A1 パーソナリティ障害の基本的な特徴は、認知・行動特性の著しい偏りということにあります。従来からその特性は、一般的な特性(平均値)からの違いが著しいものであり、言い換えるなら、一般の人々との間に本質的な違いはないけれども、程度の差が特に大きいという性質のものであると理解されています。
従来の定義では、パーソナリティ(性格)とパーソナリティ障害の関係は明確にされていませんでした。その結果、名称からの単純な憶測によって、パーソナリティ障害は「パーソナリティ」の障害だと誤解される恐れがあり、それを「性格が悪いこと」とか「回復が難しいもの」と見る向きがありました(それは、パーソナリティ障害を人格障害と呼んでいた頃から、日本語につきまとう問題でした)。しかし、この障害は決して性格の問題ではありませんし、十分に改善することが期待できる障害です。なお、2013年に刊行された米国精神医学会の診断基準(DSM-5)に収載されている診断基準の一つでは、パーソナリティ障害が「パーソナリティ機能の減損」であると明快に定義されています。果たしてこの定義でこれらの言葉にまつわる先入観が払拭できたかどうかは、定かではではないが……。
パーソナリティ障害には、様々なタイプに分類することができます。
[A群クラスター:奇妙で風変わりであることが特徴]
[B群クラスター:演技的・感情的で、移り気であることが特徴]
[C群クラスター:不安で内向的であることが特徴]
※現在の世界保健機構(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)の診断基準でもほぼ同じ分類が採用されています。両者の相違点は、ICD-10の不安性パーソナリティ障害、情緒不安性パーソナリティ障害境界型が、ここで言う回避性パーソナリティ障害、境界性パーソナリティ障害にそれぞれ対応しています。ICD-10では統合失調型パーソナリティ障害がパーソナリティ障害でなく、統合失調型障害として精神病性障害に分類されています。