A.4 就労継続支援とは、何らかの理由で一般就労が難しい方、就労移行支援を利用したが残念ながら就職に結びつかなかった方などが、利用できる就労支援サービスです。事業所での職業訓練や企業から委託された生産作業を通じ、働くための知識や技能を高め、一般就労を目指すものです。
事業所で行われる生産作業に対しては、報酬も支払われます。就労移行支援と比べると、長い時間をかけて働く準備ができます。就労継続支援事業所には、A型とB型があります。また事業所によって作業内容は異なります。A型とB型の2つの就労継続支援サービスについて以下、説明します。
【就労継続支援A型】
就労継続支援A型とは、障がいや難病のある方が雇用契約を結んで一定の支援のある職場で働くことができる就労支援サービスです。勤務形態は事業所によってさまざまですが、1日の実労働時間は4時間~8時間程です。仕事内容としては、カフェやレストランのホールスタッフ、パソコンによるデータ入力作業、パッキングやラッピングなど業務は多岐に及びます。障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつであり、現時点では一般企業の就労が難しい65歳未満の方に、一定の支援のある環境で継続して働けるような職場を提供しています。
利用者はA型事業所との間で雇用契約を結ぶので、基本的には最低賃金以上の給料が貰えます。厚生労働省の社会福祉施設等調査ではA型事業所は2020年時点で2,623事業所、利用者は46,446人です。
就労継続支援A型で働くためには「選考」と「市区町村での申請」の二段階の手続きを経る必要があります。A型事業所の求人は、市区町村の障害福祉窓口やハローワークなどで検索・紹介してもらえます。応募したい事業所を見つけたら、履歴書を送り、見学や体験、面接などの「選考」を受けます。
「選考」の結果、無事採用が決まったら、次は市区町村の障害福祉窓口(生活支援窓口)に行き就労継続支援A型のサービス利用を申し込みます。申し込みの際には、どのサービスをどのように利用するかを説明する「サービス等利用計画案」を作成する必要があります。採用内定後、市区町村の障害福祉窓口(生活支援窓口)で調査員による生活状況などの聞き取り調査を受け、サービス等利用計画案を作成、受給者証が発行されて勤務開始となります。
事業所に見学に行った際、具体的な仕事や業務内容を確認して下さい。この時、自分の得意な事や興味のある仕事、自分の障害についてPRをしておくことも大切なことです。仕事内容は事業所によって異なります。例えば、「カフェ・スタッフ」と言っても接客業と調理場とでは業務としては大きな違いがあるのは言うまでもありません。自分のことを詳しく話せば、より自分に見合った仕事を用意してくれることもあります。
またそこで働く利用者の様子や、利用者をサポートする職員の人数なども事業所を決めるポイントとなるはずです。忙しすぎたり、時間に余裕がありすぎたりすることもストレスになる場合があります。それと給与について話すことも忘れてはなりません。お金について話すことは気が引けて、がめついとか、下品とか、先入観をもたれてしまうのでは、などと思えてなかなか話題にしにくいかもしれませんが、給料は働く意欲を支える大事な要素です。自分の能力がどのように給料に反映されるのか、しっかり確認するようにして下さい。
また就労継続支援A型の事業所では、利用者と事業所の合意した場合にかぎって、最低賃金を下回る給料(最低賃金の減額特例)での雇用が認められる場合があります。
最低賃金の減額特例が認められるのは
① 精神又は身体の障がいにより著しく労働能力の低い者
② お試し使用期間中の者
③ 基礎的な技能及び知識を習得させるための職業訓練を受ける者
④ 軽易な業務に従事する者
⑤ 断続的労働に従事する者
② お試し使用期間中の者
③ 基礎的な技能及び知識を習得させるための職業訓練を受ける者
④ 軽易な業務に従事する者
⑤ 断続的労働に従事する者
などが対象者となります。この制度を利用するためには「都道府県労働局長の許可」が必要となるので、特例であることを知っておいてください。もし「許可」なく、勝手な判断で最低賃金を下回る賃金で働かせると、最低賃金法違反となり法的な制裁を事業所が受けることになります。それだけシビアな特例でもあるのです。
もし給料が最低賃金を下回る場合は、雇用契約を結ぶ前、その根拠についての説明を受け、納得したうえで働くことが大切です。
【就労継続支援B型】
就労継続支援B型とは、障がいや難病がある方のうち、年齢や体力などの理由から、企業等で雇用契約を結んで働くことが困難な方が、軽作業などの就労訓練を行うことができる障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。比較的簡単な軽作業を短時間から行うことが可能です。年齢制限はなく、障がいや体調に合わせて自分のペースで働くことができ、就労に関する能力の向上が期待できる支援サービスです。
就労継続支援B型の事業所と利用者は雇用契約を結ばないため、賃金ではなく、生産物やサービスに対する成果報酬である「工賃」が支払われます。厚生労働省の社会福祉施設等調査によるとB型事業所は2020年時点では9,176の事業所があり、利用者は193,508人です。
就労継続支援B型の事業所を利用したいと望まれるなら、先ずは自分の住んでいる市区町村の障害福祉窓口かハローワークへ相談に行くか、WEBサイトで検索してみて下さい。どんなB型事業所があるのか情報を集めることから始めてみて下さい。通院している場合は、病院やクリニックがおすすめの事業所を紹介してくれる場合もあります。
その上で気になる事業所があれば見学を申し込んでみて下さい。面談や体験利用をさせてくれる事業所もあるので、実際の作業内容や働く環境の雰囲気を掴んで利用するかどうか決められます。
通いたい事業所が決まったら、市区町村の障害福祉窓口で利用を申し込んで下さい。申し込みの際には、どのサービスをどのように利用するかを説明する「サービス等利用計画案」を作成する必要があります。
就労継続支援B型の事業所での作業を通して得られる工賃は、事業所に通うごとに「1日、1,000円」のように決められた金額がもらえる場合と、作業により生産された製品やサービスの出来高によって支払われる場合とがあります。B型事業所では利用者と雇用契約を結ばないため、法律で定められた最低賃金によらず、工賃は最低賃金を下回ることがほとんどです。
厚生労働省の調査によれば、2017年の平均月額工賃は1万5603円です。時間給になおすと205円となり、同年度の最低平均賃金額の844円を下回っています。ただし、近年、各都道府県において工賃アップの取り組みが行われており、2006年度の平均1万2222円から徐々に月額工賃は上がる傾向にあります。
作業内は事業所によって異なりますので、どんな作業のどの工程を担当することになるのかは、実際に事業所に見学に行った際に確認するようにして下さい。事業所によっては、数日間の実習を体験させてくれるところもあるので、そこで自分の技能やペースと合っているか確認して下さい。
特性や自身の健康状態によっては、通勤で体力を消耗したり、数時間の勤務でも疲れたりすることがあります。また、定期・不定期に通院の必要がある方もいるでしょう。そういった場合に、柔軟に働けるのがB型事業所の特徴です。無理のない範囲での通勤時間・日数を伝えて、どこまで受け入れてもらえるのか相談してみて下さい。
またそこで働く利用者の様子や、利用者をサポートする職員の人数なども事業所を決めるポイントとなるはずです。忙しすぎたり、時間に余裕がありすぎたりするのもストレスになる場合があります。いずれにしても自分のペースで働ける雰囲気かどうかを自分の目で見て、考え、判断することが何よりです。
以上のように就労継続支援にはA型とB型があり、 どちらが自分に適した就労支援サービスかを間違わぬよう選択をするようにして下さい。