障がい者雇用枠について

・障がい者雇用の現状から

 障害者雇用数は、19年連続で過去最高を更新し、厚生労働省による集計結果(2022年12月30日)を見ると、61万4千人弱になるなど、右肩上がりで増加し続けています。とくに2018年4月に雇用が義務づけられた精神障害者(発達障害者を含む)の伸び率が目立っています。今後も就労の機会拡大が期待される「障害者雇用」について以下説明したいと思います。

・一般雇用とは違う障がい者の採用枠

 障害者の場合、一般労働市場での求人に頼るだけでは、就労の機会を十分に得ることは難しいのが現状です。そこで「障害者雇用枠」という特別な採用枠を利用して、一般雇用とは異なる採用基準で企業や公的機関に就職する道が用意されています。
 職業生活に一定の制限があるにしても、障害者も、障害のない人と同様にさまざまな能力があり、適切なサポートによって貴重な戦力として職場で活躍することができます。国は「障害者雇用促進法」に則り、障害者の可能性が閉ざされることのないようにさまざまな施策を講じています。「障害者雇用枠」はそれらの重要な施策のひとつといえます。

・障害者雇用促進法とは?

 企業や公的機関に対して、一定の割合で障害者を雇用する義務があることを定めているのは「障害者雇用促進法」です。 その歴史を振り返ると、1960年の制定時には、対象は身体障害者のみで、「努力義務」を定めただけでした。しかし、その後、1976年には「努力義務」を「法的義務」に改め、法定雇用率の未達成企業には国庫に納付金を収める「雇用納付金制度」が設けられました。
 これによって現在まで続く、「割当雇用制度」が確立されることになりました。1997年には雇用義務の対象に知的障害者も含めることとなり、さらに2018年4月からは精神障害者も加えられ、障害分類にかかわらず、すべての障害者の雇用が義務づけられることになりました。

・法定雇用率とは?

 障害者雇用促進法では、民間企業、国、地方公共団体などが、常勤職員数に応じて雇用しなくてはならない障害者の割合を定めています。それを「法定雇用率」と言います。民間企業よりも公的機関の方が数値は高く設定されています。
 2021年より法定雇用率は2.3%に引き上げられましたので、民間企業の場合、一人以上を雇う義務が生じるのは、常勤職員43.5人以上の企業となりました。 なお、この法定雇用率は、令和5年度においては2.3%で据え置き、令和6年度から2.5%、令和8年度から2.7%と段階的に引き上げることになっています。

・障がい者雇用枠での就労について

 障害者雇用枠で就労するためには、まずその企業が一般枠だけではなく、障害者雇用枠での採用を行っているかどうかを確かめる必要があります。企業は障害者雇用率を達成したいという希望があるので、応募の際には雇用率にカウントされる条件である障害者手帳の所持が必須となります。
 障害者手帳は、自治体の首長が発行し、本人が障害者であることを証明するものです。身体障害者の場合は「身体障害者手帳」、知的障害者の場合は「療育手帳」(自治体によって名称が異なる例もあります。例えば、東京都は「愛の手帳」、埼玉県は「みどりの手帳」)、精神障害者の場合は「精神障害者保健福祉手帳」(2年ごとに更新手続きが必要です)になります。 障害者手帳がなければ、障害者雇用率には換算されませんので、基本的には一般枠での応募になります。しかし、障害者手帳を所持していれば、「一般枠」・「障害者雇用枠」どちらにも応募することができるのです。

・障害者雇用枠のメリット・デメリット

 2016年4月1日から施行された「障害者差別解消法」により、障害者に対するあらゆる差別的扱いは禁止され、さらに合理的配慮も求められるようになりましたが、実際には、企業の障害者雇用に対するスタンスによって、メリット・デメリットは生じます。
 障害者のキャリアプランを個別に見定め、仕事を通じで自己実現をはかれるように合理的配慮を行う企業ならば多くのメリットを感じることになると思いますが、法定雇用率の達成や企業イメージの向上のために形式的に雇い入れるだけで、非障害者の社員と待遇面などで格差を設けようとする企業の場合には、デメリットが生じる可能性があります。就職活動をする際には慎重に情報集めをしておく必要があります。

メリット
・採用後にどのような処遇がなされるのか、支援体制の有無などの情報が得やすい。
・一般枠での応募より競争率が下がるので、ランクが上の企業に就職できる可能性がある。
・企業の側が障害者を雇うことを最初から意識しているので、入社時から合理的な配慮が期待できる。その上で一般枠採用者と対等に処遇される企業も増えてきている。
・同じような障害をもつ先輩や同僚を得られる可能性がある。
・相談室を社内に設けていたり、外部の相談機関と連携をしたりしている企業が多く、就労に関する相談がしやすい。
・障害者に対するさまざまな支援制度を利用できる。
・週20時間以上30時間未満の短時間就労が認められている企業もある(2024年施行に向けて、さらに週に10時間以上20時間未満の超短時間就労でも障害者雇用率に換算されるよう法改正が進められている)。

デメリット
・すべての企業が障害者雇用枠を設けているわけではないので、選択肢が狭まる可能性がある。
・職種や職域、労働時間が限定されていたりするために、契約社員としての採用で身分が不安定であったり、一般枠よりも待遇が悪くなる場合もある。
・「お客様扱い」されて、やりがいのある仕事が与えられなかったり、アシスタント的な役割で戦力として期待されなかったり、管理職の道が閉ざされている場合もある。
・障害のあるなしで、仕事の内容や働く場所が分けられてしまう可能性もある。

・最後に

 障害者の中には障害があることを隠して一般枠で就職する人もいます。待遇として格差はなくなりますが、ハードな仕事を要求された場合や体調が優れない時などの対応に難しさがあります。定着率は障害者雇用枠で就職した人の方が高いと言われています。
 法定雇用率の上昇にともない、障害者雇用のすそ野は中小企業にまで広がってきていますが、そのせいで十分に体制が整っていない企業も少なくありません。しかし、社会全体としては、障害者の就労を応援しようという流れになっています。社会全体が共生社会の実現をめざす中で、「障害者雇用」に関する環境整備は、障害者が社会とのつながりを深める上でもっとも効果的だと言われています。ハローワークの障害者向けの専門窓口に相談したり、トライアル雇用などの制度も活用したりしながら、ベストマッチの職場をぜひ見つけてください。




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