難病②神経・筋疾患

神経・筋疾患とは

 脳・脊髄および末梢神経など、あるいは筋肉自体の病変によって運動に障害を来す疾患です。代表的な疾患として、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、重症筋無力症、筋萎縮性側索硬化症、ギラン・バレー症候群、筋ジストロフィーなどがあります。
 これらの疾患の多くは、厚生労働省の定める指定難病です。
 適切な診断と、症状に合わせた早期からのリハビリテーションが必要です。 
     発病初期は障害が軽度であり、在宅生活を続けながらリハビリテーションが行われます。
     主として健康増進や日常生活上、自分のことは自分でできることなどが目標となります。
     症状が進行すれば、障害に応じたリハビリテーションが追加されていきます。
     さらに進行した場合は、短期的に入院し集中的なリハビリテーションを行うことがあります。
     この場合は、廃用症候群(安静状態が長期に続くことによって起こる身体機能の障害)の改善を図るとともに、移動やコミュニケーションにおける代償手段(杖や歩行器などの補装具、文字盤など)の提供など、医療・福祉機器を利用した療養生活環境の構築がリハビリテーションの目的になります。このように神経・筋疾患は、進行性の疾患であり、定期的な治療とリハビリテーションが不可欠な疾患といえます。
     神経や筋肉の異常により、筋力低下や運動障害などを生じます。
     神経の異常としては、脳(小脳を含む)や脊髄などの中枢神経の異常によるものと、脊髄から末梢へ至る、いわゆる末梢神経の異常によるものがあります。
     パーキンソン病や脊髄小脳変性症などの中枢神経の変性疾患は症状・障害が進行する疾患です。
     症状、障害に応じたリハビリテーションが必要となります。
     発病初期は障害が軽度であり、在宅生活を続けながらリハビリテーションが行われます。
    主として健康増進や日常生活上、自分のことは自分でできることなどが目標となります。
     症状が進行すれば、障害に応じたリハビリテーションが追加されていきます。
     障害が進行した段階では、廃用症候群の予防を図るとともに、移動やコミュニケーションにおける代償手段の提供など、医療・福祉機器を利用した療養生活環境の構築がリハビリテーションの目的になります。
     嚥下機能が低下すると誤嚥(気管や肺に食べ物や水分が誤って入ってしまうこと)による肺炎を起こす危険がありますので、嚥下機能(食べ物や水分を飲み込む機能)のチェックにより、食事方法、食形態などの検討が必要となります。
     末梢神経障害では、末梢神経の損傷の程度により、回復の程度や時期が異なります。
     筋電図検査による末梢神経の損傷の程度や広がりの評価が重要です。
     急性期の治療としては、神経が再生して回復するまでに関節が固くならないように、関節可動域の維持が重要です。
     神経の回復に応じて筋力増強訓練を行いますが、神経の再生過程にある場合には、やりすぎによる過用性筋力低下にも注意が必要です。
     日常生活や歩行の補助のために必要に応じて装具を作成します。

