A1 発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などが含まれます。これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。同じ人に、いくつかのタイプの発達障害があることも珍しくなく、そのため、同じ障害がある人同士でもまったく似ていないように見えることがあります。個人差がとても大きいという点が、「発達障害」の特徴といえるかもしれません。以下、主な障害分類を紹介します。
自閉症スペクトラム障害
現在の国際的診断基準の診断カテゴリーである広汎性発達障害(PDD)とほぼ同じ群を指しており、自閉症、アスペルガー症候群、そのほかの広汎性発達障害が含まれます。症状の《強さ》に従って、いくつかの診断名に分類されますが、本質的には同じ1つの障害単位だと考えられています(スペクトラムとは「連続体」の意味です)。
自閉症スペクトラム障害に分類される自閉症は、言葉の発達が遅れるほか、コミュニケーションをうまく取れない、良好な対人関係の構築が難しい、社会性に欠ける、特定の物事に対する強いこだわり、行動のパターン化などがみられます。いずれかの症状が3歳までに現れると言われています。また、知的障害を伴うこともあれば、知能に遅れがみられない場合もあるなど様々です。自閉症の子供は、目を合わせない、1人遊びを好む、かんしゃくを起こすことが多い、表情の変化に乏しい、名前を読んでもこちらを向かない、ほかの子供に興味がないなどの特徴がみられます。
自閉症スペクトラム障害の人は、最近では約100人に1〜2人存在すると報告されています。男性は女性より数倍多く、一家族に何人か存在することもあります。
アスペルガー症候群
アスペルガー症候群は、比較的症状が軽度の自閉症として扱われています。そのため、自閉症と同様に対人関係に障害がみられます。また、強いこだわり、趣味や活動のパターン化がみられます。言葉の発達の遅れがないところは自閉症とは違います。また、知的障害を伴うケースもほとんどないといわれています。アスペルガー症候群の子どもは、集団で遊ぶより1人で遊ぶことを好み、その遊びをくり返す傾向があります。
注意欠如・多動性障害(ADHD)
ADHDとは、不注意、多動性、衝動性がみられる発達障害のひとつです。思いついたらすぐ行動に移したり、授業中でも席を立ったり歩き回ったりしてしまうことが特徴です。また、ADHDの子どもは、外からの刺激だけでなく、中からの刺激にも反応してしまいます。こんなことをしてみたい、これを動かしてみたいといった欲求に対して、抑制が効かず、すぐに行動に移してしまいます。発達年齢に見合わない多動・衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が、7歳までに現れます。学童期の子どもには3〜7%存在し、男性は女性より数倍多いと報告されています。男性の有病率は青年期には低くなりますが、女性の有病率は年齢を重ねても変化しないと報告されています。
学習障害(LD)
全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみがとりわけ難しい状態を言います。単語ごとに文節を区切って読んだり、勝手に文末の言葉を変えて読んだりするなど、症状は多種多彩です。読字障害(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)、算数障害(ディスカリキュリア)などに分類されます。有病率は、確認の方法にもよりますが2〜10%と見積もられており、読みの困難については、男性が女性より数倍多いと報告されています。
発達障害の症状によって、更なる問題が起こる場合があります。これを二次障害といい、対人関係を構築できないためにまわりに馴染めず、不登校になったり、暴力をふるったりすることなどが挙げられます。発達障害を早期に発見して、適切に発達支援をすることが二次障害の予防に役立つと考えられています。