(社説)HIV感染 流行終結へ戦略描いて


世界で広がる「U=U」運動のロゴ。「Undetectable(検出されない)」=「Untransmittable(感染しない)」の意味で、適切な治療を受ければ性交渉を通じて感染させないことを示している

きょう12月1日はエイズに対する差別・偏見を解消する目的で定められた「世界エイズデー」だ。
 2030年までの「流行終結」を掲げる国連合同エイズ計画(UNAIDS)によれば、昨年の新規HIV(エイズウイルス)感染者の推計は世界130万人。ここ数十年間で最も少なく、サハラ砂漠以南のアフリカで減少が著しい。一方、中東や北アフリカ、東欧など増えている地域もあり、予断を許さない。
 日本で昨年報告されたHIV感染者とエイズ患者は884人で、1千人を割ったのは03年以来だ。6年連続の減少で、ピークから半減に近い。コロナ禍のもと保健所での検査が大幅に減り、その影響が今後出る懸念はあるが、減少傾向を確かなものにしたい。
 HIVの啓発活動などに取り組む当事者団体などからは今年8月、厚生労働大臣に対して要望書と決意表明が出された。30年の流行終結に向け明確な目標を掲げ、国の指針に位置付けることを求めている。厚労省は今こそ流行終結への戦略とロードマップの策定に乗り出すべきだ。
 HIVに感染しても、薬を服用してウイルスが検出されなくなれば、性交渉を通じて感染させることはない。ただ、ウイルスを完全に排除することはできず、薬は一生飲み続けなくてはならない。
 日本ではエイズ発症で初めて感染に気付く人が依然として3割程度いる。潜在的な感染者を検査や治療につなげていくことが重要だ。
 検査は保健所などで無料・匿名で受けられるが、最近は民間の郵送検査が伸びている。しかしながら、陽性者が確実に治療につながっているのかが判然とせず、個人情報の管理にも課題を残す。まずは検査会社が順守すべき事柄などをまとめたガイドラインの作成を急ぐべきだ。
 海外ではパートナーが感染している場合などに薬を服用して予防する「曝露(ばくろ)前予防内服」(PrEP〈プレップ〉)が普及する。予防の標準治療になっているにもかかわらず、日本では承認された薬がなく、個人輸入で服用している人も多い。必要とする人が安全に利用できる環境を国が整えるべきだ。戦略のなかでの位置付けも明確にすることが求められる。
 「日常生活で簡単に感染する」といった誤解は今もあり、感染者への診療拒否も報告されている。流行が下火になれば関心が薄れるというジレンマもある。差別・偏見の根絶には、正しい知識の定着こそが欠かせないという認識をこれまで以上に深めたい。





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