A1 いきなり四大認知症に入る前に、認知症の基本的考え方を抑えた上で、四つの認知症の特徴を確認し、簡単な予防法を記します。
認知症は「脳の病気」です。加齢が危険因子の1つでもあるので誰でも発症する可能性があります。症状が進行すると、物忘れなどにより新しい環境に慣れることができず、常に不安と向きあわねばなりません。さらに、「時間」・「場所」・「人」の認識が難しくなります。その結果24時間365日不安との戦いを強いられ、解決しようと努力するものの、うまく対処できず、徘徊をはじめ暴言、もの盗られ妄想などの行動面や心理面の症状が頻発します。
認知症にはさまざまな症状がありますが、代表的な四大認知症のそれぞれの違いを明確にするよう心がけ紹介します。
1 アルツハイマー型認知症
比較的に進行は穏やかであるが、初期の段階から記銘力(新しい経験をし、覚え込むこと)が低下します。症状は下記の通りです。
[軽度]
・年月日がわからなくなる
・買い物時に支払いがまくできなくなる
・不必要な買い物をしてしまう
[中度]
・場所の認識ができなくなり、迷子になりやすい
・季節にあった服が選べなくなる
・行動・心理症状が出易くなる(動き回る、暴言を吐くなど)
[重度]
・被害妄想や幻覚などが出現する
・身近な人がわからなくなる
・身体機能の低下にともない、全ての生活に介護が必要となる
2 前頭側頭型認知症
前頭葉に異常が起こるとおもに人格に変化が生じ、側頭葉に異常がおこると記憶障害が現れます。初期段階では物忘れなど、記憶障害のようなものは現れにくい。症状は下記の通りです。
- 着る物や身だしなみに無頓着になり、不潔でも平気でいる
- 毎日同じものを食べ続ける
- 落ち着きがなくなる
- 自発的な会話が少なくなる
- すぐ興奮状態になりやすく、暴力を振るったりする
- 悪気なく他人のものを取ったり食べたりする
3 レビー小体型認知症
初期症状には「幻視」がみられることが多いです。パーキンソン症状(動作開始困難、筋肉が硬くなるなどの運動症状)が加わる場合がかなりの確率である。症状は下記の通りです。
- 幻視を訴える
- 睡眠障害がある
- 便秘、血圧変動、失禁、性的機能障害など自律神経機能障害がある
- 一日のうちで症状の変動が激しい
- パーキンソン症状を認めることができる
- 転倒しやすくなる
4 脳血管性認知症
脳梗塞を発症した人が最も多く、脳血管性認知症の原因の多くを占めます。症状は下記の通りです。
- 片麻痺
- 意欲や自発性低下
- 歩行障害
- 頻尿、尿失禁
- 構音障害(声を上手に出せない)
- 嚥下障害(食べ物をのみ込めない)
認知症は、一度かかると治らないといわれています。だからこそ予防が大切です。予防法としては、三つの方法があげられます。
① 「身体の運動」による予防
有酸素運動や、ながら運動は認知機能の改善に特に効果が期待できます。
② 「生活習慣」による予防
糖尿病などの生活習慣病の予防は、発症の抑制につながります。
③ 「頭の運動」による予防
ゲームやパズルなどの考える活動は認知機能向上に最適です。人との交流が認知症の予防になるという報告もあり、運動やゲームをしながら人と交流できれば尚よいといえます。
若くても脳血管障害や若年性アルツハイマー病のために認知症を発症する場合があります。65歳未満で発症した認知症を「若年性認知症」といいます。若年性認知症の患者数は筑波大学大学院人間総合科学研究科の調査によると3.78万人と推計されています。
認知症ほどではないが、正常な「もの忘れ」よりも記憶などの能力が低下している「軽度認知障害」が最近注目されています。軽度認知障害のすべての人が認知症になるわけではありませんが、この段階から治療を開始することで、認知症の進行を遅れさせることなどの効果が期待されています。
認知症でなさそうだと思っても、もの忘れの程度がほかの同年齢の人に比べてやや強いと感じたら、念のために専門医を受診することで早期発見、早期治療に繋がります。