・介護福祉士とは?
介護福祉士とはどんな資格でしょうか。先ずは、介護福祉士の固めな定義から説明しましょう。
社会福祉士及び介護福祉士法(1987年5月26日制定、2007年12月5日改正)により定められた介護・福祉分野の国家資格です。法律では、「介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行う」と定義されています。しかし、資格制度創設後10年以上を経て、介護福祉士に求められる役割は大きく変化してきています。身の回りの世話をするだけの介護から、高齢者や障害者等の生き方や生活全体にかかわることで利用者の暮らしを支え、自立に向けた介護利用者や家族と共に実践することへと移り変わってきています。
さらに、2007年の法律改正の際には、 「社会福祉士又は介護福祉士は、社会福祉及び介護を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、相談援助又は介護等に関する知識及び技能の向上に努めなければならない」と質的向上の責務も加えられ、これからの介護福祉士は、国民の福祉サービスの充実・向上の中心的役割を担っている有資格者として、(1)豊かな感性、(2)洞察力・情報分析能力、(3)介護目標・計画の立案能力等が厳しく求められ、チームケアの一員として高い評価が得られるよう努力することが必要となってきています。
・介護福祉士になるには
厚生労働大臣の指定を受けた指定試験機関である指定登録機関の「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」が実施する「介護福祉士国家試験」(年1回実施)に合格又は養成施設を修了した者が所定の登録を受けることにより、介護福祉士の資格が取得することができます。また、この国家試験には、一定の受験資格要件があります。
【受験資格】
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*以下の注は第32回に於けるもの
(注1) 令和2年3月31日までに卒業する見込みの方を含みます。
(注2) 令和2年3月31日までに従事する見込みの方を含みます。
(注3) 令和元年12月31日までに修了する見込みの方を含みます。
詳しくは、(財)社会福祉振興・試験センターのHPを参照。
【合格基準】
◎筆記試験に関しては、次の2つの条件を満たした者を筆記試験の合格者とする。
ア 問題の総得点の60%程度を基準として、問題の難易度で補正した点数以上の得点の者。
[1] 人間の尊厳と自立、介護の基本 [2] 人間関係とコミュニケーション、コミュニケーション技術 [3] 社会の理解 [4] 生活支援技術 |
[5] 介護過程 [6] 発達と老化の理解 [7] 認知症の理解 |
[8] 障害の理解 [9] こころとからだのしくみ [10] 医療的ケア [11] 総合問題 |
(注)配点は、1問1点の125点満点である。
◎ 実技試験に関しては、課題の総得点の60%程度を基準として、課題の難易度で補正した点数以上の得点の者を実技試験の合格者とする。
【試験の方法】
(1)試験は、筆記と実技の二つ方法によって行われる。
出題は125問、そう試験時間は220分としている。
【受験手数料】
15,300円
*筆記試験地は34試験地
北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、岐阜県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県
*実技試験地は2試験地 東京都、大阪府
【これまでの受験者と合格者】
第31回 | 第30回 | 第29回 | 第28回 | 第27回 | 第26回 | 第25回 | |
受験者数 | 94,610 | 92,654 | 76,323 | 152,573 | 153,808 | 154,390 | 136,375 |
合格者数 | 69,736 | 65,574 | 55,031 | 88,300 | 93,760 | 99,689 | 87,797 |
合格率 | 73.7% | 70.8% | 72.1% | 57.9% | 61.0% | 64.6% | 64.4% |
・介護福祉士の仕事内容は?