主な疾患と特徴  

1.パーキンソン病

 パーキンソン病は、脳の異常のために、体の動きに障害があらわれる疾患で、現在日本には約20万人の患者さんがいるといわれています。
 神経・筋疾患の患者数第2位の脊髄小脳変性症が2万7千人程度ですので、この疾患の患者数がいかに多いかということがわかります。
 年齢別にみると、60歳以上では10万人に1000人くらいで、高齢になるにしたがって有病率が高い疾患といえます。
 大脳の下にある中脳の黒質ドーパミン神経細胞が減少して起こります。
 ドーパミン神経が減ると体が動きにくくなり、ふるえが起こりやすくなります。
 ドーパミン神経細胞が減少する理由はわかっていませんが、現在はドーパミン神経細胞の中にαシヌクレインというタンパク質が凝集して蓄積し、ドーパミン神経細胞が減少すると考えられています。
 このαシヌクレインが増えないようにすることが、治療薬開発の大きな目標となっています。  
     ふるえ(振戦)、筋強剛(筋固縮)、動作緩慢、姿勢保持障害が主な運動症状です。
     振戦(しんせんは安静にしている時に、手や足に細かな震えが生じます。動かすとふるえは小さくなります。 筋強剛は他人が手や足、頭部を動かすと感じる抵抗を指しています。
     動作緩慢は動きが遅くなることで、同時に細かい動作がしにくくなります。
     最初の一歩が踏み出しにくくなる「すくみ」が起こることもあります。
     姿勢保持障害は重心がぐらついたときに、姿勢を立て直すことができず、そのまま倒れてしまいます。
     ゆっくりと進行し、病気が始まって数年してから起こります。
     一方病気が始まって2年以内に姿勢保持障害が起こるときには、進行性核上性麻痺などのパーキンソン症候群の可能性があります。
     運動症状のほかには、便秘や頻尿、発汗、易疲労性(疲れやすいこと)、嗅覚の低下、起立性低血圧(立ちくらみ)、気分が晴れない(うつ)、興味が薄れたり意欲が低下する(アパシー)などの非運動症状も起こることがあります。  
     治療の基本は薬物療法です。
     ドーパミン神経細胞が減少するため少なくなったドーパミンを補います。
     ドーパミン自体を飲んでも脳へは移行しないため、ドーパミン前駆物質のL-dopaを服用します。
     L-dopaは腸から吸収され血液脳関門を通って脳内へ移行し、ドーパミン神経細胞に取り込まれてドーパミンとなります。
     その後シナプス小胞にとりこまれ、運動調節のために放出されドーパミン受容体に作用します。
     ドーパミン受容体刺激薬はドーパミン神経細胞を介さずに、直接ドーパミン受容体に作用し、少なくなったドーパミンを補う作用があります。
     ドーパミン神経以外の作用薬には、アセチルコリン受容体に作用する抗コリン薬、グルタミン酸受容体に作用するアマンタジン、アデノシン受容体に作用するイストラデフィリン、シグマ受容体に作用するゾニサミドがあります。
     また、L-dopaの作用を強める代謝酵素阻害薬があります。L-dopaが腸、肝臓、血管内でドーパミンに変わるのを防ぐドパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI)(カルビドパ、ベンゼラジド)、同様にL-dopaが脳に入る前に分解されるのを防ぐカテコラミン-O-メチル基転移酵素阻害薬(COMT-I)(エンタカポン)、脳内でドーパミンが分解されるのを防ぐモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO-I)(セレギリン)があります。
     いずれもドーパミンの作用を強めるように働きます。DCI,COMT-IはL-dopaとの合剤もあります。
     手術療法は脳内に電極を入れて視床下核を刺激する方法が最もよく行われます。
     視床下核は運動を抑制していると考えられ、ここを刺激して視床下核の機能を麻痺させると運動の抑制がとれて体が動きやすくなります。
