「糖尿病の新たな名称候補「ダイアベティス」

 糖尿病の新名称「ダイアベティス」

2023年9月22日、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は合同で会見を行い、糖尿病の新しい呼称として、「ダイアベティス」を提案すると発表しました。今後1~2年をかけて、糖尿病をもつ人や医療従事者からの意見を募り、「最終的に呼称変更するのかを検討する」と伝えています。但し、変更が提案されたのは病名ではなく、あくまでも呼称です。

 ダイアベティスとは

糖尿病は、紀元2世紀にカッパドキアの医師「アレタイオス」によって「diabetes(ダイアビーティス)」と命名されたとされています。この言葉は英語の “diabetes” に相当し、”dia”は英語の前置詞 “through” に近く、「〇〇を通り過ぎる」という意味があります。一方で、「betes」は “pass” や “go” などの意味で、「行ってしまう」という意味合いがあります。したがって「Diabetes」は、文字通りには「水が」「体を」通り過ぎて行く、という意味合いを含んでいます。なお、この言葉には「尿」という意味は含まれていません。

 ダイアベティスが生まれた背景

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが低下し、血糖値が慢性的に高まる病気のことです。この病名は1907年、日本内科学会が制定したものです。糖尿病は、患者によっては尿から糖が出ないこともあるため、病名が実態を正しく反映しているわけではありません。また、糖尿病という病名には、「尿」という言葉が含まれているため、不潔なイメージを連想させます。さらに、糖尿病という単語は「生活習慣が悪い」「だらしない」などと周囲から見られがちなのも事実です。そのため、糖尿病の方は、病名に伴う偏見を恐れて同僚や家族に病状を伝えず、医師の診察時にも状態を隠すことがあります。このような事情から、日本糖尿病協会は「糖尿病に対する誤った認識が偏見を増幅させ、糖尿病スティグマを生んでいる」と指摘しています。スティグマを放置すると、糖尿病を抱える人が社会活動で不利益を被るだけでなく、治療に向かわなくなる可能性もあります。また、病気を隠し続け、適切な治療の機会が逃してしまうことで、症状が重症化する可能性もあります。スティグマを放置すると、様々な影響が及ぶと考えられます。

 糖尿病スティグマとは

では糖尿病スティグマとは一体どういうことを指すのでしょう。その名の通り糖尿病を持つ人に対する“スティグマ”のことを指します。スティグマとは、一般に「恥・不信用のしるし」「不名誉な烙印」を意味します。ある特定の属性により、いわれのない差別や偏見の対象となることです。では、糖尿病のスティグマにおいては、どのようなものが挙げられるのでしょうか。

<糖尿病スティグマの具体例>

糖尿病におけるスティグマでは、糖尿病になると失明や透析、脳梗塞になるなどと決めつけられたり、不摂生、だらしない、運動嫌い、自己管理ができていないと見られることで社会的に様々な不利益を被ることなどが挙げられます。また生命保険に加入できない、住宅ローンが組めない、結婚の障壁となる、就職に不利になる、なども糖尿病におけるスティグマだと言えます。

 《名称変更に至る日本糖尿病学会と日本糖尿病協会の動き》

アドボカシー活動

日本糖尿病学会と日本糖尿病協会は2019年8月4日に合同委員会を開催し、糖尿病をもつ人に対するスティグマを放置すると、糖尿病をもつ人が社会活動で不利益を被るのみならず、治療に向かわなくなるという弊害をもたらすため、糖尿病であることを隠さずにいられる社会を作っていく必要をあらためて確認しました。
社会における糖尿病の知識不足、誤ったイメージの拡散により、糖尿病をもつ人は「特定の属性に対して刻まれる負の烙印=スティグマ」(社会的偏見による差別)にさらされています。スティグマを放置すると、糖尿病であることを周囲に隠す→適切な治療の機会損失→重症化→医療費増→社会保障を脅かす、という悪循環に陥り、個から社会全体のレベルまで、様々な影響を及ぼすことになります。
そこで、日本糖尿病学会と日本糖尿病協会が、糖尿病の正しい理解を促進する活動を通じて、糖尿病をもつ人が安心して社会生活を送り、人生100年時代の日本でいきいきと過ごすことができる社会形成を目指す活動(アドボカシー活動)をすることを決議しました。

