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近年、ウェブアクセシビリティの向上があらゆるウェブサイトで求められています。ウェブアクセシビリティとは、どういうものなのか。なぜウェブアクセシビリティに対応する必要があるのか、その考え方やポイントをわかりやすく解説します。以下は、政府広報オンラインの『ウェブアクセシビリティとは? 分かりやすくゼロから解説!』をもとに文章を一部変更させていただきました。
1.ウェブアクセシビリティとは?
「アクセシビリティ」という言葉は、Access(近づく、アクセスする)とAbility(能力、できること)からできた成語です。「近づくことができる」「アクセスできる」という意味から派生して、(製品やサービスを)「利用できること、またはその到達度」という意味で使われます。
アクセス アビリティ アクセシビリティ Acces + Ability → Accessibility [近づく・アクセスする]+[能力・~できること] |
ウェブアクセシビリティは、つまりウェブにおけるアクセシビリティのことです。利用者の障害などの有無やその度合い、年齢や利用環境にかかわらず、あらゆる人々がウェブサイトで提供されている情報やサービスを利用できること、またその到達度を意味します。
2.なぜウェブアクセシビリティを向上させる必要があるのか?
現代社会では、ウェブサイトは重要な情報源で、社会生活を営む上でなくてはならないインフラの一つになっています。老若男女問わず多くのかたがパソコンやスマートフォンだけでなく、タブレットやゲーム機など様々なデバイスでウェブサイトにアクセスしています。
しかし、ウェブサイトがウェブアクセシビリティに配慮して作られていないと、利用者の症状や障害の状況によっては、ウェブサイトを介して情報を入手できなかったり、ウェブ上で行う申込や手続などのサービスが利用できなくなったりするなど、社会生活上大きな不利益が生じることがありえます。さらには、災害時に避難場所などの必要な情報を得られないという状況となれば生命の危機に直面するおそれさえでてきます。
こうした理由から、ウェブサイトで提供している情報やサービスを常に誰もが安心して利用できるように、ウェブアクセシビリティを確保する必要があるのです。
3.ウェブアクセシビリティが確保できている状態とは?
一般的に、「ウェブアクセシビリティが確保できている」ウェブサイトは、具体的には以下のようなことが行えることをいいます。
●キーボードだけで操作できること。
●一部の色が区別できなくても得られる情報が過不足ないこと。
●音声コンテンツや動画コンテンツで、音声が聞こえなくても話している内容が伝わること。
以上のようなウェブサイトであれば、視覚障害のある人、聴覚障害のある人、色覚特性のある人などでもウェブサイトを介して情報を入手したり、サービスを利用できたりするようになります。厚生労働省の「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」によれば、日本だけで少なくとも身体に障害がある人(身体障害者手帳保持者)は、428.7万人と推計されています。
また、障害の有無に関わらず、加齢による視力や聴力が衰えたり、怪我や病気などで一時的または長期的に目や耳が使えなかったり、あるいは明るさの足りない環境や雑音により音声の取得が難しい状況にある人など、あらゆる人々がウェブサイトにアクセスでき、その恩恵を受けることができます。
4.ウェブアクセシビリティが確保されたウェブサイトの特徴
ウェブアクセシビリティが確保されたウェブサイトで、私たちが享受できる恩恵とは、例えば次のようなことだといえます。
ウェブアクセシビリティを確保するために、ウェブサイトの運営者・事業者は、ウェブサイトにある様々な課題を解決することになります。ウェブサイト全体を通じて一貫したレイアウトやナビゲーションのルール作ったり、ページタイトルやリンクテキストを適切な内容にしたりすることで、障害の有無に関わらず、多くの人の使いやすさ・覚えやすさ・読みやすさなどが向上します。また、情報を探しやすくなったり、他言語への自動翻訳の精度が向上し、外国人にとっても理解しやすくなったりします。
インターネットは、パソコン、スマートフォン、タブレット、テレビ、ゲーム機など多様なデバイスで利用され、マウス、キーボード、タッチパネル、音声など様々な手段で操作できます。ウェブアクセシビリティにはデバイスに依存しない原則的な事柄が多く含まれていますので、私たちは好きなデバイスを使ってウェブサイトにアクセスすることができるようになります。
ウェブアクセシビリティを確保することで、人だけでなく、ウェブ上の文書や画像などを周期的に取得する検索エンジンのクローラー(ウェブサイト巡回ロボット)でもウェブサイトの構造や内容を理解しやすくなります。
例えば、画像に対してalt属性と呼ばれる代替テキストを設定していると、視覚障害のある人がスクリーン・リーダー(コンピュータの画面読み上げソフトウェア)を通じてどんな画像なのかを理解することができます。また、それだけでなく検索エンジンのクローラーやその他のプログラムも画像をテキスト情報として読み取ることができるようになります。画像だけでなく動画や音声コンテンツも同様で字幕やテキストを設定していると、プログラムがテキスト情報として読み取ることができます。その結果、サイトの検索精度が高まり、検索を利用する全ての人にとっての利便性が高まります。
5.ウェブアクセシビリティを意識してみましょう
ウェブサイトを閲覧して情報を得るだけでなく、サービスを使って自ら情報を発信する方もいるでしょう。ウェブアクセシビリティを意識することで、私たち自身が発信する情報も、ウェブアクセシビリティの恩恵を受ける全ての人にまで届くようになります。ウェブアクセシビリティを向上させるためには、まずできることから始めることが重要です。どのようなことに留意すればいいのか、その一例をご紹介します。
(2)単語の文字間にスペースやタブを用いない。文章の折り返し位置を調整するためにスペースや改行を使わない。
(3)キーボードだけで操作できるようにする。また、キーボードで操作した時、
フォーカスしている部分を認識しやすいようにする。
(5)リンクであることを認識しやすくし、リンクテキストだけでリンク先の内容を予想できるようにする。
(6)色だけで情報を区別しないようにする。
(7)映像コンテンツには字幕をつける。
そのほかにもいろいろあります。詳しくは、デジタル庁の「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」を参照してみてください。
コラム 民間事業者の合理的配慮が義務化
令和6年(2024年)4月1日から、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)の改正により、国や地方公共団体などに義務付けられている合理的配慮の提供が、民間の事業者も義務化されました。
障害のある人への合理的配慮とは、社会生活の中にあるバリア(障壁)を取り除くために何らかの対応を必要としている場合には、負担が重すぎない範囲で対応することです。例えば、日常生活であれば「駅員が車いすの乗客の手助けをする」「窓口で筆談、手話などを用いて意思疎通する」といったことです。また、その合理的配慮を的確に行うため、環境の整備が努力義務となっており、ウェブサイトの場合ではJIS X 8341-3:2016に準拠したウェブサイトを作り、ウェブアクセシビリティを確保することがこれに当たります。
企業の社会的な責任として合理的配慮を行う事業者が増えることは、私たちがウェブサイトを情報インフラとして利用する上でとても大切なことです。
以上 取材協力:デジタル庁・総務省 文責:政府広報オンライン
最後に……
これからウェブアクセシビリティ対応をはじめる企業は、すぐに全てのアクセシビリティ項目への対応はできないかもしれません。まずは、対応の目標を定め、計画を立てて進めましょう。まず、ウェブアクセシビリティ方針を定めて公開しましょう。ウェブアクセシビリティ対応は、計画的に進めることが重要です。