A5 周囲の人がまず留意することは、普段のその人との関係を基本とするべきです。特別に構えることは必要ありません。
もちろん、過剰な反応が見られる時は刺激にならないようにする、調子が悪い時はいたわりの気持ちで接する、関わりを求めている時は負担にならない範囲で関わるといったことは必要です。
パーソナリティ障害の問題への対応は長くなることが多いので、長期的視点から見て持続可能な関わり方の形を作ってゆくことが大切です。その際、関わり方が社会で一般的なものかどうかは、そこで無理が生じるかどうかをチェックする大事なポイントになるでしょう。もしもその人との関わりが、負担が大きすぎると感じられたなら、別に相談できる人やサポーターを捜すことは一つの重要な対応法となります。
社会的に容認できない行動が見られた時には、それをしないように忠告するといった一般的な対応をするべきですが、すでに警告がなされていたり、処罰が行われたりしているのなら、追い打ちをかけるようなことは避けるべきでしょう。相手を傷つけないように、同時に自分が傷つかないようにという一般的な原則は守られなければなりません。
周囲の人々に理解していただきたいのは、その人が自分の問題に本格的に取り組むまでに準備期間を長くとらなければならない場合があるということです。その人が問題に取り組もうとする意欲が長いこと欠けていたとしても、悩んだ末に自分から精神科治療を求めるようになることは珍しいことではありません。治療が始まっていない段階でも、その人は問題解決のための準備を進めていると考えるべきでしょう。焦って治療を無理に勧めるのは、よい結果を生まないことが多いようです。むしろこの時期には、周囲の人々は、その人がじっくり考えることができるように配慮して下さい。 ともあれ、周囲にいる人々が、その人に対する愛情、親しみ、友情など、長い時間培われた結びつきを大事にして関わることで、よい成果を産みだすことができます。