A3 適応障害の場合、その原因となっている環境が明確なため、その環境から離れることができれば症状は軽快していきます。しかし、離れることが難しいからこそ悩んでいる人が多いわけで、話はそう単純ではありません。
環境の変化というのは、人生において避けては通れないものです。現在の仕事が大きなストレスになって心身に変調がおこっているとして、その仕事を離れられればとりあえずは元気になれるかもしれませんが、こんどは転属や転職という新たなストレス要因が待っています。
ですから適応障害を治療するためには、まずは現段階の状態を冷静に見極め、何がどうストレスになっているかに向き合う必要があります。そして、現状で改善できそうなことから取り組み、自分自身のストレスを上手くコントロールし、環境を調整していく方法を考えていくことが大切です。
適応障害は、「自分と環境のギャップが大きくて強いストレスがかかっている状態」です。まずは客観的に整理をしなくては、自分にとって適切な環境を選んだり、ストレスに対処したりすることは難しいと言えます。そのため適応障害の治療は、医師とともに現状を客観視し、問題を整理して解決策に1つずつ取り組んでいきます。
それを自分の力だけで行うのはとても大変なことです。不眠や不安が病的に強くなってしまっている状態では、冷静な判断をすることもできません。そういうときは薬の力を借り、少し落ち着きを取り戻すことも有効な手段となります。
心身の状態が深刻に追いつめられているとき、薬を使って症状をやわらげることは、治療のためには有効な手段の1つです。
薬は、そのときにおこっている苦痛な症状をやわらげるものを処方していきますが、それが適応障害の根本的な治療になるわけではありません。
適応障害は、自分と環境との折り合い方法を探し、実際に行動していくことが治療の柱となり、薬はそのための助けとして使います。心身が楽になると現実的な問題に向き合いやすくなります。物事のとらえ方が変わり、現実的な解決につながっていくこともあります。
薬に対して不安に思われる方も少なくありませんが、適切に使用すればメリットは大きいです。むやみに依存してしまうものでもなく、副作用も一時的なものがほとんどです。
適応障害では、一時的に症状を落ち着けるために使われることが多く、落ち着いてきたらお薬を減らしていくこともできます。
不安や緊張が強い時は、抗不安薬(精神安定剤)。抑うつが強い時は、抗うつ剤。不眠が見られる時は、睡眠薬。イライラが強い時は、漢方薬や気分安定薬、抗精神病薬。症状が長期化する場合など診察しながら処方します。