Q21 発達障害者のはじめての就業についてアドバイスを下さい。

A.21 学校生活から職場生活に、いよいよ移行する段になると、発達障害のある方をお持ちの親御さんにとって、実際わが子は就労できるのかどうか、不安は募るばかりといったところが正直なところではないでしょうか。
障害や重い病気を抱える人が社会に出て働くためには、働く本人自身が自分の障害や病気の特性を、客観的に把握することがとても重要なことになります。しかしながら実際のところは、重い症状を抱えていないと本人も保護者も発達障害であることを隠し、認めることは自己否定されることと思いがちで、どうしても受容することができないでいることも実際あるのではないでしょうか。軽度でこれまで何とかやってこられたのだからと、就職活動に取り組んではみたものの、継続できず挫折してしまい、傷ついたあげくようやく障害者支援サービスを受けるといった事例が多く見受けられます。
障害や重い病気を抱える人が、社会に出るにあたって必要な訓練を受けることができるサービスに、職業リハビリテーションという制度があります。この制度を利用して、社会に出て働くために必要なスキルを身につけ、就業に関してのサポートを得ることで、障害や重い病気を抱えていても社会に出て働くことが可能になります。ここでは、その職業リハビリテーション(職リハ)について解説し、発達障害の方にも開かれた就業のために受けられる制度として理解いただければと思ってます。

 職業リハビリテーションの対象者

まずは広く職業リハビリテーションの対象となる人は、身体障害者、重度身体障害者、知的障害者、重度知的障害者、発達障害を含む精神障害者、その他心身の機能障害者となります。

その他心身の機能障害者には、精神疾患(発達障害を含む)や高次脳機能障害、難病がある人のうち、障害者手帳を持っていない人のことを指します。

採用側の企業における障害者雇用率の算定の対象となるのは、障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を持つ人のみとなっていますが、これらの手帳を持っていない人でも、職業リハビリテーションを受けることは可能です。

実際には職業リハビリテーションを行う施設によって、サービスを受けることができる対象者が決められています。そのため、自分が職業リハビリテーションを受けようと思った場合には、自分の障害や病気に適した職業リハビリテーション実施施設を探す必要があります。

 職業リハビリテーションはどこで受けられるのか

職業リハビリテーションを行っている機関には、どのようなものがあるのか、以下に職業リハビリテーションの実施機関を紹介します。

〇公共職業安定所

就職を希望している障害者や重い病気を抱える人の求職者登録を行い、専門の職員および職業相談員がケースワーク方式により障害の種類や程度に応じてきめ細かな職業相談や紹介、職場定着支援を行ってくれます。

就職後のアフターケアまで一貫して利用することができます。

〇障害者職業センター

この障害者職業センターの中には障害者職業センター、広域障害者職業センター、地域障害者職業センターの3つの種類があります。

このうち一般の障害や重い病気を抱える人が利用できるのは、広域障害者職業センターと地域障害者就業センターです。

広域障害者就業センターでは障害者職業能力開発校や医療施設等と密接に連携した、系統的な職業リハビリテーションが実施されています。

一方、地域障害者就業センターでは、障害者に対して職業評価、職業指導、職業準備訓練、職場適応応援助などの専門的なリハビリテーションを受けることができ、また、企業側にも雇用管理に対するアドバイス等を実施しています。

〇障害者雇用支援センター

障害者雇用支援センターでは、就職が特に困難と思われる障害者に対して職業準備訓練を中心とした雇用支援を実施しています。

〇障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターにおいては、障害者の身近な地域において雇用、保健福祉、教育等の関連機関と連携して、就業面や生活面における一体的な相談支援を行っています。

〇障害者職業能力開発校

障害者職業能力開発校では、訓練科目や訓練指導方法に特別な配慮を加え、障害の特性に応じた職業訓練や技術革新の進展などに応じた在職者訓練などを行っています。

〇就労移行支援事業所

就労移行支援事業所では、職業リハビリテーションで受けることができるサービスを一貫して提供しています。

そのため、職業リハビリテーションの段階に応じて相談や通所先を変更する必要がありません。

 職リハのサービスとプログラム

では実際、障害や重い病気を抱える人を就業へつなげるために、どんなプログラムが用意されているのか簡単に記しておきます。職業リハビリテーションは、職業評価、職業指導、職業準備訓練と職業訓練、職業紹介、保護雇用からなってます。

〇職業評価

職業評価とは、職業リハビリテーションを行う機関に入所する前に、入所後の職業訓練を的確なものにするために身体的側面、学力等の基礎の能力の側面、医学的側面、社会的側面、職業的側面について整理することです。

この職業評価を行うことにより、その後に実施される職業訓練の受講に必要となる基礎学力や適正、健康状態、就労に関する要望などを確認し総合的にその機関への入所が適正であるかが判断されます。また、この職業評価の結果をもとに支援計画が作成されます。

〇職業指導

職業指導とは、職業評価によって得られた情報により本人の資質に合った訓練を行うことを言います。

初めのうちは自分の体調のコントロールする方法を体得することから始まることが一般的ですが、プログラムが進むにつれて仕事で必要となるスキルを身につけるための訓練へと徐々に移行していきます。

〇職業準備訓練と職業訓練

職業準備訓練と職業訓練は、自分の持つ障害や病気の特性を理解した上で就労に必要なスキルを習得するために準備段階と本訓練に分け、スムーズに技能を習得するための訓練となります。