     薬で治療しても振戦の強い方やウェアリングオフという、薬の効果が持続しない方で効果が期待されます。
     日常生活では運動、睡眠、食事、薬が基本です。運動は健康維持に必須です。
     体を動かすことは体力を高め、パーキンソン病の治療になります。
     はげしい運動ではなく散歩やストレッチをお勧めします。
     散歩は1日8000歩を目安にできるとよいと思いますが、自分の体調に合わせて計画してください。
     ストレッチは姿勢の維持に役立ちます。前かがみや斜め横になる姿勢が起こりやすくなります。
     自分ではまっすぐと感じる姿勢が、実際には斜めになっていることが少なくありませんので、できるだけ鏡を見て姿勢を良くしましょう。
     自分では大丈夫と思っていても転倒が起こりやすいので、躓くようなものは片付け早めに手すりを付けます。 また、気持ちを明るく保つことも重要です。気分が落ち込むと姿勢も前かがみとなり、動作も遅くなります。私たちが意欲を持って行動する時は脳内でドーパミン神経が働いていると考えられています。
     日常生活の過ごし方も大事な治療ですので、小さな楽しみを作って、毎日を工夫して過ごしましょう。
     パーキンソン病は、何年もかけてゆっくりと進行する病気です。
     以前は、「パーキンソン病を発症すると、10年後には寝たきりになる」といわれていました。
     しかし、現在は効果的な治療薬もあるため、発症から長い年数にわたり、よい状態を保つことができます。
     そのためにも早い段階からきちんと治療やリハビリを始めることが大切です。
     パーキンソン病は人によって症状が異なりますしまだ解明されていないことも多いので、必要な情報を得ることは困難です。
     特に40歳以下で発症したパーキンソン病を若年性パーキンソン病といいますが、仕事や家庭などこの年代特有の悩みが多い一方で患者数が少ない為情報量は限られます。
     なるべく早期に必要な情報が得られる環境が整うことが期待されます。
     また前述の通りこの疾患は、早期に発見し対処療法を開始することが重要です。
     早期に発見できるほど軽い症状の状態から抑え込むことが出来、仕事との両立やQOLの維持がし易くなります。
     またパーキンソン病は、次々に新薬が開発されたり、iPS細胞を活用した抜本的治療の研究が進むなど研究が急速に進んでいる分野でもあります。
     10年後には全く違った治療法が確立されている可能性もあります。
     とにかく早期に発見し、症状を抑え込み、粘っていれば状況は好転するはずです。
     しかし見つかりづらい疾患でもあるので、少しでも違和感を感じたらまず自分から行動する必要があります。
     パーキンソン病でよく見られる症状である、手が震える、臭いがしなくなる、つまづいたり転びやすくなる、等が感じられたら病院に行ってみてください。
     専門知識が必要な領域なのでなるべく大きな病院に行くこと、及び気になれば大学病院を紹介してもらうことをお勧めします。
     また前述の通りこの疾患は、早期に発見し対処療法を開始することが重要です。
     早期に発見できるほど軽い症状の状態から抑え込むことが出来、仕事との両立やQOLの維持がし易くなります。
     またパーキンソン病は、次々に新薬が開発されたり、iPS細胞を活用した抜本的治療の研究が進むなど研究が急速に進んでいる分野でもあります。
     10年後には全く違った治療法が確立されている可能性もあります。
     とにかく早期に発見し、症状を抑え込み、粘っていれば状況は好転するはずです。
     しかし見つかりづらい疾患でもあるので、少しでも違和感を感じたらまず自分から行動する必要があります。
     パーキンソン病でよく見られる症状である、手が震える、臭いがしなくなる、つまづいたり転びやすくなる、等が感じられたら病院に行ってみてください。
     専門知識が必要な領域なのでなるべく大きな病院に行くこと、及び気になれば大学病院を紹介してもらうことをお勧めします。