「糖尿病」から、世界の共通語である〝Diabetes″「ダイアベティス」へ

今、糖尿病医療の世界は、変わりつつあります。治療の進歩とともに、糖尿病のある一人ひとりが、病気があっても人生を充実させるためのお手伝いをするというアドボカシーの考え方に基づく医療を提供するという考え方が生まれています。糖尿病の治療でよく耳にする血糖管理がありますが、血糖の自己管理は大切ですが、それが人生のすべてではありません。医療者と共に、二人三脚で病をコントロールできる時代がきています。
糖尿病があっても、なにひとつやりたいことを阻害されず、自分の夢を実現できる社会。一病息災で、生き生きと暮らすことができる社会。そんな社会を実現するのは、糖尿病に対するほんの少しの関心です。正しく知ることは、健康に役立ち、糖尿病のある人へのやさしい理解につながります。

糖尿病にまつわる“ことば”を見直すプロジェクト

糖尿病に対する社会的偏見は、不正確な情報・知識に起因する誤った認識(ことば)により生じることが多く、病態を正確に表していない病名や、糖尿病医療で使われる不適切な用語(侮蔑的な表現である「糖尿」や現在の疾患概念にそぐわない「療養指導」等)の使用によるマイナスイメージの拡散により、糖尿病のある人は自らに非がないにもかかわらず、社会から負の烙印(スティグマ)が押されます。
そこで、日本糖尿病協会は、まずは医療現場で習慣的に使われることばの中で、スティグマが生じうる用語を見直すことで、医療現場を起点に糖尿病の負のイメージを一掃し、糖尿病のある人が前向きに治療に取り組む環境を整備したいと考えました。そこで打ち出されたのが、“「糖尿病」から、世界の共通語である〝Diabetes″「ダイアベティス」へ”です。
また「療養指導」という用語は見直しの重点項目になっており、すでに「支援」「サポート」「教育」等の適切な用語に置き換えるよう進めています。

 新名称(ダイアベティス)に期待するもの

糖尿病の病名変更は、糖尿病に対する偏見を払拭できる可能性があります。なぜなら痴呆においては、“痴呆”という用語が“認知症”に置き換わることで、病気に対する社会の受け止め方が変わってきた歴史があるからです。もちろん呼び名が変わったことで認知症のある人が抱えていた“生きづらさ”が全て解決したわけではありませんが、少しずつ社会が良い方向に前進しました。したがって糖尿病に関しても、新名称「ダイアベティス」に呼称を変えることで、糖尿病のある人が生きやすい社会を築く一助となるかもしれません。

 糖尿病はどのように新名称に変わるのか

糖尿病の新名称「ダイアベティス」に関しては、先述の通り、今後1~2年かけて、糖尿病を抱える人や医療従事者からの意見を集め、「最終的に呼称を変更するかどうか」を検討する予定です。なお、糖尿病の病名を変更する際には、国に報告し、行政文書を変更する必要があります。この手続きには煩雑な過程が伴うため、病名の変更が実現するまでには一定の時間がかかる見込みです。

 最後に……

近年、病名や呼称の変更を求める声が、医療従事者や学会や協会などからもち上がっています。糖尿病をダイアベティスへの変更も、そうした声からなったものといえます。大きな動きからいうと、精神障害の分野では、disabilityを日本では「障害」と訳してきました。disorderを臨床医学などの分野では同じ「障害」と訳していたのを疾病の症状である「症」と訳し直すことが近年勧められています。その理由は、「~障害」というと、症状が固定して良くならない、不可逆なものという印象を与えて、精神疾患への偏見を助長している面があるからだといえます。ではどのようなものが、現在議論されているのでしょうか。

・適応障害→適応反応症
・パニック障害→パニック症
・心的外傷後ストレス障害(PTSD)→心的外傷後ストレス症

また性同一性障害の略称であったGIDについて、近年トランスジェンダーであることは、疾病や障害ではなく、性の健康に関する「状態」であるという考えが主流となり、世界保健機関(WHO)が2018年に公表した国際疾病分類(ICD)で、「障害」を意味するGIDはなくなり、GI(Gender Incongruence)に改められました。日本でも日本語訳は「性別不合」とする案が出ており、学会名もGIが使われるようになりました。

・性同一性障害→性別不合

以上のような世界的な動向も見逃せなくなっています。2022年から5年間の移行期間が設けられ、各国が翻訳を進めています。厚労省は日本医学会などに計9万7563用語の和訳を依頼し、関連する各学会が病名変更などの必要がないか検討している状態です。







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