〇職業紹介

職業評価と職業訓練を受け、自分の持つ障害や病気の特性を理解した上で就労に必要なスキルを習得した後に、自分に合った職業を紹介してもらうことが可能になります。

自分の適性に合った仕事を探すとともに、面接のシミュレーションや企業側に提出する必要書類の添削を受けることも可能です。

〇保護雇用

保護雇用とは、一定の特別な配慮のもとで企業に雇用されることを言います。障害や病気を持っている人にとって、企業側にハード面またはソフト面、またはその両方の配慮をしてもらいながら働くことは、長く働き続けるためにとても重要なことです。このような保護雇用の環境下で、特別な配慮やサポートを受けながら長期にわたり就業できるようにすることが、職業リハビリテーションの最終的な目標となります。

 発達障害のある方の職業選択をめぐる課題

ここまで職業リハビリテーションについて説明してきましたが、ここからは発達障害のある方の職業選択をめぐる課題について述べたいと思います。

この国の障害者雇用政策には、三つの柱があります。それは、①障害者雇用率制度等に基づく事業主に対する指導・援助、 ②障害者の特性に踏まえたきめ細かな職業リハビリテーションの実施、③障害者雇用に関する啓発、です。なかでも②の職業リハビリテーションの支援は、法定雇用率の対象・範囲の拡大とともに、身体障害、知的障害、精神障害の順に支援の充実を展開する経過をたどってきました。これら三障害の特性を有していない発達障害者についても、法定雇用率の対象ではありませんが職業リハビリテーションの対象と位置づけられています。

この発達障害のある対象者は、診断や相談の経歴を有する者ばかりではありません。発達障害の診断を有する者もいれば、判断を有する者、疑いのある者、あるいは障害があると申し立てる者までいます。

このような発達障害のある方が職場適応の場面で向き合わねばならないことには、立ちすくみ、先送り、挫折などから職場不適応、失業、喪失といった生活設計の変更を余儀なくされることがあります。そのため障害の特性に即した支援が充分為されているかどうかがとても重要なこととなってきます。

また、本人が学校卒業までにどのような支援を受けたかによって、職業選択の時点において大きく変わってもきます。

例えば、就職に特別な支援を必要としない者もいれば、療育手帳・精神障害保健福祉手帳の保有となる者(二次的な障害を含む)や、就職にあたって特別な支援が必要と考えられるが、現状では手帳の対象外の者までいます。

つまり、学校時代の経験を通して障害に気づくことはあったとしても、「頑張って学校を卒業した」ことから、障害を否認したいという気持ちを強く持つことが多いことが傾向としてみられます。この場合、挫折体験(初職入職困難による挫折)や喪失体験(離転職/一般扱いとしての正規職員という地位の喪失)があったとしても、引き続き「一般扱いで就職する」希望にこだわる方が多いようです。結果として、「自分に適した仕事があるのではないか」という思いを持ち続け、「障害に向きあう」ことは、自分の存在そのものを否定されるのではと、この上なく重い意味を持つことになります。

しかし、希望と現実が乖離している場合、高校中退であれ高卒であれ、さらなる上級学校卒であれ、教育歴とは別に、職業選択は障害理解の問題を避けて通ることはできません。つきつけられた厳しい現実を否認することが難しい場合には、様々な経験を通して自分の特性に相応しい支援を選択することになりますが、挫折や喪失の体験から立ち直るためには、まずは深刻な体験を総括してフィードバックする相談活動が必要となることもまた多いようです。 学校教育法の改正により、義務教育段階における教育支援の理念において通常教育と障害児教育の間の連続性は、確保されたかにみえました。しかし、高等学校在学中の進路指導において、必要に応じて障害特性に相応しい支援を自ら選択すること、そのために障害者雇用施策について情報提供する試みは極めて少ないのが現状です。ここには、義務教育と高等学校教育の間の制度の不連続性が指摘できます。こうした教育における連続・不連続の状況は、障害児教育の学校(特別支援学校)と学校外の障害者就業支援との連携がありながらも、高校と学校外の障害者就業支援との連携が検討されていないことに起因するのではないでしょうか。障害児教育の学校(特別支援学校)に蓄積されたノウハウの共有という点でも制度の連続性が確保されているとは言い難く、加えて、児童・生徒並びに家族の中にある障害の理解と受容の問題や、教育関係者の障害理解の問題があるといえます。よって職業選択が障害に向きあう場面になるのです。その証拠に、労働市場への参入に失敗(無業)もしくは適応の失敗(失業)後に、問題の理解並びに支援の必要性が認識される事例が多いことからも判ります。

 障害理解支援の課題

本来、職業リハビリテーションの対象となる若者にとって、“障害特性を受けとめた進路選択を行う”という課題を先送りしないための支援が必要です。しかしながら職業リハビリテーション・サービスの対象であるにもかかわらず、様々な事情からサービスを選択していない発達障害のある方たちの現状があります。

このような問題が通常教育における特別支援の教育課程や移行支援のみならず、学校外の就労支援機関との連携の視点で十分に検討されていないことに起因しています。今後、学校生活から職場生活に移行する発達障害のある方たちへの支援が、これまでの壁とぶつかり、その上で何らかの支援サービスと出会うという経緯を経ずに、スムーズに社会扉を開く支援体制を作るためにも、“障害特性を受けとめた進路選択を行う”という課題を先送りしないことが求められます。

最後に職業リハビリテーションは、発達障害でそれまで就業の経験がなくても利用することが可能です。障害や病気により退職し、再就職を目指す人以外に、初めての就職に自信を持つことが出来ない人でも利用することが可能です。就職や再就職できるかどうかといったことや、就職した後に職場に定着することが出来るかどうかといった点について不安を持つ方や保護者の方は、この職業リハビリテーションのサービスを利用してみることをおすすめします。





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