2.脊髄小脳変性症

 主に小脳という、後頭部の下側にある脳の一部が病気になったときに現れる症状を総称して、運動失調症状と呼びます。
 この様な症状をきたす病気の中で、その原因が、腫瘍(癌)、血管障害(脳梗塞、脳出血)、炎症(小脳炎、多発性硬化症)、栄養障害ではない病気について、昔は、原因が不明な病気の一群として、変性症と総称しました。
 病気によっては病気の場所が脊髄にも広がることがあるので、脊髄小脳変性症といいます。
 なお、足の突っ張り、歩行障害が主な症状である痙性対麻痺も、一部の疾患では小脳症状を呈することがあるため、我が国では行政上は脊髄小脳変性症に含まれています。
 脊髄小脳変性症は一つの病気ではなく、この運動失調症状をきたす変性による病気の総称です。
 よって、その病気の原因も様々です。
 現在では、脊髄小脳変性症の病気の原因の多くが、わかってきています。
 しかし、一部まだ原因の解明されていない病気も残されています。  
     脊髄小脳変性症は、遺伝性のものと遺伝性でないものに分けられます。
     脊髄小脳変性症の約1/3の方が遺伝性です。
     遺伝性のものは、遺伝様式により、顕性遺伝(優性遺伝)性と潜性遺伝(劣性遺伝)性に分かれます。
     顕性遺伝(優性遺伝)性の病気は、お子様につたわることがあります。
     一方、潜性遺伝(劣性遺伝)性の病気はお子様に伝わることは、まずありません。 遺伝性の病気の多くは原因となる遺伝子と、その異常が判明しています。
     現在は、その病因遺伝子の働きや、病気になるメカニズムに応じて病気の治療方法が研究されています。
     脊髄小脳変性症の多くには、遺伝子は異なっていても、それらに共通する異常や病気のメカニズムが認められています。
     それらの共通の異常を目標とした治療方法の検討も行われています。
     全く原因がわからなかった時代とは大きく異なってきています。  
     多系統萎縮症という病気では、病型により程度は異なりますが、運動失調症が、その症状の中心になる場合があります。
     そこで多系統萎縮症の一部も脊髄小脳変性症とされます。
     この多系統萎縮症を含めて、脊髄小脳変性症の患者さんは、全国で3万人を超えています。
     その中で、遺伝歴のない脊髄小脳変性症(オリーブ橋小脳萎縮症)が最も多く、約2/3を占めます。
     1/3は遺伝性の脊髄小脳変性症です。
     痙性対麻痺は脊髄小脳変性症の5%程度を占めます。
     遺伝性の脊髄小脳変性症では、それぞれ遺伝子別に番号がついています。
     日本で多いのはSCA3、6、31型、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)です。
     このうちSCA3型はマチャド・ジョセフ病という呼び名で呼ばれます。
     歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)はお子さんから、大人の方まで、本邦で比較的、高頻度に認められます。
     小児の脊髄小脳変性症のなかで多いのは“眼球運動失行と低アルブミン血症を伴う早発型失調症”(EAOH/AOA1)があります。
     成人の遺伝性の脊髄小脳変性症の大多数は病因遺伝子が判明しています。
     小児に関しては、種類も多様で、多くの病因遺伝子が同定されています。しかし、未だ不明な病気も多く存在しています。
     主な症状は、起立や歩行がふらつく、手がうまく使えない、喋る時に口や舌がもつれるなどの症状です。
     痙性対麻痺では、足の突っ張り、歩きにくさが特徴的な症状です。
     脊髄小脳変性症では、これらの症状がたいへんゆっくりと進みます。
     このような、運動が上手に出来ないという症状を総称して運動失調症と言います。
     脊髄小脳変性症として総称されている病気では、それぞれの種類で、運動失調以外にもさまざまな症状を伴います。
     治療は、対症療法によって症状を和らげることしかできないのが現状です。運動失調に対して、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)製剤であるプロチレリン酒石酸塩、TRH誘導体であるタルチレリン水和物が使われます。
     その他、足のつっぱり感、めまい感、などに対して、症状に応じて薬で治療します。
     日常生活では、足のもつれやふらつきによる転倒が、その後に寝たきりや命に係わる可能性もあり最新の注意が必要です。
     特に、歩き出したり、向きを変えたりするときにバランスを崩すことが多いです。
     廊下・風呂・トイレなど、日常生活で頻繁に移動する場所には、手すりなどを設置して、つかまることの出来る固定した場所を確保することにより、転倒のリスクを少なくすることが大事です。
     疾患によっては、進行すると飲み込みの機能が障害される(嚥下障害)場合があります。嚥下障害が合併すると誤嚥性肺炎の危険性が増加し、身体に重大な影響を与える可能性があります。
     細かく刻む、とろみをつけるなど、飲み込みやすい食事形態にすること、食後の口腔内ケアを励行することが重要です。
     食事の際のむせこみに気づいたら、早めに嚥下造影・嚥下内視鏡等の嚥下機能検査を受けることが重要です。

