Q3 では性同一性障害とみるよりトランスジェンダーと見た方がよいように思われますが?

A3 性同一性障害(GID)とは医学的用語であり、トランスジェンダーは性不一致を自認した人の心理的・社会的な呼称です。現在、性同一性障害を名乗る人は、医療処置を望む人が特に自認する呼称となっており、トランスジェンダーは医療処置を望まず権利・人権を求める人や医療診断を受けていない人などの呼称となっているのが現状です。

今年、WHOでも性同一性障害(GID)が精神疾患から正式に外されたことは大きな転換となりました。WHOは性同一性障害を「精神障害」の分類から除外し、「性別不合」へと変更することに関して、「障害と分類されなくても、当事者が望めば性別適合手術などの医療行為を受ける権利は保障されるべきだ」としています。WHOで「国際疾病分類」を担当するロバート・ヤコブ氏は、「性同一性障害は精神的な病気でも身体的な病気でもないとわれわれが考えるようになることは、社会にとって強いサインになるだろう」と述べ、その意義を強調しました。そして、「障害という項目から外すことによって、これからは『性別不合』と呼ばれる人たちがこれまで着せられてきた汚名を返上することにつながる」と述べ、今回の変更によって、これまで「性同一性障害」の人たちが受けてきた差別が解消されることに期待を示しました。因みに、デンマークの代表は「精神障害の分類から除外したことは、あらゆる人たちが尊厳のある生活を送ることにつながる大きな一歩だ」と述べ、今回の変更を歓迎しています。

よって、これからは大きな括りとしてトランスジェンダーという呼称がより一般化し、性同一性障害という呼称は、医学用語としてのみ使われてゆくようになるのではないかと思われます。また、トランスジェンダーという呼称につきまとう政治的ニュアンスを嫌い、「国際疾病分類」最新版(ICD-11)の分類に倣い「Gender Incongruence性別不合」と言う人も増えるかもしれません。

これらのことは多くの人にとっては単なる言い方ではありますが、言い方にも他者に対する認識や意識の違いが自然と表現されものです。今後、性同一性障害という言葉の使用に関しては注意が必要となります。

 今回のWHOの決定を受けて、日本で今後、戸籍上の性別変更を望む当事者の扱いがどう変わっていくのかは、いまだ未知数です。

性同一性障害特例法の名称や内容を修正するのか、新しい「性別不合」の考え方のもとで法律を作り直すのか、これも現段階では明確に言うことは不可能です。

 一部、これで手術が受けられなくなると誤解されている方がいるようですが、WHOが述べているように、当事者が望めば性別適合手術などの医療行為を受ける権利は保障されるべきです(今回の変更は「脱精神病化」の達成であり、「脱医療化」ではないからです)。  同時に、「断種」の手術を強制する現状が改善されること、未婚であることなどの要件の廃止、ホルモン治療への保険適用なども期待されるところです。







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