障害者雇用と助けるジョブコーチとは何か

  ジョブコーチとは何か?

障害者が企業で働くにあたり、企業側・障害者双方に様々な課題を抱えるケースが少なくありません。これらの課題を解消するために、実際に職場に出向いて専門的にサポートしてくれる人のことを『ジョブコーチ(職場適応援助者)』といいます。ジョブコーチ支援とは、障害者、事業主、そして障害者の家族に対して、職場適応に関するきめ細かな支援をする公的なサポート制度です。障害者雇用の促進や職業の安定を目的とした支援です。
ジョブコーチ(職場適応援助者)が一定期間事業所などを訪問、もしくは社内に在籍することにより障害者が職場に適応し、いずれは事業主が主体となって障害者の雇用管理ができる体制(ナチュラルサポート)にスムーズに移行していくことをめざしています。
事業主や障害者へのアドバイスだけではなく、職場で共に働く上司や同僚、家族などにも助言、そして主治医などとも連携し、専門的な助言をもらうなどして周囲との調整も行います。

ジョブコーチの歴史

ジョブコーチの歴史は1986年にアメリカのリハビリテーション法改正により、「援助付き雇用(supported employment)」という制度が誕生したことから始まります。
日本では「障害者の雇用の促進等に関する法律(雇用促進法)」のもと、「ジョブコーチ(職場適応援助者)支援事業」が2002年から開始されました。当初は、障害者職業センターに配置されているジョブコーチと地域における社会福祉法人などの協力機関型ジョブコーチ(現在の「訪問型ジョブコーチ」)が支援を行っていましたが、2005年に職場適応援助者(以下「ジョブコーチ」)を配置して、ジョブコーチ支援事業に取り組む「認定法人」に対する助成金が創設されました。

ジョブコーチの種類

このジョブコーチ支援には「配置型ジョブコーチ」「訪問型ジョブコーチ」「企業在籍型ジョブコーチ」の3種類があります。

「配置型ジョブコーチ」

地域障害者職業センターに所属するジョブコーチのことです。就職などが困難な障害者を重点的な支援対象として支援を行います。また、訪問型ジョブコーチや、企業在籍型ジョブコーチと連携して支援を行う場合は、事業所に出向して必要な助言や援助を行うことで、効果的かつ効率的な支援をしています。

「訪問型ジョブコーチ」

障害者の就労支援を行う社会福祉法人などに雇用されるジョブコーチです。

「企業在籍型ジョブコーチ」

企業が自社で雇用しているジョブコーチのことです。

「訪問型」「企業在籍型」の職場適応援助者養成の研修については、独立法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のほか、厚生労働大臣が定める「職場適応援助者養成研修」を民間の研修機関においてそれぞれ実施されています。受講を修了後、経験や適正を同機構に認められるとジョブコーチになることができます。

  ジョブコーチはどんな時に利用するものか?

障害者雇用においてたのもしい存在であるのがジョブコーチです。
特に、以下の内容に当てはまる企業や障害者の方は、ジョブコーチの制度を利用するのがおすすめです。

企業側

・障害者社員に何の仕事を依頼したら良いのか分からない
・障害者社員に対する依頼や指摘がうまく伝わっていないと感じている
・採用してもすぐに辞めてしまうが、何が問題なのかいまいち分からない

労働者(障がい者)側

・なかなか仕事に慣れることができず、不安を抱えている
・職場でうまくコミュニケーションが取れていないと感じている

障害者雇用を躊躇している約8割の企業は「業務の切り出し」に困っています。厚生労働省が発表した『平成 30 年度障害者雇用実態調査結果』によると、障害者雇用を“しない”理由として約8割の企業が「適した業務がないから」と回答しています。つまり、多くの企業が業務の切り出しに困っているようです。
他にも「施設・設備が対応していないから」「障害者雇用について全くイメージが湧かないから」など、障害者雇用にあたって体制が整っていないことや知見が足りないことが課題になっている印象を受けます。障害者雇用では「採用」よりもその先にある「定着」に課題を抱えている企業が多くあります。この課題を解決するのがジョブコーチの役割なのです。

  ジョブコーチの支援内容と申し込み方法

ジョブコーチ制度を利用することで、具体的には以下のようなサポートが受けられます。

企業側

・配置や職務内容の決め方についての助言

・障がい者とのコミュニケーションの取り方に関する助言

・社内で障がいへの理解を深めるためのサポート

・障がいの特性に配慮した雇用管理のサポート

労働者(障害者)側

・職務への取り組み方、進め方などのサポート

・職場内でのコミュニケーションのサポート

・体調や生活リズムの管理に関するサポート

企業や障害者は基本的に無料でジョブコーチ制度を利用することが可能です。また、外部からジョブコーチを呼ぶのではなく自社社員が研修を受けジョブコーチとして活動することも可能で、その場合は国からの助成金が受けられます。
ジョブコーチ制度は、企業がある地域の「障害者職業センター」から申し込みが可能です。申し込み後はセンターのスタッフと共に障害者の特性や事業所での指導体制、職務内容、職場環境などの確認を行います。
サポートの開始までは約2週間~1か月ほどかかるケースが多くなっていますので、興味がある場合は早めに問い合わせることをおすすめします。また、自社の社員がジョブコーチ研修を受ける場合は、以下のリンクから研修案内等の確認をすることができます。
リンク独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構『企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修』

  助成金について

【支給要件】

   ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること

   障害者トライアル雇用等の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと(障害者トライアル)

   3か月から12か月間の短時間トライアル雇用をすること(障害者短時間トライアル)

2.特定就職困難者コース:高年齢者(60~64歳)・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を雇い入れた場合に支給される助成金

【支給要件】

ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること。

雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること。

3.発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース:発達障害者または難治性疾患患者を雇い入れた場合に支給される助成金

   【支給要件】

ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること。

雇用保険一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実であると認められること。

  ジョブコーチの活用事例から

企業名 タイトル 所在地/事業内容 従業員数(障害者数)
山形大光株式会社 できることを見つけて~ジョブコーチ支援を活用した職場適応~ 山形県寒河江市/プラスチック成形加工 85名(2名)
聴覚障害1名
知的障害1名

この事例で述べられていることに以下の文章が目に止まった。

支援開始当初にあった「仕事を途中でやめる」「一部しか行わない」「何もしていない時間がある」といった課題は、周囲の人から見ると「仕事に対する意識・社会人としての自覚が足りない」と映る。これはむしろ当然のことでもある。しかし本人は「この仕事は途中でやめよう」「今は何もしなくていい」などと考えていたわけではない。この両者のズレの原因を考えると、周囲の人には、“今は○○をやってほしい”、“ここまでやってほしい”という期待があり、一方で本人は、“今何を期待されているのか、やるべきことがわからない”、“どこまでやる、という目標がわからない”と困惑していたのかもしれない。このズレは放っておくと、雇用主側と障害者との間に溝を作り、両者にとって憂慮すべき事態になりかねないことである。

どこの企業でも起こりうることが、事例としてトラブルがジョブコーチのアドバイスによって回避された好例としてあげられています。

  まとめ

就労を希望する障害者にとっても、採用する企業にとっても、ジョブコーチ支援を利用することで不安の軽減につながります。一定期間、職務やコミュニケーションに関して助言や援助をもらうことができ、円滑な就労に繋げることが可能です。
費用面での心配もいらないので、活用しない理由がありません。
障害者、雇用主がお互いに気持ちよく仕事をするためにも、ジョブコーチ支援を活用してみてはいかがでしょうか。





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