・チャレンジ雇用の背景
「チャレンジ雇用」のことを知る上で、重要だと思われるのは「障害者雇用率制度」のことです。「障害者雇用率制度」とは、従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務が生じる制度です。2024年4月からは(障害者雇用促進法43条第1項)民間企業の法定雇用率は2.5%、これは従業員数を40.0人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければならないことになります。また、これは民間企業のみに適応するものではなく、国、地方公共団体、都道府県の教育委員会にも適応され、2024年4月からは、それぞれ、国、地方公共団体は2.8%、都道府県等の教育委員会は2.7%と民間企業より雇用率は高く設定されております。
こうした障害者にかかる法整備は、障害者権利条約が根拠になっており、2006年に国連で採択、2008年に発行され、日本では2014年に批准し、効力が発生するようになっています。
・チャレンジ雇用のポイント
この障害者雇用促進法の中で、「チャレンジ雇用」の推進、拡大が打ち出されており、各省庁・各自治体でこの制度を利用した求人が現状増えています。
「チャレンジ雇用」の対象者は、勤務先の募集によって違いはありますが、チャレンジ雇用の目的は、今まで就職経験がない人にも一般企業で働く機会を作ることが含まれているので、基本的に働いた経験がない、または軽度な知的障害者や精神障害者を対象としていることが多いようです。また、働くことに不安があっても、この「チャレンジ雇用」を活用して、一般企業での就職希望している人が対象となります。「チャレンジ雇用」は、雇用の1〜3年の期間内で、一般企業への雇用にむけての経験を積みます。
「チャレンジ雇用」の業務内容は、都道府県庁や市区町村役所、また県立高校での「事務補助」の求人が出ていることが多いです。具体的には、事務補助的な仕事やバックヤード的な業務、メールの仕分けや配達などの軽作業、パソコンを使ってのデータ入力や資料作成などの事務的な仕事などです。また、職場によっては、環境整備業務として、清掃や施設管理などの仕事をすることもあります。
・チャレンジ雇用とトライアル雇用の違い
障害者雇用で働くことを希望する人の中には、働いた経験が少なかったり、働いた経験があっても無職の期間が長かったりする人も少なくありません。このような経歴であると、採用する企業側は、雇用することに慎重になります。そこで、このような人たちがチャレンジしやすいように「チャレンジ雇用」や「トライアル雇用」が準備されています。
「チャレンジ雇用」については、これまで説明してきましたが、官公庁や各自治体の行政機関などで1~3年の間働いた経験をもとに、一般企業への就職を目指す制度です。
「トライアル雇用」は、一般の企業で雇用されるときに活用できる制度です。トライアル雇用期間と呼ばれる数ヶ月が設定されており、この期間に試しに働いてみて継続して働けそうだと思った時に、企業と障害者双方の合意のもとに契約を更新し、働き続けることができるというものです。「チャレンジ雇用」と同じように、この制度でも、働いた経験があまりなかったり、働いた経験があっても退職してから長い時間が経過しているような人が活用できる制度となっています。
「トライアル雇用」と「チャンジ雇用」は、対象となる人の条件で似ているところもありますが、雇用までの期間の考え方が大きく異なります。「トライアル雇用」は、トライアルの期間が終わる時に、雇用する企業と働く障害者が合意すれば、そのまま働き続けることができますが、「チャレンジ雇用」は期間が決まっており、期間が終了する時には、次の就職先を探しておく必要があります。
・チャレンジ雇用のその後の就労について
「チャレンジ雇用」が終わると、働き続けることができなくなるので、期間が終わる前に就職活動をする必要がでてきます。よって多くの場合、「チャレンジ雇用」が終わる数ヶ月前から就職活動をおこなうことになります。就職活動は、就労支援機関の支援を受けつつ、一般企業への就職を目指します。もし、「チャレンジ雇用」期間中に就職先が決まらない時には、就労移行支援事業所や、就労継続支援事業所で働くという選択肢もあります。就労移行支援事業所や就労継続支援事業所は、障害者総合支援法の就労系の福祉サービスに位置づけられるものです。就労移行支援事業所は、2年間の利用期間中に就職活動をして、企業への就労を目指します。就労継続支援事業所は、障害や体調などへの配慮がある職場で働く福祉サービスで、雇用契約を結んで働くA型と、雇用契約は結ばないB型の二つに分かれます。就労継続支援事業所には、利用期間の制限はありません。
・最後に……
「チャレンジ雇用」の採用までの流れについては、概ねハローワークに求人提出がされ、紹介を受けてから、書類選考、面接、筆記試験などがあります。なかには実習期間が設けられ、マッチングを図ってから採用となる場合もあります。
「チャレンジ雇用」は、その特性上、自身にとってメリットのあることなのかよく理解した上で活用することが望まれます。
〇「チャレンジ雇用」の特性
・有期雇用のため、業務の幅が広がりにくい
・他社への採用活動も同時進行でおこなう必要がある
・一般就職へステップアップの期間が得られる
・職歴のない人やブランクのある人にとって経験が積める
自分にとってのメリット・デメリットをよく理解し、「チャレンジ雇用」での就職を考えてみてください。