A4 地域の学校で教育を受ける、このインクルーシブ教育にも、現状ではもちろんメリットとデメリットがあります。
ほんの数年前まで障害者は社会から隔離され、障害者だけの集まりという狭い社会の中で生活してきました。それはその障害に特化した専門家の下で専門の教育を受けることができ、障害に理解がある人が周りにいる環境でのびのびと過ごすことができるというメリットもありました。一方、近年では障害のある人が地域の学校で教育を受けたいというニーズが高まってきています。このように障害の有無に関係なく、地域や社会全体で一緒に教育を受けることをインテグレーションやインクルーシブ教育と言います。
地域の学校で教育を受ける、このインクルーシブ教育にも、現状ではもちろんメリットとデメリットがあります。障害を持つこどもたちが得られるメリットは、今まで受けられなかった教育が受けられることや、自分が生活する地域の学校に通うことができます。また周囲のこどもたちにとっては障害のある子と接することで、共生社会への理解を深められることなどがあげられます。逆にデメリットとしては、障害に理解のないこどもによるいじめの被害など、また周囲のこどもたちにとっても、障害のあるこどもたちに合わせて、授業が遅れる場合があるといったことが懸念されるでしょう。
障害のあるこどもを持つ親にとって、自分のこどもにインクルーシブ教育を受けさせるか、特別支援教育を受けさせるか、つまり地域の学校に通わせるか、特別支援学校に通わせるかを決めることは簡単なことではありません。またこどもの特性や障害の重度によって、インクルーシブ教育が合っているこどもと特別支援教育の方が合っているこどもに分かれます。こどもの教育体制を決める場合、特別支援学校や地元の学校の職員とよく話し合い、両方の特性をうまく取り入れた教育をすることが望ましいといえるでしょう。
ゆくゆくはインクルーシブ教育の環境が整備され、インテグレーションがこどもたちの当たり前の権利となり、障害のあるなしに関わらず共に学びあう中で、地域でのつながりの基礎を築いてゆくようになることが目指されねばならないのは言うまでもありません。