介護福祉士の仕事とは、日常生活が困難な高齢者や身体・精神に障害のある人などに対して、食事や入浴、排泄などの身体介護を行います。また介護するだけでなく、周囲で介護をする家族などの人に対して、どのように介護をしていけばよいかという相談に乗ったり、アドバイスをしたりする役割も担います。介護福祉士の仕事内容を以下、大きく四つにまとめて説明します。
1.身体介護
食事・排泄・衣服の着脱、入浴をはじめとした身体の衛生管理(清拭、洗顔や歯磨き)などを行います。
そのほかベッドから車椅子への移乗や自動車への乗り降りや歩行補助、車いすでの移動などもあります。
とくに介護保険施設では、厚生労働省令の「施設及び設備に関する基準」に基づいて一週間に2回の入浴が定められ、入浴または清拭をしなければならないため、介護を行う上で重要な仕事となります。
日常生活でどんな動作が困難なのかは人によって異なるため、利用者がどんなことを望んでいるのかを考えながら、一人ひとりの自立度にあった介護を行うことが大切となります。
2.生活援助
食事(調理や配膳、下膳なども含む)・洗濯・掃除など室内の整理整頓、必要な買い物などの日常的な家事全般を援助します。特に、在宅介護では家事援助は重要です。
掃除の仕方や調理の方法など、その家によってやり方が異なるため、利用者やその家族に配慮して家事の援助をすることが必要になります。
利用者本人が、その人らしい生活を地域で送るために、どのような援助が必要なのかニーズをくみ取って援助します。
3.相談助言
介護を受ける対象者だけではなく、その家族など介護者も含め、生活・身体・介護に関しての相談にのったり、助言をしたりします。
そのためには、介護に関しての専門的な知識と技術が必要で、介護食の調理方法や、どんな福祉用具があるのかなど、介護を送る上で日常的に必要な介護の知識が要求されます。
4.社会活動援助
介護を受ける対象者は、社会的に孤立しがちなため、介護福祉士は家族や近隣の人たちとのよい対人関係が築けるように支援する役割があります。
また地域のサークル活動などの社会活動の情報提供などをして利用者の生きがいを共に探すことも求められます。
【介護福祉士の役割】
次に介護福祉士の社会的役割についてですが、介護福祉士は「社会福祉及び介護福祉士法」に基づく国家資格を持って働くことは先に述べた通りです。この法律では「誠実義務」「信用失落行為の禁止」「連携」「秘密保持義務」といった条項が定められており、介護福祉士はこれらを守って業務に当たらなくてはなりません。
「介護サービス提供者としての誇りを持ち、利用者一人ひとりの人権や自立を尊重し、その人に合う介護をすること」「業務を通じて知りえた秘密を漏らさないこと」などが明言されており、介護者側の勝手な判断で介護をすることなく、利用者やその家族に適した介護サービスを誠実に提供していくことが求められています。
介護福祉士と利用者との信頼関係はとても重要です。利用者とより良いコミュニケーションを築き、信頼関係を構築していくことによって安心してサービスを利用してもらうことができ、スムーズに介護を行うことが可能になります。そのために、介護福祉士はコミュニケーションスキルを向上させなくてはなりません。
言葉で上手く話せない高齢者の利用者とのコミュニケーションでは、身振りやボディタッチ、コミュニケーションボードやその人の関心のあるものなどの非言語的コミュニケーションを用いるなど、さまざまな工夫を行いながら、利用者と上手にコミュニケーションを図る姿勢が求められます。よって介護福祉士は、利用者の心身状態を適切に判断して臨機応変な介護をする必要があります。いつも同じ介護サービスを提供するのではなく、日々の利用者の変化に気付くことが大切です。そのためには「高齢者だから」「障害者だから」と一括りにせず、利用者ひとり一人に対して病状や経歴などの基本情報を確認し、関わりながら介護される人の知識を増やしていきます。病状・障害を知ること、自立度を知ること、性格やこだわり・好みを知ることなど普段から利用者に関心を持ち、何か気がついたことがあったときには、介護の知識や医療、栄養面、心理面など、介護福祉士として培った知識や経験などから問題を分析し、根拠を見出し対応します。高齢者で寝たきりの方が多く入居している施設や、介護度が重度の疾患者が多い病棟などで勤務する場合、利用者を看取り死亡処置を行うこともあります。医師が死亡を確認した後、看護師とともに家族にための準備を行うまさに「おくりびと」のような役割をすることもあります。
・介護福祉士に向いている人
人と触れ合うのが好きな人
介護福祉士は人間相手の仕事なので、人に接することや触れ合うことが好きな人が向いています。ただしどんなに人と接することが好きでも、実際に介護をしていくと利用者から怒られたり苦情を受けたりすることもあります。
介護の仕事をしていく上では、人と触れ合うことが好きなだけではなく、どんな人とでも笑顔で接することができるコミュニケーション能力がある人、なかなか難しいことではありますが自分の気持ちをうまくコントロールできる人が向いているといえます。
冷静に物事の判断ができる人
