A3 パーソナリティ障害の診断治療は、医師による病症診断及び精神療法(心理療法)が重要な役割を担います。
精神療法は、患者が治療者と協力して、問題への認識を深め、それへの対処法を築き上げ、自分の思いや気持ちを整える、といった作業を進めることによって克服しようとする治療法です。
取り扱われる問題は多様なものになるので、さまざまな治療アプローチが組み合わされて用いられることがあります。そして多くの場合、それらの治療アプローチをしばらく積み重ねることが必要になります。
欧米では、比較的短期間の集中的治療によって大きな成果を得ることができる精神療法プログラムがいくつも開発されています。しかしそれらの治療は、医療経済的な事情などから、わが国ではまだ十分普及していません。しかし、日常生活の中で対処法を積み重ねること、さまざまな精神療法の技法を組み合わせることで、十分に改善を期待することができます。
薬物療法も症状の一部を緩和する効果があります。
薬物療法は、実施している期間しか有効でないなどの限界はありますが、問題をしばらく抑えることができるだけでも、患者に大きなメリットをもたらすことができます。
従来の薬物療法についてまとめると……
- 統合失調型パーソナリティ障害などの受動的なタイプには、少量の抗精神病薬
- 境界性、反社会性パーソナリティ障害の衝動性や感情不安定には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や気分安定薬(双極性障害の治療薬)
- 回避性パーソナリティ障害の不安や抑うつには、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)
- さらに最近では、境界性、統合失調型、反社会性パーソナリティ障害に対する非定型抗精神病薬の有効性が確認されています。ただし、これらの薬物療法は有効性が示されていますが、精神療法などとの併用の必要があります。