしょう。トラウマになるまで頑張ってしまうと、せっかくのやる気を取り戻すことができにくくなる場合があります。

 多くの障害を持った先輩方も同じように、自分に相応しい労働と居場所を求めて離職や転職をしています。障害者が生きやすい社会にはもう少し時間がかかりそうです。しかし、そんな社会を築くためにも、お子さんの就労は将来へ向けての貢献に間違いなく繋がっています。この国の社会全体が障害者を受け入れる土壌をもっと耕さなくてはならないと考える方がいいでしょう。ですから親としては、こどもが離職、転職の意志を示したら、これまでの本人の頑張りを評価し、次にチャレンジしたい気持ちが芽生えるのを待つようにして下さい。
 就労への意欲は、かなりのエネルギーが必要となります。就労経験があって、その最中、何らかの理由で障害を持ったという方が再チャレンジする場合は、それなりの回復は自助努力でできる方もおられるかと思います。が、障害を患っていて初めて就労した結果、離職となると、お子さんの状態をしっかり見極め無理をさせることのないよう慎重に見守ってあげて下さい。

 就職をしたはいいが、勤める中でどうしてもこの職場は自分には合わないので離職したい。または、転職したいのだがどうすればいいのかと本人が考えるようになり始めたら、実際どこに相談すればいいのでしょうか。中には、再チャレンジとして支援サービスを考えたいと思う方もおられるかもしれません。

 そんな悩みを本人が持ち始めたら、どこに行けばいいのかを示した図が、Cの「離職・転職時への支援、再チャレンジ支援」です。
C「離職・転職時への支援、再チャレンジ支援」(下記図)では、
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 離職・転職の相談はハローワーク、または自分は障害の程度から一般就労は難しいのではないかと考える人は、就労継続支援A型事業所や就労継続支援B型事業所があることを解説しています。
就労継続支援事業所にはA型とB型があります。二つの事業所形態の違いを簡単に説明すると以下の様になります。
〇就労継続支援A型とB型事業所の違いは

 就労継続支援A型事業所は、最低賃金を貰いながら働け、且つ、通いながら再就職にもチャレンジもできる。但し、年齢制限が65歳未満となっています。
 就労継続支援B型事業所は、一般就労はあきらめ、ここで工賃を貰いながら働きます。年齢制限はありません。詳しくは以下の単語検索をご覧ください。

 B型事業所のより詳しい説明は、以下の単語検索をご覧下さい。
就労継続支援B型事業所とは?

7.最後に
 ここまで説明してきた就労支援サービス利用の流れの中で、就労支援の準備や手続き、実際に脚を運ぶことなどにおいては、お子さんの障害の状態によって親として協力することは、かなり左右されてくると思われます。
 これまでお話していないことで言うと、例えば、障害福祉の窓口へ各種手続きの介添え、ハローワークや福祉事業所への送り迎えから、通所のために一人で通うために家からの目的地までの安全な経路の確保など、実際の動きの中で障害の状態に応じて気を使わねばならないことが出てくるかと思います。

 いずれにしても就労に関してお子さんと良好な関係を維持し、都度相談しながら最善の方法を選ぶようにして下さい。

 以上が、就労支援の流れの全体像です。いかがでしたでしょうか。分かりやすくお伝えしたつもりです。お子さんが就労を思い立って、それを行動に移し、就労支援サービスという障害者の社会の受け皿となる福祉サービスなども紹介しながら細かく説明したつもりです。親としてこどものこれからの就労へと向かう全体像が、幾ばくかでも窺い知ることができたと思っていただけたならば私どもも望外な喜びです。
 尚、「障害者就労のためのQ&A」をご覧いただければ。より詳しく就労のために必要なことが書かれていますのでご覧ください。
障害者就労のためのQ&A

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