A2 うつ病になるのは、もともとの性格や考え方の傾向、環境などのストレスに加え、体質・脳内にある物質の変化も関係しているといわれています。
うつ病がなぜ起こるのかという、その原因や発症メカニズムについては、まだはっきりしたことはわかっていません。しかし、これまでの研究から脳の中で感情をコントロールしている物質(神経伝達物質)のバランスが崩れてしまうことが原因のひとつだと考えられています。
私たちの脳は、無数の神経細胞で構成されています。これらの神経細胞は、「神経伝達物質」という物質を介してさまざまな情報を伝え合い、複雑な働きを担っています。ところが、ストレスを抱えていたり、心身ともに疲れている状態が続いたりすると、この神経伝達物質の量や働きも十分ではなくなってきます。なかでも、意欲や気分を調整する「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といった神経伝達物質が十分に機能しなくなると、感情をうまくコントロールできなくなって、うつ状態に陥ってしまうといわれています。
つまり、うつ病とは“精神的・肉体的疲労が続いていくうちに脳の中の「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といった神経伝達物質の働きに異常を来してしまい、そのためにさまざまな症状が出現する病気”なのです。
また、うつ病の発症には、もともとの性格や考え方の傾向、あるいは環境(ストレスの状態)なども深く関わっているといわれています。
うつ病になりやすい性格や考え方の傾向
よく言われているのが、まじめで責任感が強く、人当りも良く、周囲の評価が高い人がうつ病には多いようです。このようなタイプの人は自分の許容量を超えて頑張りすぎたり、ストレスをため込んだりしてしまうため、こころのバランスを崩し易いと言えます。
以下、3つの気質として紹介します。
循環気質
元気な躁状態と抑うつ状態を繰り返す双極性うつ病になりやすいタイプで、社交的、善良、親切で親しみやすい反面、激しやすいという面をもっています。
執着気質
義務感が強く、仕事熱心、完璧主義、几帳面、正直、凝り性などの特徴があります。仕事の質は高いのですが、量がこなせません。仕事を一生懸命完成さるために軽い興奮状態が続いたあと、ガクッときて、抑うつ状態に陥りやすいタイプです。また二者択一的で白か黒か、ゼロか100かという結果を決めつけたがり、優先順位をつけられないタイプでもあります。
メランコリー親和型気質
常識を重んじ、常に他人に配慮を忘れず、円満な関係を保とうとし、自己の性格だけでなく、他との関係も重視するタイプです。そのため他人の評価が大変気になり、いったん何か問題が起きると、悲観的になって、すべて自分の責任だと考えるタイプでもあります。
※またデータによると男性よりも女性の方がうつ病になりやすいとされていますが、これは女性のほうが受診する患者さんの数が多いことに加え、出産や月経など女性特有のからだの特徴や生活で起こりうるさまざまな出来事なども理由になっているようです。さらに、高齢者がうつ病になりやすいのは、配偶者との死別や、社会的孤立など、環境的にうつ病になりやすい要因がたくさんあるためです。
環境(ストレスの状態)
次に環境によるストレスとは、どのようなことを指すのか記しておきます。
- 幼小児期の厳しい体験
- 家族や親しい人の死亡
- 仕事や財産の喪失
- 人間関係のトラブル
- 家庭内不和
- 就職や退職、転勤、結婚や離婚
- 妊娠、育児、引越しなど環境の変化