高齢者や障害者と接するときは、暖かい雰囲気でその人の話によく耳を傾けることが大切です。それと同時に、ただ寄り添うだけではなく、冷静に状況を判断しアドバイスしたり、客観的に物事を見つめたりする力が求められます。介護をしているとどうしても利用者やその家族に感情移入してしまいがちですが、介護のプロとしては常に冷静な判断が必要です。また急なケガや病気、トラブルが起きた際などには冷静かつ臨機応変に対応しなくてはならないため、常に落ち着いて物事を考えられる人が向いているでしょう。
思いやりの心
介護の仕事は、思いやりをもっていなくてはできません。利用者や家族の話しに耳を傾け、どんな助けを求めているのか、どんな痛みがあるのかなどを相手の気持ちに立って考えることが必要です。
とくにことばが不自由な人や認知症の人などは、うまくコミュニケーションを取れずに苦労する場面もありますが、そんなときでも想像力を働かせ「どう介助されたら楽に動けるか」「どんな風に接してもらうと嬉しいか」など相手の気持ちにたって考えられる人が介護の仕事には向いているでしょう。
体力
介護の仕事は入浴介助や体位変換など、体力も要求されます。
介護の仕事がきっかけで腰痛などに悩まされる人も少なくないため、肉体的にもタフであることや自分自身に対しても日常的なケアをすることが大切です。
・介護福祉士に向いていない人
介護福祉士の資格取得はあくまでも「通過点」または「スタート地点」でしかなく、実際に現場に立つと介護とは何かを常に考え、学び続け、実践し続けていかなくてはなりません。そのため、資格所得後も学びが必要となります。介護に関する見解や技術は日々進歩を続け、新しい考え方やより良い介護方法が次々と生み出されています。
介護福祉士は常に新しい情報にアンテナをはり、本を読んだり、研究会や勉強会に参加したりして、新しい知識や技術を吸収していかなければなりません。さらに、そうして得た知識や技術を、介護をしている家族や介護の仕事を志す後輩に向けて伝えていく力も必要となります。介護福祉士として働いていくためには、資格取得のための勉強の何倍もの勉強が必要になってくるため「資格を取得したから安心」と考えていては、現場で長く働いていくことは難しいでしょう。
・介護福祉士の活躍の場
【高齢者分野と障害者分野】
介護福祉士は大きく分けて、高齢者分野と障害者分野に分けられます。
高齢者分野の場合、老人保健施設をはじめとした介護施設がおもな就職先となり、特別養護老人ホームなどの入居型介護施設や訪問介護事業、デイサービスなどで働きます。障害者分野の場合は、身体障害者施設等の社会福祉施設で働きます。
【高齢者分野・居宅型サービス】
居宅型サービスは、現在の居宅に住んだまま介護を受けられるサービスです。介護福祉士は居宅サービスの事業所で訪問介護員(ホームヘルパー)として働くほか、「サービス提供責任者」といったホームヘルパーのリーダー的存在になって活躍することもできます。またデイサービスなどの通所サービスでも介護福祉士が働いています。
【高齢者分野・施設型サービス】
施設型サービスとは「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」「介護医療院」といった施設で介護サービスを行います。介護をする介護福祉士だけでなく、看護師や医師が常駐して療養上の管理や看護などのサービス、リハビリなどが行われるケースが多いです。
【高齢者分野・地域密着型サービス】
介護度が重くなっても、住み慣れた地域でいつまでも生活できるような介護サービスです。主に「グループホーム」があげられ、介護福祉士は主に認知症の利用者を対象に介護を行います。
【障害者分野】
介護福祉士は、高齢者だけではなく障害を持つ人にも介護を行います。
高齢者を対象とした「介護保険制度」があるように、障害者分野でも「障害者自立支援法」という制度があり、知的障害・身体障害などの障害種別によって、それぞれの人が暮らしやすいように介護サービスを利用しています。
グループホームで社会自立を目指して利用している人・障害があっても仕事をして就労支援を利用している人・施設サービスを利用している人など、個々の障害に応じてサービスを利用することができます。
【サービス提供責任者】
介護福祉士として現場で働くことはもちろんですが、「サービス提供責任者」として働く方法もあります。
ホームヘルパー事業を行う訪問介護事業所(ヘルパーステーション)では、利用者40人に対し、介護福祉士の資格を持つ「サービス提供責任者」を1名以上配置することが義務付けられています。
介護福祉士の有資格者であればサービス提供責任者となることができ、利用者の介護状況や自立に対する要望を話し合ったり、介護サービスに関するスタッフの管理を行ったりするなど、訪問介護事業を取り仕切る業務を行います。
【キャリアを積むことによって】
介護福祉士はキャリアを積んでいくことで、仕事の幅はさらに広がり、自分次第で活躍する場を作り出すことができます。たとえば、介護福祉士としての現場経験を生かして介護相談の仕事をしたり、デイサービスやヘルパーの会社の事業を開始したり、またホームヘルパー養成の講師や学校で介護教員をするなど、介護の現場で得られた経験や知識を生かす仕事をすることも可能です。なお、ヘルパーの養成や介護教員になるためには、介護福祉士の資格を持ち、5年以上の経験が要件となり、また介護教員の場合は、「介護教員講習会修了書」が必要になります。