A5 適応障害とうつ病にどのような違いがあるか以下、簡単に紹介します。
実際、適応障害かうつ病かどうかは、原因や症状の経過から判断していくことが多いです。
[適応障害]
・環境変化によるストレスと明かに因果関係がある。
・ストレスがなくなれば、症状もよくなる。
[うつ病]
・ストレスが持続的にかかって、少しずつ悪化していく
・ストレスがなくなっても、すぐに良くならないことが多い
このような特徴の違いは、それぞれの病気の本質的な違いが表れています。
適応障害
本人と環境のギャップが原因という、心理的な要因が大きな心因性の病気である。
うつ病
ストレスの蓄積の結果、脳の機能的な異常が大きな要因となっている内因性の病気である。
心因性か内因性かという考え方は、国際的な診断基準が作られる以前の古典的な考え方ではありますが、治療に当たっては非常に重要なポイントです。機能的な問題であれば、お薬をちゃんと使っていく必要があります。
このように本質的な原因を考えたときに、たとえ環境変化が原因であっても、適応障害として診断をしないこともあります。
例えば、月の残業100時間越えのような状況で2か月して調子を崩し、うつ病の一歩手前の状態の場合は、脳の機能的な異常が生じている可能性もあるのです。このような場合、「抑うつ状態」や「小うつ病(minor depression)」などと診断することもあることを覚えておいて下さい。
参考:DSM-5*
*「DMS-5」とは、2013年にアメリカ精神医学会が発表した「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 5th Edition 」のことであり、わが国では2014年に日本精神神経学会の翻訳により「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」として医学書院から刊行された。精神医学、臨床心理学、精神保健、社会福祉などの分野では知らない人はいないといえる、各種精神疾患(精神障がい)の診断のための国際的なバイブルである。