3.重症筋無力症

末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患です。
 全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴です。眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型とよんでいます。  
     自己抗体の標的として最も頻度の高いのがアセチルコリン受容体で全体の85%程度、次に筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)で全体の数%と考えられています。
     残りの数%(全体の10%未満)の患者では、どちらも陽性になりません。
     自己免疫疾患としての標的分子が約90%の患者で明らかになったことになります。
     しかし、なぜこのような自己抗体が患者体内で作られているのかは、いまだによくわかっていません。
     一方、抗アセチルコリン受容体抗体を持つ患者さんの約75%に胸腺の異常(胸腺過形成、胸腺腫)が合併することにより、胸腺異常の関与が疑われています。
     重症筋無力症が疑われる場合、自覚症状とともに、詳細な検査によって診断が確定されます。
     検査は数種類のものを組み合わせて行われますが、ほとんどが痛みや副作用を伴い、患者さんにとってはとてもつらいものです。
    ・アイテスト:氷水を2分間まぶたにあて、2mm以上開眼されるかどうかをみます。
    ・エドロフォニウム(テンシロン)テスト:神経と筋肉の間の刺激の伝達を改善させる薬剤(塩化エドロフォニウム)を静脈注射して、眼や全身の症状が改善されるかどうかをみます。
    ・血液検査:抗アセチルコリン受容体抗体全身型重症筋無力症の患者さんの80~90%で検出され、眼筋型の患者さんでは陽性率は低くなります。
     甲状腺機能検査重症筋無力症の患者さんは、甲状腺機能亢進症などの甲状腺の病気を合併することがあります。
     甲状腺の病気は血液検査でも確認できます。
     甲状腺の病気がみつかれば、同時に甲状腺の機能異常の治療を行います。
    ・抗マスク抗体:抗アセチルコリン受容体抗体陰性の全身型の場合、約30%の患者さんにマスクに対する抗体がみられます。
    ・筋電図検査:手、肩や顔などの筋肉の表面に電極を置いて、神経に繰り返し電気刺激を与え、得られる波形を観察します。
     重症筋無力症の患者さんでは、刺激を繰り返すと次第に波形が小さくなります。
    ・胸腺や胸腺腫の検査:胸部X線検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MR(I磁気共鳴画像)検査、PET-CT〔PET(陽電子断層撮影)とCTが一体となった検査〕などの画像検査によって、胸腺の状態を観察します。
     主な症状は、筋力の低下と易疲労性です。
     易疲労性とは人より疲れやすいことで、朝は普通に動けるのに夕方になると筋肉の疲れによって立っていられなかったり、軽い荷物でも持つことができなくなったりします。
     また多くの患者さんに眼瞼下垂(目の筋力が低下することにより、目が明けていられなくなる)や複視(物が2重に見える)の症状が現れます。
     一方、発語や嚥下障害などの症状が目立つ患者さんもいますし、四肢筋力低下が強い患者さんもいます。
     症状が悪化すると、呼吸筋麻痺により呼吸ができなくなることもあります。
     特異的な病気のマーカーであり病因でもある自己抗体(アセチルコリン受容体抗体、MuSK抗体)の測定が多くの施設で可能になり(検査会社に委託)、早期診断・早期治療が行われるようになりました。
     そのため予後は比較的良好です。約半数の患者は、発症後に日常生活や仕事の上で支障のない生活を送ることができます。
     しかし完全に治療が不要になる人は6%程度で、その他の患者さんは治療を継続しています。一方で、治療によってもあまり改善のない患者が10%ほどいます。
     治療には、対症療法と根治的な免疫療法があります。
     対症療法として使われるのは、コリンエステラーゼ阻害薬といって、神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤です。
     ただ、これはあくまでも、一時的な対症療法と考えるべきです。治療の基本は免疫療法で、この病気の原因である抗体の産生を抑制したり、取り除く治療になります。
     抗体の産生を抑制するものには、ステロイド薬、免疫抑制薬があり、ステロイド薬は飲み薬としても点滴としても使われています。
     そのほかには、抗体を取り除く血液浄化療法、大量の抗体を静脈内投与する大量ガンマグロブリン療法、補体C5を特異的に阻害するモノクローナル抗体製剤があり、患者さんの症状や状態に応じて、治療方法が選択されています。
     これらは、体内の抗体を区別なく除去したり、抗体の作用を非特異的に押さえたりする治療で、疾患特異的な治療ではありません。
     胸腺の異常として、胸腺腫を合併する場合は、まず外科的にこれを取り除く必要があります。
     胸腺腫は早期に発見されれば一括して切除でき、生命予後の良い腫瘍です。
     また、胸腺腫がない場合の胸腺摘除術については、国際的な研究で有効性と安全性が示されています。ただし、眼の症状だけ、アセチルコリン受容体抗体が陰性、小児や高齢者に対する有効性は不明です。MuSK抗体陽性患者では、血液浄化療法の一つである免疫吸着療法、補体C5を特異的に阻害するモノクローナル抗体製剤、胸腺摘除術の効果は期待できません。
     胸腺の異常として、胸腺腫を合併する場合は、まず外科的にこれを取り除く必要があります。
     胸腺腫は早期に発見されれば一括して切除でき、生命予後の良い腫瘍です。
     また、胸腺腫がない場合の胸腺摘除術については、国際的な研究で有効性と安全性が示されています。
     ただし、眼の症状だけ、アセチルコリン受容体抗体が陰性、小児や高齢者に対する有効性は不明です。
     MuSK抗体陽性患者では、血液浄化療法の一つである免疫吸着療法、補体C5を特異的に阻害するモノクローナル抗体製剤、胸腺摘除術の効果は期待できません。
     ステロイド薬や免疫抑制薬を服用中であっても、少ない量で病状がコントロールされていれば健常人と何ら変わることの無い生活を送ることが出来ます。
     注意する点として、次のようなことがあります。
     1)ステロイド薬などの免疫抑制薬を服用中の場合は、生ワクチンの予防接種を受けることは出来ません。インフルエンザなどの不活化ワクチンの接種は支障なく、これらの疾患にかからないために、むしろ積極的に受けるべきです。
     新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンに関しては、感染や重症化を防ぐため接種することが望まれますが、接種前に主治医と相談することが必要です。
     2)妊娠ならびに授乳において、胎児や乳児に好ましくない影響を与える治療薬があります。これらの点については、主治医に良く相談してください。
     他にも、筋萎縮性側索硬化症(ALS、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気)や筋ジストロフィー(筋萎縮や脂肪・線維化が生じ、筋力が低下し運動機能など各機能障害をもたらす)などは、神経・筋疾患の中でも特に有名です。

