A3 統合失調症の治療は、薬物療法が基本です。しかし、さらに治療効果を高めるには、薬物療法にリハビリテーション(心理教育、生活技能訓練SST)、作業療法や、家族技能訓練(家族教育プログラムなど)を組み合わせた方が効果的なのがわかってきています。つまり、薬だけでなく、患者さんの生活能力や、患者さんを支える家族のケア能力を高め、一緒に組み合わせることで、治療効果が向上することがわかってきています。
詳しく項目ごとにまとめると以下のようになります。
治療の目的
・幻覚や妄想などの症状を軽くする
・記憶や注意などの障害によって社会生活機能が低下するのを防ぐ
・回復後は再発しないように維持する
治療の方法
薬物療法と心理社会的な治療は車の両輪のようにどちらも重要で、組み合わせて行なわれます。
薬物療法
おもに使われる薬
抗精神病薬(中心となる症状を抑える)
補助的に使われる薬
抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬
薬はいつまで続けるのか
薬をいつまで続けるのかは、個人差があり一口にはいえません。症状の安定をみながら、減量や中止をはかっていきますが、その判断は専門医でなくては難しいものです。
再発をくりかえすことが多い疾患なので、しばらく症状が安定しているからといって自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、再発を誘発して重症化の危険を高めます。「副作用がつらい」「薬をやめたい、減らしたい」などの悩みがあれば、医師に相談しましょう。
心理社会的な治療
病気の自己管理の方法を身につけたり、社会生活機能のレベル低下を防ぐ訓練などを行うもので、精神療法やリハビリテーションが含まれます。病状や生活の状態に合わせて、様々な方法が用いられます。
(例)
心理教育……病気や治療に関する知識を身につけて、対処法を学ぶ
生活技能訓練(SST)……ロールプレイ等を通じて、社会生活や対人関係のスキルを回復する訓練を行う
作業療法……園芸、料理、木工などの軽作業を通じて、生活機能の回復を目指す
統合失調症は、よく治療不能の病気と思われていますが、実際に治療は可能です。しかし、治癒する(症状の原因が永久になくなる)わけではありません。
統合失調症の治療とは、症状をうまく調節するためのものです。統合失調症は、はっきりした病因が判明していないため、治癒を目ざすことは、現段階では難しい病気です。なので、いまは、よりよい治療法を求めていくしかありませんが、このような病気は他にもあります。例えば糖尿病がそうです。糖尿病と統合失調症には、多くの共通点があります。小児と成人のタイプがあるところ、病因は複数が考えられるところ、経過中に再発と寛解を繰り返すところや薬によって、病状をコントロールできるところも似ています。