・Q&A

[▼開く] Q1 難病を抱えて不安に感じたことは何ですか?[閉じる▲]
 難病を発症するとまず、数々の不安に襲われます。これから自分はどうなってしまうのだろう、これからどうしたらいいんだろう、今まで通り生活できるのだろうかなど、漠然とした不安はそれだけでストレスに感じてしまいます。
 また病気が進行していくにつれて、発症するまえの自分とのギャップに戸惑い、いらだつこともあるでしょう。
 前までできていたのに、こんなこともできないのかと、自分を責めてしまったり、また本当は自分の能力をきちんと把握していたとしても、病気への不安から自分はまだできると意地になって、余計にいらだってしまったりすることもあります。
 それらの不安から施行がネガティブになり、精神疾患を発症してしまう2次的障害を発症することもあります。
[▼開く] Q2 難病当事者から他の難病を抱えた人に伝えたいことは何ですか?[閉じる▲]
 結論から書くと、難病を抱える人に伝えたいことは決してあきらめずに希望を捨てないでほしいということです。
 これは障害を抱える人にも同じことが言えます。
 障害や難病の中には生まれた時から発症する先天性のものもありますが、多くは人生の途中で、何の前触れもなく発症します。
 昨日まで不通だったのにある日突然医者から医学的には一生治らない病気であることを告げられ、これからどうやって生きていけばいいのだろうという不安や絶望が頭をよぎります。
 また難病という言葉のイメージから、一生動けなくなるとか、必ず死んでしまうといったマイナスの想像をしてしまう人も多いでしょう。
 それに今まで何の不自由もなく過ごしていたのに、ある日突然、あるいは徐々に、それまでとは違う生活を強いられることになる苦しみは計り知れないものがあります。
 今までできていたことがだんだんできなくなる、今までしてきたことと同じことをするのに人よりも何倍も苦労や工夫をしなければならないということは、最初は精神的にも受け入れがたいものがあります。
 ですが、だからこそ、希望を捨てないで欲しいのです。難病の多くは進行性で、確かに昔は十分な治療法が確立しておらず、なくなってしまう人も多くいました。
 しかし医学は日々進歩しています。世界中で多くの研究者たちが、日々難病の治療法や薬の研究を行い、現在多くの難病でその信仰を食い止める治療法や薬が完成して実際に使用されています。
 進行性の難病はほおっておくと文字通り進行してしまいますが、患者が前向きで積極的な姿勢で治療に取り組めば、元の生活と同じように過ごすことができるようになってきています。
 そしてそれは早く始めれば始めるほど治療の効果が高くなります。だから、少しでも早く希望をもって治療を始めてほしいのです。
 それと、他人と比べないということも、病気を受け入れうまく付き合っていくうえでは大切なことかもしれません。
 他人と比べてしまうと、あの人はあんなことができるのに自分にはできないと、ネガティブな思考になりがちです。
 人と比べるより、『今自分にできることを、自分なりの方法で、1歩ずつ着実に』行うことが大切なことではないでしょうか。
 何かを成し遂げる方法は決して一つではありません。
 他人と同じ速度、同じ方法にこだわるのではなく、多少人とは違っても、多少人より時間がかかっても、自分なりの方法で、自分の力で、やりたかったことを達成した時は、何にも代えられない喜びがあり、またそれが自信にもつながっていきます。
 そのためには周囲の人の理解も非常に大切です。最初は病気になった人の見た目や言動がそれまでとは変わっていくことに戸惑いや驚きを覚えることも多いでしょう。
 しかし病気に対して正しい知識を身に着け、本人としっかりコミュニケーションを取れば、病気を受け入れ病気を持った人に寄り添うことができるはずです。





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